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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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59.出張

 アッシュ殿下の話から二日後。

 早朝、私は荷物をまとめてアトリエを出る。

 最後に戸締りを確認して、扉に鍵を閉めて出発する。

 待ち合わせ場所は城門だけど、先に室長のラウラさんに挨拶をしにいく。


「姉さん!」

「あ、フサキ君」


 道中、フサキ君が駆け寄ってきた。


「準備はいいの?」

「大丈夫ですよ。元からそんなに荷物なかったんで」

「そう。でも良かったの?」

「何がですか?」


 彼はキョトンとした顔で首を傾げる。

 私はこれからアッシュ殿下の領地へ向かうことになっている。

 依頼が完了するまで、しばらく王宮を離れるんだ。

 いつ戻れるかはわからない。

 もしかしたら長くなるかも、とは言われている。


「しばらく王宮に戻れないし、イリーナちゃんのことは大丈夫かなって」

「あー、それなら心配いらないですよ。姫様にはちゃんと話したし、終わったらすぐに会いに行きますから」

「二人がそれでいいなら良いけど」

「良いんですよ! 別にこれが最後のお別れってわけじゃないんだ」


 彼はにこやかにほほ笑む。

 そんなセリフは後々本当になりそうで怖いな。

 

「オレは姉さんの護衛ですからね! 姉さんが出張するならついていくのがオレの役目です!」

「そっか」


 彼がそれで良いのなら、私がこれ以上言うことじゃないな。


「それより急ぎましょう!」

「うん」


 私とフサキ君は駆け足で城門に向かった。

 城門には馬車が止まってる。

 フローリアの時みたいに馬で誰かの後ろに乗せてもらうのかと思ったら、今回は違うようだ。

 私たちだけじゃなくて、騎士さんも何人か一緒にいる。

 その中に騎士たちに指示をしているアッシュ殿下の姿もあった。


「殿下」

「ん? お、来たかお前ら」

「おはようございます。アッシュ殿下」

「おう。フサキも来ることにしたんだな」

「当然ですよ!」


 フサキ君はアッシュ殿下とも面識がある。

 イリーナちゃんの護衛をしていた件で知り合って、お互いに元気の良い性格だから気が合うらしい。

 二人が拳を突き合わせている。

 私にはよくわからないけど、男の人同士の挨拶なのかな。

 男の人、と浮かんで彼の姿を探す。


「俺ならここだよ」

「あ――」


 不意に隣から声が聞こえてきた。

 彼は馬車の後ろからひょこっと顔を出す。


「おはよう、アリア」

「……」

「どうした?」

「いつも驚かされてるから、今度はこっちから声をかけたかったのに」


 ちょっと悔しくてむくれていた。

 正直に話すと、ユレン君は気の抜けた風に笑う。


「ふっ、そんなことで剥れてたのか。良い具合に緊張してないみたいで安心したよ」

「緊張はしてるよ? でもそれより、私の力がみんなの役に立つかもって思ったら嬉しくて、なんだかワクワクしてるんだ。不謹慎だよね」

「いいや。抱え込むよりずっと良いよ。相手を笑顔にしたいなら、まず自分が笑顔になってないといけないからな」


 そう言ってユレン君は大袈裟な笑顔を見せる。

 困っている人たちを、苦しんでいる人たちを元気づけるように。

 安心してもらえるように。

 あざ笑うのではなく、明るく照らす笑顔のお手本。

 私も彼みたいに笑える人間になりたい。

 そんな風に思う。

 すると、私たちのやり取りを見ていたアッシュ殿下がユレン君の肩を叩く。


「良い顔だなユレン! そうだ笑顔! 笑顔こそ一番大事なんだぜ! わかってんじゃねーか」

「兄上から教わったことですから」

「そういうやそうだったか? 昔のことは忘れちまった」

「忘れすぎですよ」


 呆れた顔をするユレン君の肩を、アッシュ殿下は豪快に何度も叩く。


「良いってことだ。大事なのは今だからな」

「兄上らしいですね」

「俺は俺だからな。それでは準備も出来たことだし出発――」


 と、言いかけた所でアッシュ殿下が何かに気付く。

 視線は斜め上に、その方角は王城だった。

 彼は微笑み、首をくいっと動かすことで私たちの視線を誘導する。

 四人の視線が一か所に、いや一人に集まる。


「フサくーん! お姉さまー!」

「姫様だ! 姉さんあれ! 姫様が手振ってますよ」

「うん」


 王城の窓から身を乗り出す様に、イリーナちゃんが大きく手を振っている。

 遠くからでも聞こえるくらい大きく、お腹から声を出す。


「気を付けてくださいねー!」

「姫様も! 元気になったからって無理しちゃ駄目ですよ!」

「なるべく早く戻ってきますね!」

「はい! 待ってます!」


 彼女はお腹から声を振り絞り、私たちを見送ってくれた。

 どこまでも健気で真っすぐな女の子だ。

 フサキ君もそうだけど、この国で出会った子供たちはみんな真っすぐで。

 それでいて優しい心を持っている。

 そういう国だから、なのかな。

 だとしたら嬉しい。


「お兄さまたちも頑張ってくださいねー!」

「おう!」

「任せておいてくれ!」


 彼女は二人の兄にも手を振った。

 アッシュ殿下とユレン君は、彼女の姿をしみじみと見つめる。


「元気になったよな、イリーナは」

「はい。彼女のお陰で」

「だな。だからこそ期待してるぜ。あいつならきっと……この窮地を救ってくれるってな」

「俺もそう思います」


 二人の会話は小さく聞こえていた。

 期待の言葉と視線が注がれる。

 その期待に応えられるように頑張ろう。

 少し前の私なら逃げ腰になっていたかもしれないけど、今は少しだけ……自信がついたから。


いつもご愛読ありがとうございます!

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明日も明後日も執筆していくためにも、ブクマ・評価で応援して頂けると幸いです。


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