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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一章

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25.因果応報

閑話に投稿ミスがありました。

一部修正して7時に投稿します。

 ラウルス殿下の悪行を止める。

 私は、私の過去にけじめをつける。

 そのために必要な物を揃えることにした。


「まずは自白剤だな。普通の飲むタイプじゃあいつは欺けない」

「うん。だから今回は飲むタイプじゃなくて、臭いを嗅ぐほうにするよ」


 ポーションの中には飲まずに効果を発揮する物がある。

 これから用意するのは、臭いを嗅ぐことでしか効果が出ないポーション。

 逆に液体へ溶け込むと効果がなくなるようにしよう。

 そうすれば、仮に他の人が口に入れても害はない。

 後はどうやって自然に臭いを嗅がせるかだけど、それについてはもう考えがある。


「じゃあ自白の場だな。それは俺のほうで何とかしよう」

「出来るの?」

「ああ、一応これでも王子だからな。隣国の王も、俺の言葉を完全に無視することは出来ない。普段なら願い下げだが、今回は立場を存分に利用するさ」


 そう話すユレン君はいつになく意地悪な顔をしていた。

 悪いことを考えている子供みたいだ。

 

「とにかくこっちは任せろ。アリアはポーションづくりに専念してくれ」

「うん」

「三日もないけど、出来るよな?」

「もちろん」


 やると決めたからには全力で。

 例えどんな結果になっても後悔しないように頑張ろう。

 今はそれしか考えていない。


 そして運命の三日後――


 ラウルス殿下は何食わぬ顔で再び王城を訪れた。

 あの日と違うのは、ヒスイさんとラウラさんはいないこと。

 今、この部屋には私とユレン君、ラウルス殿下の三人しかいない。

 三日前と同じ部屋で向かい合い、にこやかに挨拶をしてくる。


「やぁアリア、依頼は受けてくれたのかな?」

「……はい」


 私は作成したポーションを差し出した。

 透明な液体の入った瓶を三本、テーブルの上に並べる。


「さすがだね。三つも作ってくれたのかい?」

「はい。ただ一つ、注意点があります。このポーションは強力ですが、空気に晒すと効果が薄れてしまいます。だから作成後すぐに密閉しました。とはいえ時間が経過すれば同様に効果も薄れます」

