45.フローリアの街
倒れていた男性は二人。
どちらも軽症で、命に別状はなかった。
荷車の中身も確認して、特に盗まれた物はなかったそうだ。
「本当にありがとうございます。何とお礼を言っていいやら」
「礼なら彼女に言ってくれ」
そう言ってユレン君は私のほうを手で指す。
二人の商人は何度も頭を下げながらお礼の言葉を口にした。
「ありがとうございます。頂いたポーションのお陰で傷もすっかり治りました」
「こんなに効き目の良いものは初めてですよ」
「いえ、お気になさらず。もし体調が優れないようでしたら、お医者さんにかかってください」
商人二人は、一度フローリアの街に戻ることにした。
横転した所為で壊れた品物もあるらしく、王都へ向かうよりフローリアのほうが近いから、落ち着いてまた出発するらしい。
私たちは現場を調べるために残ることにした。
二人を見送る。
「助かったよアリア。よくポーションを持ってたな」
「どういたしまして。最近は持ち歩くようにしてるんだ」
治癒のポーションの他にも解毒ポーションなんかも揃えてある。
以前に助けられなかった人がいる。
もう二度と同じ経験をしなくていいように、常に備えるように心がけているんだ。
予想はしてなかったけど、今回はその備えが役に立って良かった。
ホッとする私。
そこへ周囲の確認を済ませたヒスイさんとフサキ君が戻ってくる。
「どうだった?」
「駄目だ。逃げた方向はわかるけど離れてる」
「どうします? オレなら追えますけど?」
「……いや、不用意にいかないほうが良い。最近の盗賊は動きが変だからな」
ユレン君の話を聞いて納得する二人。
私だけ置いてきぼりをくらっている感覚だ。
「変っていうのは? 何かあったの?」
「盗賊は今までもチラホラいたんだ。でもみんなバラバラで、数も少なかった。それにここみたいに目立つ場所には出てこなかった」
続けてヒスイさんが説明する。
「だが最近になって、まとまった動きをするようになったんだ。彼らをまとめる頭が生まれた可能性が高い」
「その情報ならオレも持ってますよ! 頭が出来たのはほぼ確定ですね。ここ数週で勢力が一気に膨れ上がってますし。噂じゃやばい薬品も取引してるらしいですよ」
「薬品……」
毒薬か何かだろうか。
過去の出来事が連想されて、ぎゅっと心臓が痛くなる。
危険な薬品ほど悪い人たちに渡ったとき、どんな結末を迎えるか想像がつかない。
「一先ず俺たちもフローリアに入ろう。懸念はあるがやることは済ませないとな」
「そうだな。衛兵に報告して王都にも連絡してもらおう。しばらくは周辺の警備を増やさないと」
「オレがひとっ走りいってもいいですよ?」
「お前は駄目だ。アリアの護衛に専念してくれ」
「了解です」
私たちは馬に乗り、フローリアの街を目指した。
その後は特に危険はなく、街の中に入ることが出来た。
王都に比べて小さな街だけど、人が多く栄えている。
街を行き来する商人が多いのも特徴らしい。
「俺たちは仕事があるが、アリアたちはどうするんだ?」
「えっと、出来れば近くの森まで七ノ葉草を取りに行きたいんだけど……」
さっきのこともあるし、不安ではある。
ただせっかく訪れたのだから、せめて数本は採取したいという気持ちもあって。
つまるところ悩んでいた。
「大丈夫ですよ! オレが一緒にいるし、そんな距離も離れてませんから」
「昼間のうちなら俺も問題ないと思うぞ? 奴らが狙っていたのは荷物だ。彼女を狙う理由はない」
フサキ君とヒスイさんはそう言ってくれている。
ユレン君は、まだちょっぴり悩んでいるようだった。
「アリアはどうしたい?」
「私は……ちょっとでも良いから素材を集めておきたい。そんなに時間はかからないと思う」
「そうか。なら日中までだ。夕方には必ず戻ってきてくれ」
「うん」
ユレン君の了承も得て、私とフサキ君は街のすぐ横にある森へ向かうことにした。
特徴的な森で、緑色の葉っぱの木々以外に、赤や茶色の木々も生えている。
森はすでにいろんな人が探索した後で、迷わないように看板も立っていた。
危険な動物もいないし、思っていた以上に安全な場所みたいだ。
「フサキ君、どの辺りか覚えてる?」
「もう少し先ですよ。たしか崖があるんですけど、その手前に生えてました」
「崖の近く。ちなみに葉っぱの形は覚えてる?」
「普通の形だったと思うんですけど~ 丸い感じの、あんまりハッキリとは覚えていませんね」
七ノ葉草は環境によって葉の形が変わる。
それが七種類あるから、七ノ葉草という名前がついた。
丸い形状なら三種類。
私の予想だと、細長い楕円形の葉っぱになっていると思う。
「ねぇフサキ君、どこかに木の実とかなってないかな? 出来るだけ酸味がつよいのがいいんだけど」
「あると思いますよ。ちょっと寄り道しましょうか?」
「うん」
そうして私たちは森の奥へと進んでいく。
フサキ君もいるし、道も出来ていて安心な場所だ。
それでも少しだけ不安を感じる。
立て続けによくないことが起こったから神経質になっているだけだろう。
今回の件は私とは直接関係ないし、きっと大丈夫だろうと考えていた。






