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26ページ目 やっぱり普段と変わらない日常

更新が非常に遅れて、申し訳ございませんでした! 旅人日誌をこれからもよろしくお願いします

それは、とある日の事だった。


「ハンバーガー大食い大会?」


「そうだ! チラシで見つけたのだが……どうやら、ロットリアというハンバーガー店で、ハンバーガー大食い大会が開かれるらしい」


今、俺と旅人は昼休みの学校の屋上にて話していた。

そして言わずもがなか、やけに鼻息を荒げて俺に話しかけているのが旅人だ。

ちなみに何故屋上かと言うと、教室だと旅人のファンクラブやら周りから、サラウンドで見られていて落ち着かないからだ。

……あぁその事を思い出すと、ムカついてきた。今すぐにでもぶん殴ってやりてぇ。っと止まれ! 俺の右拳! 握りしめて振りかぶろうとするんじゃない!


「それでな……優勝商品が、今回一品限りのハンバーガー、その名も『特別版無限大バーニングスペシャルギガバーガーEXカスタムΩ龍王モデル』なんだ」


「ちょっと待った。相変わらずツッコミたいんだが、なんだよその無限大なんとかバーガーとかいう、ヘンテコな名前のハンバーガーシリーズは!?」


「違う! 『無限大なんとかバーガー』ではなく、『特別版無限大バーニングスペシャルギガバーガーEXカスタムΩ龍王モデル』だ!」


「ツッコミ返す所がちげぇよ!?」


旅人は、ハンバーガーに関する事だけは何か譲れない物があるらしい。なんだコイツの異常なハンバーガー好きは。ハンバーガーみたいなジャンクフードの食べ過ぎは味覚を壊すぞ?


「……今ハンバーガーを馬鹿にするような事を思ったか?」


「い、いえ! 滅相もありません! だから殺気を放つのは止めて下さい!」


旅人からふと放たれた殺気に感づいて、つい敬語になる。


「おっと、すまない。それでは本題に戻ろう……この大食い大会は三人一組での参加なんだ」


「ふーん……で?」


「参加し……」


「断る」


「即答か!? というかまだ途中までしか言ってないが!」


「もう大体読めてんだよこの流れは! 参加して欲しいだとか、そうとしか読めねぇんだよ!

それに、参加費だってかかるんだろ? 腹壊す可能性だってあるし、参加しないほうが結果的に利益なんだって」


「むぐ……し、しかし」


「当たるんなら他を当たりやがれ。あ、当然参加費は出さねぇからな」


俺がそこまで言った所で、階段をかけ上がってくる音がしたと思ったら、複数人の声がした。


「鈴音ぇー! ゴメン待った?」


「ん? なぁに二人っきりで話しとるんや? はっ。まさか愛の告白!?」


「なんでもBLと結び付けるのは良くないと思うよ? 例えばいがみ合ってるライバルが二人で話しているとかはともかくさぁ」


「それも大して変わらんと思うんやけど!? 違いが分からへん!」


「なんとか女の子たちと間に合ったぜ……」


「うー。腹減ったッス」


来たのはいつものメンバーだ。凛歌、夫婦かどうかは分からない漫才をしながら来た魅麗と響、そして聖鳴に武士子。どうやら諸事情のため遅れたらしい。


「そんで、なに話しとったんや?」


相変わらずなエセ関西弁で首を突っ込んでくるのは魅麗。


「ハンバーガー大食い大会の話しだ」


それに答えるのは旅人。


「ハンバーガー大食い大会やて?」


「そうだ。それでこれは三人一組の参加なのだが……組んで参加してみないか?」


そこで旅人は、この場の全員に向かってほとんどなりふり構わずに聞いた。

しかし、俺にはぶっちゃけどうなるか予想がつく。


「すまへんがパスや」


まず真っ先に断りを入れるのが、関西弁の背の低い妹キャラでピンクの髪をした魅麗だ。


「僕も止めとくよ」


「俺もだぜ」


次は響と聖鳴の男勢が続く。ぶっちゃけあいつらには、わざわざ参加したくも無いし、旅人に対してそこまでの恩も義理も無い。それに響は大食いには不釣り合いな体格だし、聖鳴は……まぁ、諸々の事情により目立つのを嫌うのだ。


