閑話 永遠の闇の中(ざまぁ補足)
第二章のざまぁ部分補足です。
「く、くそっ! 離せ!」
屈強な男たちに両腕を握られ、無理やり暗がりへと連れ込む。
抵抗しようにも力の差は歴然。
暴れた所で意味をなさず、暗い階段を下る。
到着したのは鉄の檻。
明かりは一つしかなく、部屋も一つしかない。
他には誰もいない。
鉄格子を開け、男たちは彼を放り入れる。
「ぐっ」
ドサッと倒れ込み、起き上がった時には鉄格子は閉じていた。
鉄格子を掴みながら彼は叫ぶ。
「なんのつもりだ! ここから出せ!」
強引に開けようとしても、一人の力ではビクともしない。
引っ張り、押して、叩いても開けることは叶わない。
「ふざけるなよ。僕を誰だと思っているんだ?」
「――ただの咎人であろう?」
彼の前に立つのは王。
セイレム王国を統べる者。
「セイレムの国王……」
「久しいな。いや、こうして会うのは初めてか? メイクーインの元王子」
二人はにらみ合う。
ラウルスが王子だった頃、両者は友好的な関係を築いていた。
しかしそれは表向きのみ。
ラウルスはかつて、彼を利用しようとして失敗している。
国王もまた、彼の思惑に気付いて距離を置いた。
以降は互いに不干渉を保ち、意見を交わす場すら設けなかった。
「いずれこうなる予感はしていた。お前は他者を軽んじている。都合の良い道具としか思っていない」
「はっ、それは当然でしょう? 僕は王子なんだ。王子に仕えるのは下民、彼らは所詮道具に過ぎない」
「だからこそ見抜けなかったのであろう? 彼らが内に持つ牙に」
「っ……」
図星をつかれ言い返せないラウルスに、国王は鉄格子に触れながら言う。
「ここはかつて、死罪となった者を管理するために使われていた牢獄だ」
「僕を死罪にするつもりか? そんなことをすれば国際問題だ」
「何を言っている? お前はもう、どの国の人間でもない。ただの咎人なら我が国の法で裁くことが出来る。それに……誰も死罪にするとは言っていないぞ?」
「……何だと?」
国王は鉄格子から手を離し、振り返って立ち去ろうとする。
「待て、どこにいく?」
「ここには誰も訪れない。食料はそこに置いてある。上手く繋げば一月は持つだろう」
「ま、まさかこのまま……」
「死罪などと生ぬるいことは言わん。お前は最後まで生き続けろ。たった一人、誰とも関わらず、暗い檻の中で最期を迎えるのだ」
それこそが彼に与えられた罰。
私欲のために他者を弄び、命を奪った。
命を持って償ったところで、死んでいった者の苦しみは晴れない。
ならばせめて、極限まで追い詰め、孤独の中で苦しみながら死を与える。
そうして浄化するのだ。
もう二度と、彼のような間違いが生まれないように。
「ま、待ってくれ!」
「お前はやり過ぎたのだ。我が国の恩人に、王宮に仕える者に手を出した。一度ならず二度までも」
怒り。
国王が内に秘める怒りは、王として、一人の人間として。
許してはおけない。
「闇の中で朽ち果てろ」
「待っ――」
扉は閉ざされる。
この先の未来で、地下へと続く扉が開かれることはない。
誰にも知らぬまま、一人で生涯を終えるのだ。
彼という間違いは、こうして消滅する。






