20ページ目 遠足の終了と『ある組織』
祝。20ページ目!
「…なるほど。そういう事か」
「あぁ、だから今回の事は極秘で頼む」
「…………分かった。夢音がこの学校に居る事は最初から分かっていた事だしな……それに夢音はほっといても大丈夫だ。アイツは策略こそ立てるが一般人に手を出すような事はしない。決してな」
「確かにな。今回の一件でも奴らは『一般人』には誰一人手を出していないし、自分の時の場合はまるで『自分が一人になるのを』待っていたようだ。自分ならあの場に罠を仕掛けておくけどな
熊はもはや一種の動揺作戦だろう。現に、熊の足跡は自分たちの周辺にしか存在して居なかった。多分、その目的は離れ離れにする事だけだろう。普通、熊は人の気配を感じれば近づく事は無いしな…」
「…俺の場合も同じだ…まるで人の居ない場所を狙って襲撃したとしか思えないぞ…」
「それに夢音は色々とお茶目な奴だから、友達を作った理由も分からないでも無い。大方、自分が楽しむだけだろうな……迷惑な話だ」
「…まぁ、心配は無いか」
リズミアと旅人は話していた。ここは影………鈴音や生徒たちから見えない死角の位置で、付近を警戒している
すると、ふと遠くの方から鈴音たちの声が聞こえてきた。どうやら弁当とかの事で、はしゃいでるらしい
〔鈴音視点〕
どうやら予定通り自由時間に入ったらしい。とりあえず大抵の生徒はそれぞれのグループで集まって弁当を食べている。俺たちもその一つだ。
……つーかやっぱ俺は全然腹減ってねぇよ!やっぱり気絶してて歩いていないせいか!?
そう考えると複雑な気分になる。本来だったら歩きもしないで頂上に着けてラッキー!
……のはずなのだが、ぶっちゃけ言うとそもそも何もしないで頂上に登ったからって一体何なんだよ!?苦労も何とも無しに登ったから感慨深さも何もねぇ!
………………あぁもう畜生!食事だ食事!大して食欲湧かねぇけど、でも美味そうな弁当を見れば食欲が出てくるかもしれねぇし、女の子の真心詰まった特製手作り弁当を食えるかもしれない。地味だけど端からみてる男からしてみれば羨ましいシチュエーションがあるかもしれない!
俺はそう思って夢音といつの間にか現れた武士子も含めたメンバーで頂上の広場に取り付けてある椅子とテーブルに集まって、それぞれの弁当を出す…………っ!?
「ど、どうしたの?鈴音…………………………………………………!?」
凛歌を始めとした数名が俺の鞄の中を確認した瞬間。場が凍りついた
「………………………………………………………………………………………ドンマイだぜ。鈴音」
「……えぇと……私は見ていた訳では無いけど……あんな事が起きたんだから仕方がないよ………」
「……災難やな……」
「お、落ち込まないで………」
「…………ぎゃ、逆に俺がとっても情けない奴に思えてくるから気にしないで!
そもそも俺はたいして腹減ってねぇし!昼飯なんて食わなくても大丈夫だから!」
やっぱ転んで山道を転がったことが原因か!?鞄の中身が壮絶な事になってやがる!
どんな事になってるのかと言うと、鞄の中一面に散らばったご飯とおかず。そして開いた弁当箱と弁当の中にある、妙に片寄ってて量が少なくてぐちゃぐちゃに掻き混ぜられた昼飯を見て想像しやがれちきしょォぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
「げ、元気出して鈴音…私の弁当あげるから」
「う、ウチの弁当もあげちゃるで…」
「うう…ありがとう凛歌…魅麗……」
「…モテモテだね鈴音君」
「違うぜ夢音ちゃん。あれは鈴音から漂うマイナスオーラの同情心から来るものだぜ」
「へぇー。そうなんだ」
「…………美味しそうッスね……」
「ぶ、武士子!?」
全員が弁当を出し終えた所で隣を見ると、武士子がいまにも飛び掛かろうとしているように、目が光り輝いている
「た、食べるなよ!?武士子!お前だったら人の事なんか気にせず全部食いそうなな気がするし、何より精神的に辛い!
ってかさっきまでお前のリュックの中に大量に詰まっていた食物類はどうした!全部食べたのか!?
一体その時に出たゴミはどうしたんだ!?ほらごみ箱に捨てて!そうしないと山が汚れるだろうがあァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ツッコミ所がズレてるよ鈴音!?」
そこから始まるのはいつも通り………つーか、いつもよりハイテンションヒートアップのどんちゃん騒ぎ。
その後、聖鳴が吹っ飛ばされたり魅麗と響がハリセン出して漫才始めたり、凛歌が大ボケぶちかまして俺がツッコミ入れたらミスって土下座クライシスを繰り広げる羽目になったり、旅人とリズミアが戻ってきてその様子を見て呆れたり
そんなこんなで『何事も無く無事に』今回の遠足は終了した…………
〔鳥本視点〕
コンコン
理事長室の部屋にノックが鳴る
「………夢音か。入れ」
「ははっ。久しぶりだね鳥本君」
「…相変わらずお前は馴れ馴れしいな」
理事長室に入ってきたのは夢音。『一応』うちの生徒の一人だ
「それで、用件は分かっているだろうな?」
「……今回の遠足の件だよね?」
「そうだ……………………………………………………………
まぁ、まだ許容範囲内なのだがな。一応形式上の忠告だ。お前はこの学校の生徒ということになっているが、こちらとしてはいつでもお前を始末できるのだぞ?」
「ははっ。怖い怖い。
流石は世界経済の半分以上を占め、圧倒的なる財力、科学力、技術力を持つ『山上財閥』のトップ、山上鳥本君……………」
「……まぁ、あの組織の中でも『穏便派』であるお前には手出しするつもりはないがな……お前が消えると色々と厄介な事になる」
「まぁその『厄介事』といっても君の力をもってすれば軽く何とか出来るんじゃないかな?」
「そんな事は無いぞ?『山上財閥』には色々と敵が多い…………この世界にも当然『異次元世界』にもな…………お前らの組織と戦争している間に他の組織から攻められて終わりだ」
「ははは……まぁ頑張ってよ。ボクも山上が崩壊すると色々と困るからさ」
「ふむ、好きにするといい…………………俺が困るような事でなければな」
「ははっ。まぁ気をつけとくよ………………」
その後、赤い髪をした女、夢音は後ろを向き、ドアを音も立てずに開け立ち去っていった。
ふと、俺は机の上にある書類に目を向ける。
その中の一枚、夢音の残した紙にはたった一つの言葉しか書かれていない
その言葉はあくまで通称に過ぎず、読み方も分からない
『神魔者』
それが奴らの組織名だった
いやはや、今回で遠足編は終了。暫くは一話完結のコメディーになります