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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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67.危険地帯

『この冒険者、人類史最強です』第二巻本日発売です!

 アイル領北部の森。

 魔物が確認されている危険地帯であり、領主の許可がなければ立ち入れない。

 広大な自然には豊富な資源があり、領民としては有効活用したいという声が多かった。

 その声に答えるように、アッシュ殿下は森の魔物たちを一掃する計画を立て、実行に移している最中。

 計画は順調に進み、あと少しで殲滅が終わると思われた矢先、領地では奇病が蔓延した。


「ちょうど同じ時期だったかな。俺が奇病のほうで手一杯になってる間に魔物が増えちまったんだ。対処した時は最初の頃と同じくらいに増えてて驚いたよ」

「魔物は繁殖能力が高いと聞きますからね。兄上の所為じゃありませんよ」

「わかってるんだけどな。俺がもっと動けてればとも思うんだよ」


 魔物が増えたのは自分の責任。

 もし奇病が魔物由来なら尚更だとアッシュ殿下は語る。

 そんな風に思うほど思いつめる必要はないと私は思うけど、これが領主としての責任なのだろうか。

 土地を預かり、領民の生活を預かる者としての。


「というかユレン、フサキもだけど。別に同行しなくても良かったんだぞ?」

「何言ってるんですか! オレは姉さんの護衛ですよ?」

「まぁお前はそうだな。ユレンまでついてこなくても良かったと思うんだが?」

「……イジワルを言いますね、兄上は」


 ちょっぴりむくれたユレン君は、諦めたようにため息をこぼす。


「はぁ、俺が同行しないなんて選択肢にも上がりませんよ」

「アリアのためか?」

「はい」


 ユレン君はハッキリと答えた。

 彼の真っすぐさに、私の胸は鼓動を早くする。

 だけど私が知っているユレン君なら、その理由だけで動いたわけじゃないと思った。


「でもそれだけじゃないですよ。この地の人たち命が脅かされてるんだ。俺も黙ってみてはいられない」

「そうだな。お前はそういう奴だ」


 そう、彼はそういう人なんだ。

 困っている人を助けたい。

 苦しんで、辛い思いをしている誰かを放っておけない。

 

「それに俺は強いですからね? 何せ兄上に鍛えられましたから」

「はははっ! そうだったそうだった! 俺もお前が一緒なら心強いよ。頼りにしてるぜユレン」

「はい。任せてくださいよ」

「ちょっとちょっと~ お二人だけで盛り上がらないでくださいよ! オレも役に立ちますからね!」


 信頼し合う兄弟の会話を見せつけられて、フサキ君はちょっぴり嫉妬した様子。

 そんな彼を二人が慰めるように、ポンポンと肩を叩く。


「わかってるって」

「俺たちも頼りにしてるよ、フサキ」


 微笑ましい光景だ。

 アッシュ殿下とユレン君、二人の関係性とはまた違うのだけど。

 この三人も仲の良い兄弟のように見える。

 

 ふと、自分の妹のことを思い出す。

 彼女も今頃、頑張っているだろうか?

 このお仕事が終わったら、一度顔を見に行くとしよう。


「――!」

「どうした? フサキ」

「何か近づいてきてる音がしますね。三……いや四? 足音の感じ人じゃないです」


 彼の一言で警戒を強める。

 和やかな雰囲気が流れようとも、忘れてはいけない。

 ここは魔物が巣くう森、危険地帯なのだと。


「四つ足の何かが来てます。左右から」

「よし! お前ら警戒しろ! 魔物が接近してるぞ!」


 アッシュ殿下の指示で、同行していた騎士たちが剣を抜き、構える。

 左右で半々に別れ、私は邪魔にならないよう中心に立つ。


「魔物……」


 恐怖はある。

 魔物の恐ろしさを私は知らない。

 だからこそ怖いと思う。

 それを分かった上で同行してきたのに、いざ危機が迫ると知れば身体が震える。

 

「大丈夫。俺の後ろにいてくれ」

「うん」


 そんな私の前には、頼もしい背中がある。

 剣を構える彼の姿に、身体の震えが落ち着いていく。


 そして――


「来ますよ!」


 フサキ君の声と同時に、木々の間から魔物が飛び出してきた。

 黒い毛並みで見た目は狼。

 ブラックウルフと呼ばれ、森や草原を縄張りにする魔物の一種。

 群れで行動し、獲物を見つけては罠を仕掛けたりもする賢い魔物だと本で読んだ。

 迫る四匹、左右から二匹ずつ。


「怯むなよお前ら! たった四匹ならどうってことないぞ!」


 こちらは騎士二十人。

 数の上で圧倒的に有利な状況で、彼らも魔物との戦闘には慣れている。

 苦戦するような相手ではないようだ。

 現にアッシュ殿下が何もしなくとも、騎士たちだけで対処している。

 陣形で包囲し、一匹ずつ確実に倒す。


「あー、これオレたちの出番はなさそう――もう一匹来ます!」

「なんだと? どこだ!?」

「この音……上です!」


 フサキ君が叫ぶ。

 私たちが上を見上げた時、空からウルフの一匹が飛び込んできた。

 どうやら木々の枝を飛び渡って近づいていたようだ。

 陣形の真ん中。

 私の真上から魔物が迫る。

 だけど――


「伏せろアリア!」

「うん!」


 私がしゃがみ込むと、ユレン君がすぐ隣に立ちはだかり、迫るウルフと相対する。

 強靭な牙を剣で受け流し、地面に着地したウルフと、剣を構えたユレン君がにらみ合う。

 わずかな沈黙を挟んだ後、ウルフの方から跳びかかる。

 素早い動きだ。

 しかしユレン君は動じることなく、その動きに反応して剣を切り抜ける。

 開いた口から胴体にかけて斬り裂き、危なげなく勝利して見せた。


「す、凄い……ユレン君」

「ブラックウルフは魔物だけど動きはちょっと早い犬と同じだ。なんてことないよ」


 彼は簡単に言っているけど、私には目で追えないくらい速かった。

 騎士たちよりも自分は強い。

 昔から彼はそう言っていたけど、今さら事実だったと確信する。

 本当に……凄い人と出会っていたんだな、私って。

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