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第11話 ダウナー系のアノコ

「なぁ、秀真」


「なによ」


「俺の彼女ってさ、その、なんていうか……こう、一般的に見て、重いと思う?」


「なんだよ、朝からそんな話」


 秀真はため息をついた。

 翌日、天音の看病のおかげかバッチリ熱は下がった俺は朝練のために早めに学校に向かった。

 で、朝練を終えた朝礼前、こうして秀真に相談している、というわけである。

 相談内容は、昨日の天音の一人言について。

 結局あのまま寝てしまった俺は、未だ混乱していた。普通すると思う。


「いやさぁ、仲直りはしたんだよ。仲直りは」


「それは連絡来たから知ってる」


 一応相談に乗ってもらった身だったので、ちゃんと連絡とお礼はしていたのだ。


「それでさ、まぁその後いろいろあって」


「おぅ」


「一人言聞いちゃってさ……その、俺にヤンデレだって分かられたらいけないとかいうの。今まで俺全くそんなの気づかなかったんだけど、そう思う?」


「まぁ、あの子重いなとは前々から」


「まじかよ!?」


 思わず声を張り上げると、クラス中の視線が刺さった。


「いや、普通に付き合って2週間で同棲持ちかける時点で重いし――他にも理由あるけど、それはお前のために言わないでおく」


 秀真は相変わらずの無表情で言う。

 ずいぶん淡々とした口調だけど、かなり重大なことじゃないか、これ? そもそも、言えないほどのことってなんだよ。


「まぁ、いいんじゃね? あの子普通に良い子だし。気にしなきゃいんだよ気にしなきゃ」


 いや、気にするだろ普通。

 ……まぁ、確かに重くても重くなくても、天音が可愛いことに変わりはないけど。




「では、文化祭の出し物について、意見ある人、手を挙げてください」


 4限目のHR。今は10月上旬で、あと1ヶ月後に文化祭がある。

 つまり、そろそろ準備が始まるわけで。

 教壇に立った文化委員の西野が教室を見渡す。パッと見、2、3人が手を挙げた。

 お化け屋敷、焼きそば屋、メイド喫茶に執事喫茶――と文化祭鉄板の案が出されていく。


「じゃ、もうこの中で多数決で良いですか?」

 

 これは学生あるあるだと思っているのだが、こういうクラス会議的なやつのとき、シーンとする、という現象がある。

 そう、あの、休み時間ワイワイしてるやつらが、こういうときにかぎって一気に黙るやつだ。女子は、なんかある? 私ないわ、と目配せで合図してたまーにふふっと笑ったりしてるやつ。

 そして今まさに、その現象が起きている。


 ダウナー系の西野はそんなクラスの様子を見て、ダルそうに案を締め切った。見た目はアッパー系なんだけどな。髪とか薄ピンクに染めてるし。高めのツインテールだし。スカート丈短いし。セー○ームー○くらいの長さだし。

 確かにうちの学校に校則はないけど。


「えっと、メイド喫茶か執事喫茶かたこ焼き屋か焼きそば屋かお好み焼き屋で。なんか大阪の食べもんばっかだけど。1人2つ挙手お願いしまーす」


 どこか間延びした声で西野が言い、全員が顔を伏せた。この分だと、たぶんメイド喫茶だろうな。盛り上がりが1番良かったから。


「はい顔上げてくださーい。えっと、メイド喫茶です」


 軽く歓声が上がった。

 




「というわけで早川くん、わたしたちは買い出し係になったわけだけど」


 厳正なるじゃんけん大会の末、俺と西野は買い出し係になった。運に左右されたとはいえ、あとで天音に怒られないかな。


「そうだね。とりあえず、買わなきゃいけないものがまとまってからにしようか」


「うーん、暇になっちゃうけどね。みんなが考えるまで」


「適当に手伝ったらいいんじゃない?」


「それもそっかー」


 この時期、部活は1時間遅れて始まる。文化祭の準備を優先させるためだ。

 放課後、和気あいあいと話し合いをするクラスメイトを横目に、俺たちはぼんやりしていた。暇なのだ。要するに。

 

 俺が突っ立ってる横で、西野がダルそうに机に座り、足をプラプラさせている。お願いだからやめてくれ。絶対領域が見えそうで怖い。


「俺はとりあえず大道具手伝ってくるわ……向こうも暇そうだけど」


 西野の足から目を離す。


「暇そうだねー」

 

「実際暇だしな。まだすることがないからな。企画とデザインのやつら以外」


「まぁ私は必要な生地でも聞いてくるよ。なにもしないのは悪いし」


 西野が机からトン、と飛び下りる。スカートが揺れて、ギリギリまでめくれあがった。危なっかしい。


「俺も大道具あたりの要るもん聞いてくるわ」


 西野につられて俺も企画してるやつらのところに向かう。

 メイド服のデザインで盛り上がってるチームからは、天音がゴスロリだのどうだの聞こえてきた。確かに天音は銀髪だから、ゴスロリは似合うと思う。心の中で提案した女子に感謝しつつ大道具係の秀真に声をかける。


 ……西野と2人で話してた間、背中に当たっていたヒヤッとした視線には気づかなかったことにしておこう。

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