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29ページ目 ほのぼのとした最大級の動揺

更新が遅れて、本当に申し訳ございません! 実はかなり重度のスランプに陥ってまして……次回の更新もかなり遅れるかと思います。

こんな駄目作者ですが、どうか暖かい目で見守っていて下さいませ。

そこは、地平線と呼ばれるものが存在しない。

長い、とても長い赤い床の廊下はどこまでも平坦に続いており、普通ならば地平線に沈みゆくその先は、どこまでも見る事が出来た。

その廊下の壁も、当然かのように床と共にどこまでも続く。その壁の色は一方は白、もう片方は黒だ。そしてその壁には一定の間隔を空けて、同じようなドアが永遠と取り付けてあった。

普通なら目がおかしくなってしまうようなその光景を、足音も立てないでゆっくりでも無く急ぎもせず、平然と歩く一人の男の姿があった。

顔の左半分に黒い仮面を付け、全身をモノクロ色のマジシャンのような服で包んでいる。髪は白く、瞳の色は金色。そして何故か、今日はシルクハットのような、本来ならば黒い部分が白くなった帽子も被っていた。


「……全ク、こノ景色にモ僕は慣れてしまったカ」


その男は、軽く嘆息すると足の歩みを僅かばかし速くする。

この場所は『回廊』。どの世界にも分類されず、また神界を除いた魔界、人間界のみならず、それらとは別の次元での異世界へとも通じている。

そして扉の一つ一つが、彼の属している組織のメンバーの所へと通じている。

彼はふと、一つのドアの前で立ち止まった。

そのドアに唐突に『S―05』という文字が現れる。彼はそれと同時にドアノブに手をかけ、中へと入っていった。



***



「ハンバーガー大食い大会だト?」「そうだよ。それで、君は出てみるつもりはないかな?」


「断らせてテもらウ。…………まァ、どうしてモというなラ考えなイ事も無いガ」


夕暮れ時、とあるマンションの一室にて黒を基調としたシャツとジーンズを着た赤い髪の女と、黒い仮面をした白髪の男とが椅子に座り、机を挟んで向かい合うように話していた。


「あぁ、じゃあいいよ。なんとなく面白い事になりそうだから、聞いてみただけだしね」


夢音の言葉に、黒仮面は眉を潜める。


「面白イ事だト?」


「参加といっても『旅人と同じチームで』という条件つきだったからだよ。もし君が即座に頷いていたら言わないつもりだったさ」


「おイ待て夢音。言いたイ事ハたくさんあるガ、まず一つ言わせてもらうゾ?