「なるほど、使うなら出来るだけ早く……か」


 ラウルス殿下はニヤリと笑う。

 今の所、不審には思われていなさそうだ。


「はい。効果の有無を確認する場合は、蓋を開けた時に香りを確認してください。甘い香りが強ければ、効果も強いままです。あとは液体に混ぜてお使いください」

「わかったよ。丁寧にありがとう。君はやっぱり才能あふれる人材だね」

「……ありがとうございます」


 ほしくもない言葉だけど、今は素直に受け取る。

 悟られないよう自然に。

 少しの怯えを見せながら。


「じゃあこれで失礼するよ。あーそうそう、また頼みに来ると思うけど、その時はよろしくね?」

「……」


 これにはあえて答えない。

 苦悩を見せた方が信じやすいから。

 事実、私は次なんて考えていないし、受けるつもりはない。

 これで最後にするんだ。


 ラウルス殿下が部屋を出る。


「あとは祈るだけだな」

「うん」


 どうかお願いします。

 彼の悪事が、メイクーインの人たちに伝わりますように。


  ◇◇◇


 王城に戻ったラウルスは、さっそく手に入れた毒を試すことにした。

 ターゲットは国王陛下。

 兄の次は父を暗殺することで、自身が国王となる未来を画策している。

 ねらい目は夜。

 国王はお年を召していて、睡眠前に薬を飲んでいる。

 その際に飲む水に、透明な毒を混ぜ込む算段だ。


 彼は薬が用意されている場所に足を運んだ。

 何も不自然なことはない。

 この日のために、彼は以前から父を心配して薬を準備する息子、という役を演じていた。

 周囲からの評判も悪くない。

 彼を疑う者など、今の王城には存在しなかった。


「香りは……うん、ちゃんと甘いね」


 言われた通りの手順を踏み、彼は毒を水の中にまぜる。

 透明だから混ぜても見た目ではわからない。

 香りも水と混ぜたことで消失する。

 後は飲ませるだけの状態になり、使用人の一人を呼びつけた。


「すまないが君、このお薬を父上に届けてくれないか? 今日も僕がいくつもりだったけど少し疲れてしまってね?」

「かしこまりました」


 使用人は疑いなくそれを受け取った。

 これで仮に毒殺されても、疑われるのは自身ではなく使用人になる。

 アリアから毒を手に入れたという事実さえわからなければ、ラウルスは疑われない。

 そういう人物を表で演じているからこそ、完璧だと感じていたはずだ。


 しかし翌日――


 ラウルスは国王に呼び出され、王座の間に足を運んだ。


(どういうことだ?)


 毒が効いていない。

 予定なら一晩で効果が発揮され、国王は死亡するはずだった。

 

(時間経過で効果が薄れたか? ならば別の毒を作らせよう)


 そう考えているラウルスに、国王は告げる。


「ラウルスよ。お前に聞きたいことがある」

「何でしょう? 父上」

「……ある人物から忠告を受けた。私の命が……狙われていると」

「――!?」


 ラウルスは小さく反応するが、すぐに平静を装う。


「それは一大事です! すぐに警備を固めなくては!」

「……ラウルス、お前なのか?」

「父上?」

「お前が私を殺そうとしているのか?」


 疑いと、悲しみの目。

 自らの息子に殺されかけたのかと、国王は信じたくない気持ちでいっぱいだった。


(……アリアたちが何かしたか? 馬鹿な真似を……信じるわけがないだろう)


 ラウルスは心の中であざ笑う。

 いつものように誠意を込めて、清々しく否定しようとした。

 だが――


「ええ、その通りですよ父上! 僕は貴方を殺すつもりで毒を入れました。それなのになぜ生きているのです? 早く死んで、僕に王位を譲ってください」


 口から出た言葉は別だった。


(――は? なんだ?)

「事実なのか……ならば兄を手にかけたというのも」

「事実ですよ。僕が殺しました。扱いやすくて丁度良い錬成師がいたのでね? 脅して作ってもらったんですよ」

(どうして話してしまう? 話すつもりはないのに)


 困惑するラウルスは知らない。

 彼が臭いを嗅いだ自白剤は、本音と建て前を逆転させる効果を持つ。

 効果時間は一日。

 一日の間だけ、彼は本音を隠せない。

 そこへ送られてきた隣国の王子からの手紙。

 全て二人の計画通り。


「アリアは優秀な錬成師でしたよ! でもあれは駄目だ。僕の言うことに最後で逆らう。だから資料を彼女の妹に渡して代わりに錬成してもらったんです。妹のほうは素直で良い。才能は姉以下だが」


 協力者はセリカだった。

 そのことすら、聞かれる前に話してしまう。

 隠していた本音の多さゆえに、溢れ出ているのだ。

 もはや止められない。


「まったく、誰もかれも無能ばかり。使えない者たちなど早々に消えてしまえば良い。父上もですよ」

「ラウルス……この者を捕らえろ!」

「なっ、何をする? 父上! 僕が何をしたというんですか!」

「たわけが! お前はもはや息子ではない!」


 ラウルスの頭は混乱している。

 自白剤の影響で、本音と建前が混ざり始めた。

 どちらが本当なのか、彼にもわからなくなるだろう。

 全て因果応報。

 彼自身がまいた種、成長したツルにからめとられて、足を引っ張られた。

 

 数日後、第二王子は病死したと発表された。

 真実を知る者は少ない。

 しかしこれで、一つの悪は封じられた。

新作投稿しました!

タイトルは――


『姉の身代わりで縁談に参加した愚妹、お相手は変装した隣国の王子様でめでたく婚約しました……え、なんで?』


ページ下部にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!

リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。


https://ncode.syosetu.com/n7004ie/

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5/10発売予定です!
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