表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/84

26.抜け殻のような日々

第二章開幕です!


 早朝。

 窓の外から見える空は灰色。

 雨は降っていないけど曇り空で、日差しの眩しさも感じない。

 目覚めとしては普通。

 いや、ちょっと気分が乗らないくらい。


「……仕度しなきゃ」


 私はしばらくぼーっと窓の外を眺めていて、ハッと時計がさす時間に気付いた。

 寝坊というほどじゃないがギリギリ。

 普段より急いで支度を済ませ、私はアトリエに向かった。


  ◇◇◇


 小麦の新品種開発は継続中だ。

 まだ一つしか完成していない上、あれから他事もあって進んでいない。

 いくつか新しい素材を集めているものの、ピンとくるアイデアは浮かばなかった。

 なんだか惰性で仕事をしている気分だ。 

 明らかに仕事に身が入っていない。

 理由は……わかっている。


「終わった……んだよね?」


 私は自分にしか聞こえない小さな声で呟いた。

 ラウルス殿下と再会して、過去の自分の愚かさを再認識させられて。

 過去の自分にけじめをつける。

 そのためにユレン君に協力してもらいながら、自白剤づくりをした。

 結果は、思い通りになったと思う。

 他国のことだし詳しい事情はわからないけど、あの日からメイクーイン王国は慌ただしい様子だ。

 報じられている内容では、第二王子が失脚したとされる。

 理由は明確にされていない。

 それと同時期に、ローレンス家の名前も取り上げられていた。

 宮廷で働く娘が不祥事を働いたと。

 どうやらラウルス殿下の協力者は妹のセリカだったらしい。

 まさか彼女まで関わっていると思わなくて、正直かなりショックを受けた。


「そこまでして私を陥れたかったのかな……」


 嫌われていた自覚は当然あって。

 理由もなんとなく想像できる。

 それでも、他人を犠牲にしてまで私をこき下ろしたかったのか。

 甚だ理解できないことだ。


 とは言えこれで、全ては終わった。

 長く続いた悲劇は幕を下ろしたんだ。

 私の過去も……


「お姉さま、こちらの素材なのですが……お姉さま?」

「え、何ですか?」

「いえ、配合の提案をしようかと思ったのですが……お疲れなのです?」

「そんなことないですよ? どれですか?」


 いけない。

 ちゃんと仕事に集中しなければ。

 私がここ数日頑張ったのは、これからも王宮で働いていくため。

 過去とけじめをつけ、前を向いて歩いていくためだ。

 今も手伝いにくてくれるイリーナちゃんや、協力してくれたユレン君たちに心配はかけられない。

 

 しっかりしなきゃ。


 そう心の中で自分に言い聞かせる。

 だけど、不意に思ってしまうんだ。

 本当にこれで良かったのか。

 過去を清算出来たのか。

 いくら悪を露見させても、私の愚かさで傷ついた人がいる事実は変わらない。

 結局私は、恨まれるべきなんじゃないかって。


  ◇◇◇


 ある日の夕方。

 空は曇っていつもより暗い。

 ラウラ室長の部屋に、彼女を含む四人が集まっていた。


「――と言う感じで、お姉さまの元気がありません」


 イリーナが三人に普段のアリアの様子を伝えると、ラウラ室長が話を繋げる。


「私も感じてるわ。仕事はいつも通りやってくれてるけど、心ここにあらずって感じね。悩んでいるようで、落ち込んでいるようで、なんだか複雑な感じだわ」

「そうか……」


 二人から話を聞いたユレンは悲しそうな表情で下を向く。

 その様子を見たヒスイが尋ねる。


「あの件は上手くいったんだよな? 第二王子と協力者の」

「……ああ、聞いた限りでは完璧に予定通りだったよ。第二王子は失脚、協力者も処罰されたって話だ」

「だったら落ち込む必要なくないか? 悪を成敗したわけだし」

「俺もそう思うんだが……いや、そう簡単ではないんだよ」


 諸悪の根源は罰せられた。

 彼女が気に病むことはない。

 協力者もハッキリしたことで、彼女が罪に問われることもないだろう。

 

「アリアは悪くない。俺たちがそう思っても、彼女自身が自分を許せないでいるんだ。自分の所為でって……優しいからな、アリアは」

「なるほど、難しい問題だな」

「私みたいに過去は過去で流せる性格だったら良かったのにね~」

「お兄さま、何か私たちに出来ることはないのでしょうか?」

 

 妹からの言葉に考え込むユレン。

 何かしてあげたい気持ちが彼にはある。

 しかし、何と声をかけるべきか、正解が思いつかない。


「結局放っておくことが一番だと思うぞ? 俺は」

「私もよ。あの子自身の問題に、他人が口を突っ込んでもよくならないわ」

「そうだな」

「でも……お姉さま、辛そうです」

 

 イリーナの悲しい声が部屋に響く。

 この場にいる全員、アリアのことを気遣っていることは同じ。

 そして、良い方法が浮かばことも共通していて。


「あーでも! うまい方法はないけど、気分を紛らわすだけなら出来ると思うわよ?」

「本当か?」


 ラウラの発言に一番早く反応したのはユレンだった。

 彼女はニヤっと笑う。


「あるある、ありますよ~ ちょうどユレン殿下にピッタリな方法が」

「俺に?」

「はい。えっとですね~ ちょうど明日アリアちゃんが休みなので――」


  ◇◇◇


 時計を見ると午後七時。

 辺りはとっくに暗くなっていた。


「今日はここまでかな」


 一日の仕事を終え、片づけをする。

 明日は休みの日だけど、特に予定もない。

 あまり研究の進みも良くないし、仕事をしたほうがいいかな。

 何かしていないと落ち着かないという事情もある。

 そんなことを考えていると……


「アリア」

「ユレン君?」


 いつの間にかアトリエの中に彼が入ってきていた。

 様子を見に来てくれたのだろうか?

 それにしてはなんだか……様子が変?

 緊張しているように見える。


「どうしたの?」

「あーえっと、明日って休みなんだよな?」

「え、うん」

「じゃあさ、俺とその……一緒に遊びにいかないか?」


 言いながら照れているユレン君。

 数秒、意味を考えて固まった。

 

「そ、それって……」


 デートって言うんじゃないの?


一章に引き続き評価をお願いします!


ブクマ、評価はモチベーション維持、向上につながります。

【面白い】、【続きが読みたい】という方は、ぜひぜひ評価☆☆☆☆☆⇒★★★★★をしてくれると嬉しいです!

【面白くなりそう】と思っった方も、期待を込めて評価してもらえるとやる気がチャージされます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿してます! 下のURLをクリックしたら見られます

https://ncode.syosetu.com/n7004ie/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

5/10発売予定です!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000



5/19発売予定です!
https://m.media-amazon.com/images/I/71BgcZzmU6L.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