「うーん……私も止めとくよ」


ちょっと考えるそぶりを見せた後に断るのが凛歌。普段は結構良く食べるが、最近旅人のせいでハンバーガーを食う事が多く、ハンバーガーには飽き飽きしているのだ。

そして最後に残った一人。こいつの答えはもう決まってるだろう。


「私も無理ッスね」


残った一人、名前を鳴海 武士子。

その答えを聞いて、俺が思った事は一つ。


「…………………………………………………………て、天変地異の前触れか……?」


「富士山噴火かもしれんで!?」


「これはきっと大地殻変動の前触れかと思うけど」


「……明日、空から氷柱が降ってくると思うよ?」


「いいや、凛歌。氷柱程度じゃねぇと思うぞ? そうだな……太陽系全惑星の大群が地球に降り注ぐとか」


「太陽系全惑星の大群!? ……まぁ、十分ありそうだよね」


「いいや、皆まだ甘いぜ。全部が起きるに決まってる!」


「それだぁっ!」

「『それだぁっ!』を皆で大合唱ってどういう事ッスか!? というか色々と説明を求めるッス!」


誰が言った台詞なのかは上から俺、魅麗、響、凛歌、俺、凛歌、聖鳴、武士子を除く全員で、最後にツッコミを入れたのが武士子である。


「当然の反応だろ!? お前が大食い大会に参加しないだなんて、破壊神以上の破壊の力で世界滅亡のとてつもない大ピンチだぞ!?

お前は世界の全てが混沌の鍋焼きうどんへと突っ込んで、破壊神と裁縫道具持った電車が豆腐の角に頭ぶつけてビックバンしても良いと言うのかぁっ!?」


「いや、もう意味が全く分からないッスよ!?」


「リアルでこんな意味の分からない事が起きるかも知れねぇだろ!?

大食いの代名詞とも言える武士子が大食い大会に参加しねぇなんて、多分世界が滅亡でもしない限り有り得ねぇ! いやきっとそうに違いない!」


「いや、私にもちゃんと参加出来ない理由があるッスよ!」


「…………」


「………………」


「……………………」


「………………………え?」


そこで黙りこくった俺たち。


「な、何ッスか。皆してその『想像もしていなかった』という顔は」


その様子を見て、珍しい事に明らかに動揺を示す武士子


「…………ゴメン」


「あ、謝らないでほしいッス! なんかこう、色々と胸の辺りが辛いッスからぁぁ!」誰かがポツリとそう言うと、武士子はその場にうずくまって軽く涙目だ。

………………や、やべぇ。今の武士子が意外と可愛い……! こんな一面があったんだな武士子。

すまない。今までお前の事を誤解していた。


「と、ところで理由ってのはなんなんや?」


そこで魅麗が話題の方向転換を計るために流れをぶった切って武士子に尋ねた。

心無しか、魅麗の両ほっぺが赤いのはおおかた武士子の隠された可愛い一面に気づいたからだろう。その気持ちは良く分かる。


「……その日は旦那に連れ添って、日本全国甘味ツアーに行くんッスよ」


前言撤回。やっぱり武士子は武士子であった。


「それじゃあそろそろ飯食うッスよ」


そんな武士子は空腹に耐え兼ねたのか大きな重箱……おそらく武士子専用の弁当をとり出す。


「そうするか。雑談ばっかで昼休み終わっちまうしなぁ」


「うん。そうだね」


武士子の意見に皆賛成な俺たち。


「……あれ? そういえば旅人は?」


そんな中、響がこんな事を言い放つ。

そうだ。そう言えば旅人はさっきから一言も喋っていなかった。

旅人はどこだろうと辺りを見る。すると。

……なにやら、重苦しくまがまがしい、どよどよという効果音がダイレクトで聞こえてきそうなオーラを放つ旅人が、静かに佇んでいた。


「お、おい! 旅人! 大丈夫か!?」


「大丈夫だ……問題無い」


「いや、明らかに大丈夫じゃないだろ!? まさか俺たちの他にハンバーガー大食い大会に誘えるような奴が居ない。もしくはハンバーガー大食い大会に参加出来ないのがそんなにショックだったのかよ?」


まぁ、そんな事は無いよな? と言いつつ尋ねてみる。


「……………」


「む、無言!? ま、まさかお前……」


「…………仕方が無いだろう。

話しかけると、なぜか男は『この男の敵が!』と言われる。

女は顔を赤らめて逃げてしまうか、気絶してしまうかだから、どうしようにも無いんだ」


……忘れてた。コイツは顔がとても良いんだ。しかも口数も少ないから、クールに見えてとてもモテるだろう。

やっかいなのは、当の本人がそれに気づいていない事である……くそっ。死ねば良い。


………………………チッ。でも、こんな事を気にしたって仕方がねぇか。


「なぁ、皆」


そこで場の空気が少しだけ変わったような気がした。さっきまでの和やかで穏やかな空気から、張り詰めたような緊張した空気へ。


「分かってるぜ」


「うん。そうだね」


ポツリと言った俺の発言に返してくれたのは、隣に座っていた聖鳴に凛歌。


「旅人に、大食い大会に参加出来るような友達を作ってやろうぜ」


他人が聞けば笑ってしまうような事。それを俺たちは真剣に取り組む事にした。

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