……お前ハ一体全体学校で何ヲやっテいるんダ!?」


飛び上がるかのように椅子から立ち上がり、黒仮面は叫ぶように大声を出した。


「ははっ、気にしない気にしない」


それをまるで気にとめない夢音。


「いヤ気にするゾ!? そもそモうちノ組織と旅人とハ敵対関係にあるのだガ?」


「向こうは全然そうは思ってないみたいだよ。まぁ、気にもとめていないと言った方が正しいかもしれないけど」


「それでモ色々と駄目ダ! もシ僕が旅人を倒せバどうすルつもりダ?」


「他のメンバーが旅人を攻撃しないように色々と手を回している君なら、そんな事はしないと信じているからだよ」


その言葉を聞いた黒仮面は明らかに動揺し、しかしそれを必死で隠そうとする。


「ソ、それはお前ニ頼まれテるから、仕方が無くやっているだけダ! それニうちの組織のメンバーは仕事の事に無頓着な奴が多いかラ、大した手間にハならないしナ!」


「ははっ。君は優しいよね。ボクの頼みなんて聞かなくても良いのに……ありがとう。

その日頃のお礼と言ってはなんだけど、今日は何か食べていきなよ」


「そ、そうカ」


まだ動揺を静め切れてない黒仮面を横目に、夢音は立ち上がる。

そして隣の部屋に入り、複数枚の紙を持って戻ってきた。


「さぁ、どれがいい?」


夢音は机の上に、複数枚の紙……食べ物が書かれたチラシを広げる。

それを見た黒仮面は一瞬目を丸くして、すぐにそれを理解し、何やら僅かに残念そうな雰囲気を漂わせる。


「…………出前カ?」


「そうだよ。もしかしたら、ボクの手料理だとでも思ったかい?」


その言葉に黒仮面は先程よりも明らかに大きく動揺する。


「ソ、そんナ事は無いゾ! ケ、決して期待とカしていたわけでハ無いからナ! 勘違イするなヨ!」


…………どうやら期待していたらしい黒仮面は、顔を赤くし妙な汗をかきつつ、手を大きく振って否定を示す。


「ははっ。そうなんだ。でもまぁ、そもそもボクに料理は作れないしね」


夢音のあっけらかんとした台詞に対し、黒仮面はキョトンとする。


「料理ガ……出来ないだト?」


「そうだよ。知らなかった?」


「ソ、そうダ知らなかっタ。アぁ知らなかっタとモ」


黒仮面は平静を装ってるものの、内心猛烈に落胆しているのは秘密である。

口調が少々おかしくなっているが、それを聞くのは野暮というものだろう。


「ジャ、じゃあ普段の食事ハどうしているんダ?」


そこで彼はなんとか違うベクトルの話題へと転換しようとする。


「それは普段から弁当とか出前とか外食とかだよ」


「それだト健康に悪いだろウ!」


相変わらずな調子で彼女が答えると、黒仮面は目を泳がしながら、先程から椅子に座らずに立ったまま言った。

おそらく先程の事が恥ずかしく、話題を必死に変えようとするあまりに、本人でも自分の言ってる事がよくわかって無いにも違いない。


「僕ガ今日の夕飯を作ル!」


現に、今の黒仮面は言ってる事からして正気では無かった。

それに対して、まるで顔を変えない夢音。もしかしたらそれは苦笑い、もしくは困っているのかもしれない。


「ははっ。とりあえず落ち着こうかキミ」


そこで一旦、彼女は黒仮面の横に立ち、両肩を掴んで強引に座らせようとしたその時。


「おっと!」


あまりにもほのぼのとした空気に油断していたのもあるのだろう。先程広げたチラシのうち、下に落ちてしまった一枚を踏み、彼女は足を滑らせた。…………黒仮面を巻き込む形で。


ドーンという大きな音がした。しかし一応このマンションは防音な上、さらに防音効果を独自に堅固にしてある。それに下に住人は居ないのだ。だからこの音や、先程までの二人の会話も含めて違う部屋の住人には聞こえないはずだ。


「…………ッ!?」


今の衝撃のおかげで、少し平静を取り戻した黒仮面はすぐに平静さを失った。今の自らの状況に気づいたからだ。

床に倒れた彼、下にひんやりとした感触がある。横を見ると、ちょっと前まで座っていた椅子が倒れていた。

そして上、もうお気づきだろう。そこに居たのは、赤い透き通るような髪をした一人の女の子。夢音が彼に覆いかぶさるように倒れていた。

それだけでは無く、彼の手の中の感触、それはとても柔らかでなおかつ張りも弾力も兼ね備えた、意外と大きいものであった。それは二つある。

黒仮面の顔面がみるみる真っ赤になり、彼の思考回路がオーバーヒートし、熱暴走を起こしかけた。


「はわわ…………」


突如としてそんな声が聞こえた。その声を認識した時、続けざまに違う女の声が聞こえる。


「うるさいと思って来てみたら…………まさかこんな事だとは予想外ね。

……まぁ男女の諸事には手を出さない事にするわ」


確かに他の住人には防音作用のために聞こえない。しかし、同居人ならどうだろうか。

一人は髪に星型の髪留めをつけた幽霊。彼女は顔を真っ赤にしてこちらの方を見ていた。

もう一人は白い、多少青っぽい髪に、死んでるような白い肌をした女。彼女はこちらの方を特に表情も変えず見ていた。


「コ、これハ……! これはアァァッ!!!」


その二人の姿を視界に捉えた黒い仮面の男は、そこで本日最大級の動揺を見せた。

次回も夢音・黒仮面サイドの話になるかと思います。

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