閑話 もう一人の末路(ざまぁ補足)
すみません投稿ミスがあったので再掲しています。
第一章部分の補填です。
ラウルスが二人の策略に嵌り、自身の罪を国王の前で暴露している頃。
もう一人の共犯者は研究室でうなされていた。
「終わらない……何なのよ本当っ!」
バンッとテーブルを叩き、置かれた書類の山が崩れる。
自分でやったことに腹をたて、残っている書類を腕で薙ぎ払いまき散らかす。
「やってられないわ! こんなの一人が任される量じゃない。これに耐えられる人なんて――」
本物の天才だけだ。
そう思った時、彼女の脳裏には姉の姿が浮かんでしまった。
悔しさに唇をかむ。
彼女が姉を嫌う一番の理由、それは嫉妬だった。
気付いていたのだ。
同じ錬成師だからこそ、姉の規格外の才能に。
それに見合っただけの努力を、日々積み重ねていたことに。
そうして気付いた時には大きな差が出来ていた。
生まれた時間は関係ない。
才能と努力。
どちらも劣っている自分では、姉の代わりは務まらない。
「何なのよ……いなくなっても邪魔するの?」
実感してしまったことで、彼女の中の劣等感は膨れ上がる。
すでに気付いているかもしれないが、彼女は過去の過ちを忘れている。
その場の勢いで、姉への仕返しで。
自分の劣等感を慰めるためだけに、人の死に関与したことを。
「失礼する! 宮廷錬成師セリカ・ローレンス」
「え? な、なんでしょう?」
つけの回収が遅れてやってきた。
彼女の研究室には険しい表情をした騎士たちが入り込んでくる。
三人の騎士のうち二人が、セリカの左右に立つ。
「貴女には第一王子暗殺に関与した疑いがかけられている! 真偽を陛下の元で語っていただきたい」
「え、え?」
ここでようやく思い出す。
自分の罪を。
「ま、待ってください!」
「ご同行願おう。すでに陛下と、元第二王子がお待ちだ」
「元?」
「そうだ」
彼女の理解が追いつかない。
それも仕方がないだろう。
誰も予想していなかったはずだ。
第二王子が肉親を暗殺したことも、ボロを出すことすら。
何もわからないまま、二人の騎士に腕を掴まれ引っ張られる。
「早く来てください。弁明するなら早いほうが良い。もっとも、元第二王子が自白された時点で……貴女が重罪人であることは変わりませんが」
「そ、そんな……」
彼女は抵抗する力を失う、なすがままに連れていかれる。
因果応報。
劣等感を補う方法に、姉を陥れる選択をとってしまった時点で、こうなる未来は確定していた。
本当の天才で、愚直に努力し、成果を挙げた人こそ報われる。
身をもって体感した彼女は、次こそ反省できるだろうか?
もっとも、今世で期待するには……遅すぎた。






