40.助手くんになるそうです
「というわけで! 今日からお世話になりますっ!」
「――え?」
何の脈絡もなく紹介されたのは、公爵様と一緒にいたフサキ君だった。
ユレン君とヒスイさんが一緒にアトリエを訪れて、紹介したい人がいるという話題から、彼がずどんと登場したわけだけど。
「これからよろしくお願いします! 姉さん!」
無邪気な笑顔を見せるフサキ君。
キラキラな瞳で見られると、無性に抱きしめたい衝動にかられる。
イリーナちゃんもそうだけど、この年の子供はなんでこんなにも可愛いのかな?
私は湧き上がる衝動を抑えてユレン君に尋ねる。
「えっと……どういうこと?」
「うーっとだな~ こいつが例の件に関わってたのは知ってるだろ?」
「うん」
廊下でも話したけど、彼がナイフを使って私に手紙を差し出していた。
公爵様の命令らしいけど、フサキ君は自分が勝手にやったと主張している。
という話もすでに聞いている。
「実害はなかったとはいえ、こいつがやったことは事実だ。それで公爵と話してな? フサキの身柄はこっちで預かることになったんだ」
「そうなんだ」
「ああ。で、色々と考えたんだが……」
「オレが姉さんの助手兼護衛役になることが決定しました!」
フサキ君はキリっと背筋を伸ばして敬礼した。
助手?
護衛役?
「私の?」
「そうだ。以前から検討していてな。ちょうどいい人材だから雇うことにした」
「ん、ん?」
理解できなくてキョトンとした顔になる。
フサキ君を助手にすることはわかったけど、その経緯がよくわからなかった。
なんだか複雑な事情もありそうな予感がする。
「まぁともかく、こいつを助手にしたい。もちろんアリアが嫌なら断ってくれても良いぞ」
「断らないでください姉さん! 断られたらオレ行くとこなくなるんですよ!」
フサキ君は小動物のようなつぶらな瞳で私に閉まる。
物欲しそうな顔をされたら断れない。
「べ、別に嫌じゃないので」
「良かったー! 姉さんの助手としてしっかり働きますね!」
フサキ君はピシッと敬礼して見せる。
そこにちょうど扉が開き、用事から戻ったイリーナちゃんが顔を出す。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい、イリーナちゃん」
「あれ? お兄さまたちもいらしてたんですか?」
「おう。ちょっと用事があってな」
イリーナちゃんの視線がフサキ君に向く。
「フサ君?」
「ひっさしぶりだね~ 姫様」
「やっぱりフサ君だ! 久しぶりだねー!」
イリーナちゃんは飼い主を見つけたワンコのように走り出し、フサキ君の元へ近寄った。
彼の手を握ってぶんぶんと上下に振る。
「ちょっ、あんまはしゃいだら危ないよ」
「会えて嬉しいよフサ君! 最近全然遊びに来てくれなかったから~」
二人は親し気に話している。
その様子を見ながら、ユレン君が小声で教えてくれた。
「フサキは元々、病気と闘っている間のイリーナの護衛をしていたんだ」
「そうなの?」
「ああ。護衛というか話し相手かな? 公爵が気を利かせてな。イリーナと歳の近いあいつを護衛にして、出入りを許可してたんだ。外に出られないイリーナに、外の話をしてやれって」
「公爵様が……」
ユレン君だけじゃなくて、イリーナちゃんのことも気遣ってくれていたんだ。
とても優しい方だな。
「まっ、あいつには感謝してるけど、アリアにナイフを向けたのも事実! しっかりこき使っていいからな?」
「あははははっ~」
「あっれ? そんなこと言っても駄目ですよ殿下! 姉さんは優しい人なんで、オレをこき使うとかできな、痛い痛い痛い!」
ユレン君がフサキ君の頭をぐりぐりやっている。
見るからに痛そう。
「痛いですよ殿下!」
「うるさい少しは反省しろ! お前がやったことはちゃんと覚えているんだからな? しっかり貢献して償え」
「わかってますよ! ちゃんと仕事はするんで!」
「お兄さまとフサ君も仲良しですね~」
賑やかになるアトリエ。
最近はこんな時間も減っていたから嬉しい。
すると、後ろにいたヒスイさんが前へ歩き、私の隣に立った。
「フサキはあんなだし子供だが、腕は一流だ。危険から守ってくれるから安心してほしい」
「はい」
「それとすまなかったな。今回は助けてやれなくて」
「いえそんな。相談に乗って頂いただけでも嬉しかったです」
ヒスイさんに相談したお陰で、不安な気持ちが落ち着いたのは本当だ。
だから凄く感謝している。
そこへぐりぐりをやめたユレン君がやってきて。
「ちょっとは怒って良いぞ? こいつ、途中から知ってて放置してたから」
「え? そうなんですか?」
「実はな。フサキが関わってるのは知ってた。でも仕方がないだろ? 俺にも立場があったし、あいつに傷つける意思もなかったみたいだし、元が公爵の差し金だったから動くに動けなかったんだよ」
「あ、それで……」
全然音沙汰がないと思ったら。
ヒスイさんも裏で苦労していたみたいだ。
「わかったか? だから今後は俺に相談するんだぞ?」
「いや先にこっちに報告してくれ。ユレンに伝えてからだとこいつが先走るから」
「先走らないだろ! 俺は慎重派だ!」
「どこがだ? 今回だって彼女から相談された後、公爵に文句言いにいく勢いだった癖に」
そ、そうだったの?
「俺が止めなきゃ行ってただろ?」
「それは……わからんが」
「ほらな? そういうわけだから頼むよ。と言っても、基本は君の好きにすれば良いさ」
「そうだな。まぁ一先ず、何かあれば誰かを頼れ。一人で考え込むなよ?」
「うん」
こうして慌ただしい日々が終わり、また新しい日常が始まる。
第二章中盤(公爵編?)はこれにて一区切りとなります!
明日からは第二章後半が開始されますが、果たしてどんな波乱が待っているのか?
楽しみに待っていてください!
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現時点での評価で構いません。
少しでもこの先が気になる、読みたいという方はぜひともよろしくお願いいたします。






