表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/84

50.少しは進めたかな?

 後悔したから、したくないと思う。

 あの時と同じ。

 何も出来ないまま、黙ってみているなんてしたくない。

 そうならないように、私は備えてきた。


「これを飲んで!」

「お……姉さま?」

「私が錬成した解毒ポーションだよ! どんな毒でも治せるから!」


 毒に対しては特に気を張っていた。

 どんな毒でも解毒できるポーションは存在しない。

 だから私が作った。

 毒で死ぬ人がいなくなるように。

 過去の大きな失敗から学んだことだ。


「でも……私は……」

「良いから飲んで! 後悔してて、償いたいと思ってるんだよね?」

「……はい」

「だったら生きて償わないと駄目だよ! 一人で死んだって誰も褒めないし喜ばない! 本当に償いたいなら、セリカの力でたくさんの人を助けなきゃ!」

「私の……」


 私はそうする。

 そうして生きていく。

 消えない後悔を抱えながら、前へと進んでいく。

 彼女にも同じように、前を向いて生きてほしい。

 先を行った一人の先輩としてじゃない。

 彼女の……姉として思う。


「生きてなさい! セリカ!」


 返事を聞く間もあたえず、彼女の口に解毒ポーションを流し込む。

 本当はよくないことだけど、待っていたなら時間切れになる。

 ポーションを飲み干したことで毒が消え、セリカの顔色が良くなっていく。

 冷たかった肌にも、徐々に熱が戻ってきた。


「お姉さま……私……」

「アリアの言う通りだ」

「ユレン君」


 彼は剣を納めて微笑む。

 

「償い方を間違えるな。償うなら、自分にしか出来ない方法でやれ」

「私にしか出来ない……」

「君も錬成師なんだろ? なら、見習うべき人が近くにいるんだ。今からでも遅くはない。少しずつ、学んでいけば良い」


 彼はこんな時でも優しい顔をする。

 怒っても良い立場なのに、まるでもう許してしまったように。


「それでいつか、俺の国に貢献してくれ」

「……はい」


 こうして、一つの因縁が決着した。


  ◇◇◇


 一週間後。

 事後処理がひと段落して、私とユレン君はあの丘を訪れていた。

 風が颯爽と吹き抜け、髪がなびく。


「気持ちいいね」

「ああ、天気も良いし最高だ」


 あれから、ラウルスは地下の特別牢獄に入れられた。

 罪を罪と認識せず、悪いと思っていない彼にはどんな言葉も届かない。

 すでに隣国の王子ではなくなっている彼なら、この国の法で裁くことが出来る。

 下された判決は、死ぬまで一人、寂しく生き続けること。

 殺したところで罪の償いにはならない。

 野放しにすればまた罪を重ねる。

 ならば最後まで、苦しみながら生き続けてもらおうと。


「せめて来世があるなら、まともな人間に生まれてほしいものだな」

「うん……」


 生まれが違えば、別の生き方があったかもしれない。

 そう思うようにしている。


「フサキ君も元気になってよかったよ」

「だな。あいつが一番重傷だったのに、けろっとしてるのは驚きだが」


 私が眠らされた後、フサキ君は残った盗賊を倒してしまったらしい。

 あの傷で動けただけでも凄いのに、盗賊三人を相手に勝利したなんて信じられない。

 痛みで意識を保てたこともうまく働いて、結果的に私の居場所をユレン君たちに伝えてくれた。

 彼には感謝してもしたりない。

 

 それから……


「セリカも頑張ってるかな」

「頑張ってるだろ。アリアの妹なんだ。頑張ると決めたならもう迷わないだろ」

「そう……かな? そうだと良いな」


 彼女は今、王都の街で店を構えて働いている。

 今回の一件に関して、彼女はラウルスに脅され利用されただけだった。

 毒物や他の薬品も作っていたみたいだけど、どれも彼女の意志じゃない。

 もしも逆らえば、女である彼女の未来は暗かった。

 最初は恐怖で従っていたみたいだけど、次第に精神が摩耗して、何も考えられなくなっていたようだ。

 そんな彼女は罪を償いたいと願った。

 彼女にしか出来ないこと、錬成師としての償いを。

 さすがに王宮で働くことは出来ないから、街で住民の皆さんの助けになってもらおう。

 ちゃんと働いているかは、定期的に見に行くつもりだ。


「本当……助けられて良かった」

「ああ、俺もだよ」


 いつか起こる悲劇を回避するために、常日頃から備えておく。

 悲しくて悔しい過去があったから、こうして助けられた命がある。

 

「ねぇユレン君」

「ん?」

「私……少しは前に進めたかな?」

「――ああ、俺が保証するよ」


 以前、この場所で誓った。

 次のここへ訪れる時は、お互いに成長していようと。

 ユレン君が日々前へ進んでいることは、私だけじゃなくてみんなが知っている。

 私が進めているかどうかは、ユレン君が見ていてくれる。

 彼がそうだというなら、きっと進めているのだろう。


「じゃあ今度来るときは、もっと頑張らないとだね」

「そうだな。お互い、やりたいことはハッキリしてるんだ」

「うん」


 この国をもっと良い国にするというユレン君の夢。

 彼の夢を支えたいという私の願い。

 私たちは前を向く。

 新しい場所で、新しい明日を思い描いて。


 国を渡り、立場を超えて。

 私たちは繋がって、一歩一歩進んでいくんだ。


これにて第二章完結です!

いかがだってでしょうか?

少しでも面白い、胸がきゅんとなったと思って頂けたら嬉しいです!


ここまで読んでくれた方々に最上の感謝を。

そして再三のお願いですが二章も終わりましたので改めて。

面白い、続きが気になるという方はページ下部の☆☆☆☆☆から評価してください!


どうか、ぜひ……ぜひお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿してます! 下のURLをクリックしたら見られます

https://ncode.syosetu.com/n7004ie/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

5/10発売予定です!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000



5/19発売予定です!
https://m.media-amazon.com/images/I/71BgcZzmU6L.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