表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/84

63.万能ポーション

 錬成台の隣にある机の上に、素材の入った木箱がずらっと並んでいた。

 どれもアッシュ殿下が必要かもしれないとあらかじめ用意しておいてくれたものらしい。

 薬草、ハーブ、獣や動物から取れる素材など。

 ポーション作りに必要な素材は大方揃っているみたいだ。


「素材がいろいろありますね」

「これだけ揃ってるなら作れそう」

「治癒系のポーションか? それならもう試したって聞いたぞ」


 傷の治療に使うポーション、発熱を抑えるポーション。

 数種類存在するそれらを患者さんに与え、結果はどれも効果がなかったそうだ。

 いいや、一時的な効果はあったらしい。

 だけどすぐに症状が再発してしまう。

 一時的とはいえ効果があるならと続けようとしたが、患者さんのほうからこれを拒否した。

 痛みや辛さが一瞬でも緩和されることで、ぶり返した時のショックが大きい。

 それなら使わないでほしいという話だった。


「だからまだ試してないポーションを作るんだ」

「試してない? 新作の案があるのか?」

「新作、ではないかな。研究途中の万能ポーションだよ」

「万能ポーション!? そんなものまで作ってたのか」


 ユレン君が目を丸くして驚く。

 褒めようと口が動いたのがわかって、私はそれより早く伝える。


「まだ研究途中だよ。だから万能っていうのも私が勝手に呼んでるだけだから」

「そうなのか? でも万能ってつけるくらいだし、効果はあるんだろ?」

「王宮で働いてた頃に試した限りだと、今ある大抵の病には効果があるって結果になったよ」

「それなら十分じゃないか!」


 歓喜するユレン君には申し訳ないけど、私は首を横に振る。


「効果があったのは現存する病だけ。それ以外に効果があるかは……わからないんだ」

「それは試す対象がいないからだろ?」

「うん。だから効果が出るのかは、実際に試さないといけないの」


 今回の件だってそうだ。

 見たことも聞いたこともない新しい病。

 しかも原因に魔物まで関わっているとあれば、事態はさらに複雑化する。

 正直言って、これで治せるとは思っていない。

 少しでも症状が緩和できて持続性が出せれば、みんなの苦しみを和らげることができるかもしれないと。

 そう思って作ることを決めた。


「アッシュ殿下が戻られるまでに、試せることはやっておきたいからね」

「了解だ。手順さえ教えてくれれば俺も手伝えるよ」

「オレには錬成が出来ないから、それ以外のことをお手伝いしますよ!」

「二人ともありがとう。それじゃ、始めよう」


 二人が頷く。


 万能ポーション(仮)作りが始まる。

 材料は大きく分けて五種類。

 薬草、ハーブ、果実、動物の角、水。

 用意した薬草は七種類、どれも炎症や発熱に効果があるもので、さらにその効果が長く続く物を選んだ。


 ハーブも同様に、炎症に効果があるものを選んだ。

 中には病に対してではなく、心を落ち着かせる効果を持つ物も混ぜる。

 苦しい時は心まで傷つきやすい。

 少しでも落ち着いて、和やかに日々を過ごせるように。


 果実は三種。

 滋養強壮、血行促進、新規感染予防。

 それぞれに効果の強く、酸味の強いものばかり。

 果実の味はそのままポーションの味になる場合が多い。

 だから本来は酸っぱさを薄めるために材料を増やすのだけど、今回は敢えてこのままでいこう。

 すっぱくて目が覚めるほうが良い刺激になる。


 動物の骨は、ヨウレイジカという動物から採取された角で、粉末状にしたものを使う。

 古くから傷薬の材料に使われていた素材だ。

 現代では用いられることが少なくなったけど、これは他の薬草と相性が良い。

 混ぜ合わせることで薬効を高めることができるんだ。


 最後に水。

 ポーション作りで唯一絶対にかかせない素材。

 何を当たり前なことを、と思う人もいるかもしれない。

 液体だから水という安直な考えも正しいけど、水は各素材を繋げる重要な役割があるんだ。

 何にも染まっていない純粋な水だからこそ、他の素材を邪魔せず溶け込める。

 

 材料の割合は薬草が三割、ハーブが二割、果実と角で一割、残りは水。

 これらを完成品が入る瓶と一緒に錬成台に置く。

 後は作成するポーションをイメージして、錬成台の中で合わせる。

 素材への理解、完成品の構想。

 それらが正確かつ早くできないと失敗する。

 素材さえ揃えれば誰でも出来る、なんて簡単な仕事ならもっと楽だったかもしれない。

 私は額から流れ、頬を伝る汗を感じながら集中する。


「すごい集中ですね」

「それだけ大変な錬成ってことだよ。素材が増えるほどに錬成は難しくなるからな。あの数を処理できるのはたぶん、世界中でもアリアだけだ」


 集中しながらでもユレン君の声は聞こえた。

 そんなことないよと、普段なら謙虚に答えるところだけど、生憎今は余裕がない。

 研究途中だったこともあってイメージは不完全だ。

 少しでも集中を解けば失敗してしまう気がして。

 そうなればせっかくの素材が無駄になってしまう。

 錬成は失敗した場合、消費した素材は完全に消滅してしまうんだ。


「あと……少し……」


 完成品に近づく。

 イメージと現実が繋がる瞬間。


「――出来た」


 万能ポーションが完成する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿してます! 下のURLをクリックしたら見られます

https://ncode.syosetu.com/n7004ie/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

5/10発売予定です!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000



5/19発売予定です!
https://m.media-amazon.com/images/I/71BgcZzmU6L.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