23ページ目 裏の主役
今回は色々と普段とは文章を変えております。
あと、タイトルを含めて意味不明な点が多いですが気にしないで下さい
「ふぅ、酷い目に合った…」
リズミアは自室にて、男装メイクも終わり静かにコーヒーを飲んでいた。
「やっぱり鈴音を実験台にするのは無理か……面白そうだったのにな」
彼……いや彼女は少々、面倒臭がり屋である。
そんな彼女が自ら動くのは面白さを求める時や、実験など自らの好奇心を満たすためである事が、ほとんどだ。
そんな彼女が動く要因が一つある
「やれやれ…これ以上面倒臭い事にならなければ良いのにな」
リズミアは下の方を向いて、こう呟いた
下の方といっても見据えたのは床では無く、下の部屋だ
「……すでに手遅れかもしれないけどな」
ふと、机の上に目を向ける。
するとそこにあったのは古ぼけた本。
その本はちょうど真ん中のページの所で開いており、そこには何やら赤いインクのようなもので書かれた魔法陣がある
「霊体束縛解除系の魔法陣か……………」
そしてリズミアは新しいコーヒーを入れた
***
「……ニクイ…………」
「そんなに怒っているなら私を殺してくれないかしら?」
瞬の目の前には、何やら人みたいな形をした化け物がいた。
その化け物は黒く、それでいて透き通っていて化け物の向こう側が見え隠れし、壁に描かれた赤い魔法陣が確認出来た
そいつは全身を白く光る鎖のようなもので束縛されており、なおかつ頭は同じく白いマスクのようなもので覆われ、顔は見えない。
「グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
そしてその化け物は、声にもならない唸り声をあげる
その瞬間、背後の魔法陣から出てきたのは白い無数の手。
それは瞬の方へ一直線に伸びていく
「さぁ、良いわ。私を殺しなさい」
その瞬間、その手の一つが瞬の脇腹に当たる。
……すると、そこから多量の血が噴出された。脇腹の肉がえぐり取られたのだ。
まだ伸びてくる白い手はある。
その手の一つは一回触れた瞬間、足を切り刻み。瞬の右足がどさりと落ちる
その手の一つはしばらく触れながら、肉を削り取り、左肩にぐちゃぐちゃの傷が現れる
その手の一つはひたすら真っすぐに進み心臓を突き破る。そのせいか瞬の背後の壁にべったりと何か……の肉が張り付く
その手の一つは瞬の顔面をがっしりと掴み、右の目玉ごと顔の右半分をもぎ取る
他にもその無数の手は、瞬を破壊するために動く
その全ての動作が同時、しかもその速度はゆっくりのようにも見えるが、内実、普通なら一つも回避出来ないくらいとてつもなく早い
「あら?まだ死なないわよ?」
瞬は顔のほぼ右半分をもぎ取られた状態で、がっかりしたような表情を見せる
「仕方ないわね。私を殺せないなら用は無いわ」
瞬は鎌を持ち、全ての手を薙ぎ払う。
「どんなものも終わるのは一瞬……美しく散りなさい」
そして瞬は黒い色をしたオーラを纏わせた鎌を振りかぶり、飛び掛かる
「グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
化け物は声にもならない声で叫ぶ
ガキン
鎌は化け物の肩口に引っ掛かる。そして瞬はそれを一息に引こうとするが……
「……っ!」
「………オ……ワ……レ……」
刃はまるで通らなかった。それどころか、鎌に纏わせたオーラが化け物の方へと流れていく
化け物は終われと言う。その時、化け物の背後の魔法陣から漆黒の光線がありとあらゆる方向へと噴射された
***
「…なァ、夢音」
「大丈夫。分かっているよ」
日が落ちた夜の街中を、二人が屋根の上をまるで飛んでるかの如く走る
「幽霊が出るトいう噂があルと聞いテいたガ、これはいくラなんでモ予想外だナ…」
「うん。これは予想してなかったよ。こんな偶然があるなんてね」
二人は食事の後、すぐに異変に気づいた。
彼女らが向かうのは……2時間前に出ていったばかりのマンションの一室
「まさか、あの部屋の幽霊がおよそ半年前、『山上島』で起きた事件の傷痕の一つとはね」
二人の速度は、とてつもなく早い。人の目にはとても止まらない速度である
僅か30秒。それで着いた
すると、二人はドアに書かれた、血のように赤い魔法陣を見つけた。リズミアの部屋の本に書いてあった物とも、化け物の背後に書いてあった魔法陣とも違う
「…魔術的ナ結界か?こノ部屋一面に張ってあル。かなり強固だナ」
「これはリズミアちゃんの書いたものだよ。面倒くさがり屋の彼女らしいね。動きを封じるくらいしか働かないんだから。
……で、それじゃあ行こうか」
ドガシャア!
