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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

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44.不穏な影

 フローリアの街までは馬で向かう。

 三頭の馬が整備された街道を進み、緩やかな時間が流れる。

 

「ん……」

「おいユレン、いい加減拗ねるのはやめろって」

「別に拗ねてない」

「どう見ても拗ねてますね」


 フサキ君にも言われてしまう始末。

 私にもわかるくらいユレン君はむくれていた。

 ヒスイさんがため息をこぼす。


「あのな~ アリアを後ろに乗せてあげたい気持ちはわかる。けど主の馬に従者を乗せるわけにいかないだろ?」

「そんな話してない」

「殿下って時々子供みたいなこと言いますよね~ 子供のオレが言うことじゃないけど。ね? 姉さん」

「はははははっ」


 私は何と答えればいいのだろうか?

 馬は三頭。

 数が足りなかったわけじゃなくて、私が馬に乗ったことがないから、誰かの後ろに乗せてもらうことになった。

 ユレン君は王子様だから、後ろに従者は乗せられない。

 フサキ君も馬には乗れるけど、身体が小さいから二人乗りは危険。

 という理由で今、私はヒスイさんの後ろに乗せてもらっている。


「すまんなアリア、うちの主が子供で」

「誰が子供だ!」

「反応する時点でわかってるだろ~」


 この二人は普段通りだ。

 拗ねているユレン君を見るのは新鮮だけど、和やかな雰囲気が心地良い。

 馬に乗る経験も初めてで、普段より視線が高いから、周りの景色も違って見える。


「まぁ良い。どうせすぐにつく」

「二時間くらいはかかるけどな?」

「うっ、余計なこと言うなよ。せっかく割り切ってたのに」

「やっぱり気にしてるんじゃないか」


 ヒスイさんに煽られ、いい様にからかわれたユレン君は眉をぴくぴく動かす。

 怒りを堪えているのがわかりやすい。

 王子の彼に意地悪を言えるなんて、王城でもヒスイさんだけじゃないかな?

 普通だったら即クビになる案件だ。


 しばらく進むと、商人の馬車とすれ違う機会があった。

 ユレン君に気付いた人たちは馬車を停め、一礼して通り過ぎるのを待つ。

 この街道は商人たちの通り道になっているようだ。


「あの、今さらなんですけど、王子のユレン君が堂々と外出しても大丈夫なんですか?」

「普通は駄目だな。本来なら大人数で警護するだろう」


 ヒスイさんは軽いノリで答えた。

 彼の言う通りだと私も思うけど、今はたった四人で外出中。

 私は戦えないし、もし同行しなかったらヒスイさん一人だったことになる。


「前にも話したけど、俺は一人でも十分戦える剣の腕がある。下手に護衛をつけられるより、少人数のほうが動きやすいんだ」

「俺もいるからな。よほどの馬鹿じゃない限り襲って来ない」

「って感じで、父上には許可をもらってるぞ。最初に貰うまで苦労したけどな」

「それはお前がよく抜け出してたからだろ」


 二人の話を聞いてなんとなく場面が想像できてしまう。

 ユレン君は私と森で会っている間も、勝手に城を抜け出していたみたいだし。

 国王陛下も心配したに違いない。

 私も一応当事者側だから、悪い気持ちがあったり。


 話をしながら街道を進む。

 平和そのもの。

 風の吹き抜ける音と鳥の鳴き声がよく聞こえるくらい。

 穏やかな時間だった。

 襲われるなんて不安は一切なくて、事実何事も起こらなかった。


 私たちには何も。


「ん? 殿下! あの荷車煙出てますよ!」

「なに?」


 最初に気付いたのはフサキ君だった。

 私たちが進んでいる街道の先に荷車が停車していた。

 うっすらとだが煙が立ち上っているように見える。

 馬車の周りには武装した男たちが数人。

 あきらかに不穏な空気が漂う。


「盗賊の襲撃か?」

「ヒスイ」

「ああわかってる。急ぐぞ」


 ユレン君とヒスイさんの馬が加速する。

 少し遅れてフサキ君も鞭をうち、三頭の馬がかける。


「おら! さっさと全部出しやがれ」

「や、やめてください! それはうちの大切な商品で」

「うるせぇぞ! 殺されてーのか?」


 怯える男性に剣を突きつける盗賊の男。

 下衆な笑みを浮かべる彼に、ユレン君が叫ぶ。


「そこまでだ!」

「あん?」


 彼らの視線がこちらに向く。

 ユレン君が馬から飛び降り、ヒスイさんも続く。

 私はヒスイさんに手を引かれて降りる。


「フサキ、彼女を守ってくれ」

「了解です! こっから援護しますよ」

「ああ」

「何だてめーら」


 ぞろぞろと盗賊が姿を現す。

 荷車の裏に隠れていた数もいれて八人。

 全員武装している。

 不安になる私の前にフサキ君が立ち、振り返っていつもの調子に言う。


「大丈夫ですよ。二人なら問題ないです」

 

 そう言われても、心配なことは変わらない。

 私はごくりと息を飲み、ユレン君たちを見守る。


「俺の国で勝手されると困るな」

「あ? 俺の国だと……」

「おいこいつ例の第三王子じゃないか?」

「なっ、マジか」


 盗賊たちの雰囲気が変わる。

 ユレン君の正体に気付いてから、急に及び腰になる。


「ちっ、ずらかるぞ」


 そのまま戦うことすらなく、彼らは逃げて行っていく。

 ヒスイさんが尋ねる。


「追うか?」

「いや、今は怪我人の手当てと荷車の安全確保が先だ」

「わかった。フサキも手伝ってくれ」

「了解です!」


 フサキ君とヒスイさんで倒れている人たちに駆け寄る。

 剣を鞘に納めたユレン君は、逃げて行った盗賊たちを見つめながら、とても悲しい顔をしていた。

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