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4.掴む明日、戻れない昨日

「君が大変な思いをしているのは知っていた。出来ることなら何とかしたかったけど、他国の事情には入り込めなかった。でも今は違う。今なら堂々と、君を誘える」

「わ、私を……でも私は……」

「君の凄さを誰よりも知っている。この世の誰よりも、君が成し遂げたことの凄さを理解している。俺にとって君は恩人であり、目標なんだよ」

「私が……」


 目標?

 そんな風に言ってもらえたのは、生まれて初めてだった。

 嬉しかった。

 心から。


「俺だって優秀なら誰でもいいわけじゃないぞ? 君だから来てほしい。悪辣な環境にも負けず、直向きに努力する姿を見てきたからな。そんな君だから来てほしい、幸せになってほしいと思う。だから、この手を取ってくれないか?」

「……はい」


 私のことを認めてくれた。

 真っすぐに評価してくれた人なんて、今までいただろうか?

 傍にいた家族でさえ、ちゃんと見ようとしなかった私を、彼は褒めてくれる。

 そんな彼の手だからこそ握ったんだ。


「よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ」


 幸せなんて幻想だと思っていた。

 その幻想も、彼の傍なら……現実になるかもしれない。

 何となくだけど、そんな予感がしたんだ。


  ◇◇◇


 アリアを解雇した王宮。

 彼女が使っていた研究室に、一人の少女が足を運んだ。

 

「ふふっ、相変わらず可愛げのない研究室ね」


 彼女の名前はセリカ・ローレンス。

 誇り高き錬成師の一族、ローレンス家の令嬢でアリアの妹である。


「ようやくいなくなってくれたわね。あんな平民の子が私の姉なんて耐えられないもの」


 理由なんてそれだけ。

 愛人の子であるアリアを姉と呼ぶことに嫌悪感を抱いていた彼女は、どうにかしてアリアを陥れようと画策していた。

 ずっと前から地道に、徐々に彼女の成果を奪うことで、彼女の小さな居場所を奪っていた。

 そうして現在、彼女の居場所を完全に奪いきったのだ。


「まったくいいざまね」


 セリカはアリアを酷く敵視している。

 ただそれは、見下していたわけではない証拠。

 なぜならセリカは、アリアが優れた錬成師の素質を持っていることを知っていたから。

 愛人の子供でしかない姉に錬成師としての才能がある。

 しかも、自分より評価されるポーションを作り上げていたことが我慢ならなかった。


 だから奪った。

 立場も、成果も、何もかも自分の物にすり替えた。


「まぁ良いわ。これで名実ともに私が最高の錬成師になれる。ここにある研究成果さえあれば……ふふっ」


 セリカは笑う。

 輝かしい自身の未来を想像して。


「あの女にも出来てたことなんて、私が出来ないはずないわ」


 セリカはアリアの才能を知っている。

 その上で、自身にも同等以上の才能があると確信していた。

 故にアリアが残した研究成果さえあれば、同等以上の結果が出せるはずだと、信じて疑わなかった。

 

 しかし、彼女は知らない。

 否、彼女だけではなく、多くの者たちが知りえない。


 アリア・ローレンス。

 彼女の才能が、天才と言う言葉だけで納まらないということを。

 ただの天才が、努力によって更なる才能を開花させていたことを。

 すでに手放し失ってしまった彼女たちには知りようもなかった。


 そしてこれから……

 彼女の喪失を痛感していくことになるだろう。

 

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