夢音はドアノブに手を当てると、そんな荒々しく妙に大きくて不可解な音とともにドアは開いた
「乱暴だナ…壊してハいなイみたいだガ」「こっちの方が早いからね」
そう言いつつ二人は突入した。
***
「ぐ、が……グガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
化け物は絶叫する。
「へぇ、これを研究してみるのも面白いかもしれないね」
「そんナ事を言ってル場合カ?」
二人は部屋に居た。
そこの部屋の天井は次元でも操っているのか、はるかに高く見えない。
そこには化け物がいた。しかし、もうすでに化け物を拘束する鎖は消え失せている
地面には、バラバラになった何やら透明なガラスみたいに光る物体と、赤い液体。そして
「こん………なになって……も………死ねないなんて……醜く過ぎ……るわね……………死ねればどん……なに良い事……なの……かしら」
動けない状態まで切り刻まれた瞬であった。
瞬の声がかすれかすれなのは、別に瀕死という訳でも疲れているという訳でも無い。ただ、瞬の肺を白い棒みたいのが貫いていて喋るのが難しいだけである。ちなみに彼女は瀕死状態を歓迎する性質だ。なぜなら瀕死状態とは死ねる状態であるからである。
彼女はまだ言葉を繋ぐ
「どんなに、噛ませ………犬、みたいに……強いのと戦って……やられ、ても死なない訳………ね」
どうやら彼女は自らを殺すために、進んで噛ませ犬みたいな事をやっていたらしい。
それはさておき
「さてと、それじゃあとっとと終わらせようか」
「まタわざと長引かせルんじャないダろうナ?」
次の時、二人は目配せもせず、至極自然な動きでバラバラの方向へと斜め上に飛び上がった
ドグアァァァァァァァァァァ!!!
「グガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
化け物がいつに無く大きな音を張り上げた時にはすでに、部屋中に赤い魔法陣が現れて、そこから放たれる漆黒のレーザーみたいな光線が、さっきまで夢音たちの居たところを前後左右上下の方向から貫いた時であった
「ははっ。大丈夫だよ。最低限健康のための運動だけにするつもりだからさ」
「待テ!健康のたメの運動なラ仕事をしロ!
……ト言いたいけド仕方がなイ。健康のためノ運動は見逃してやルから早メに終わらせろヨ」
「りょーかい」
夢音は少々けだるそうな声でいう
「グルガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「さてと、それじゃあ……そうだね。5回当てるくらいかな」
うって変わり、夢音は愉悦の少々篭った声で言った
「グ……ガ…………コ……ロ……ス……」
化け物のその声とともに、部屋中の魔法陣から黒い光線が発射される。
しかし、夢音はただ地面を蹴って飛び上がっただけ、そして夢音は
ズドオォン!
「まずは一発かな」
鈍い音が響き渡ると同時に、夢音の拳が化け物の鳩尾にめり込んでいた。
「ぐ……………………が…………………………アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
化け物は上方へと吹き飛ばされながら悲鳴をあげる。
それと同時、部屋中をうめつくすくらいの量の白い手が壁という壁から他の手を押しのけつつ、うごめきながら出てくる。
その手は一つ一つが、常人なら触れただけで殺す。
そしてその手が全ての物理法則を無視したかのような速さで伸びてくる。
……………が
「遅いね」
夢音はそう言うと、白い手を潰しつつ壁を蹴り立体的な動きで上方へと行く
「………ド…………コ………ダ」
化け物はまるで直接頭に響いてくるような声を出し、見失った夢音を探す。
「ここだよ」
チュドーン!!!
轟音が鳴り響く。
夢音が化け物の背中に上の方から肘打ちを食らわせ、地面へ叩き付けたのだ
「…………コ…………ノ…………グルガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
その化け物は、喋るだけの多少なりの知性はあるみたいだが、ただ吠えるだけである。
理性が無いのか、それともそんな化け物を、その身一つで叩き潰している夢音に対して怒り狂っているのか。分からない
「これで二回目だね」
化け物は起き上がった。
すると、タイミングを計っていたかのように夢音は下に着地する
「さて次は三回目だね」
夢音は軽い調子でそう言う
「…………………コ………ァ……………………………ッ………」
化け物は声にすらない呻きをあげる
しかし、攻撃はまだ続く
今度の攻撃は、白い手でも黒いレーザーでも無い、『灰色』。
灰色の球体が突然現れたのだ。部屋中万遍無く、なおかつ不規則に。
そして、その灰色の球体が現れた後には何も無い。空気すらも無い。空間の消滅というより、空間を食らうと言った方が正しいかもしれないが
「そんな狙いも定まらない攻撃なんて、ボクには当たらないよ」
夢音は静かに、時たま右へ左へズレながら歩いていく
ランダムではあるが、部屋中万遍無く現れる灰色の球体に、何故かかすりもしない。予測も出来ないし、何も規則性の無く現れる灰色の球体がまるで夢音を避けて行っているかのように
ズバァッ!
「グ…………ガ、ガ、ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
化け物の胸部に、鋭い斬撃が入る
夢音が手刀で切りつけたのだ。打撃では無い、あくまで斬撃である。そう言う他無いくらい鋭かった。
「さぁて次も行くよ」
ドガン!
そう言うと夢音は、化け物の肩に手を置いて、いや肩を掴んで化け物の腹に蹴りを入れた
「……………キ……………………………………………………………………ガ…………………………………………………………………●△◆●◎□▲☆□☆◆△◎ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
夢音の攻撃を直に受けた化け物が放つのは声では無い。概念的なまでの何かである。とても表現出来ないまでのだ。
最後の死に物狂いの攻撃が来る
轟音が鳴り、地が揺れる。黒いレーザーと白い手が飛び交い、灰色の球体は唐突に現れその場にとどまる
「もう運動は終わりにするよ」
そんな中、夢音は普段とまるで変わらない。変わっているのはその右手の動きだけ。
夢音は静かに右手をあげ、化け物の顔面の目前にまで持っていく。
そしてその右手の中指は親指により抑えつけられていた。その攻撃は普通ならば攻撃であるかどうかすら分からない。そもそも攻撃になるのであろうか。
しかし、今回は攻撃となる
「これで最後だね」
化け物の、人間であれば額に当たる部分に照準を合わせる
『デコピン』
その攻撃が見事に決まった
すいません更新遅れました!これからも諸事情のため、8月中は更新遅れると思いますがどうぞ暖かく見守っていて下さい。