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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一章

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22.襲撃と再会

 頭上を掠めた矢が、頭の中で再生される。

 一瞬でも気付くのが遅れていたら、ユレン君が庇ってくれなかったら。

 私は死んでいた。

 そう感じて、身体はブルっと震える。

 混乱よりも恐怖が全身を襲う。


「アリア! 大丈夫か?」

「う、うん」


 ユレン君が私の肩を掴む。

 こんな状況なのに優しい触れ方をしてくれて、少しだけ震えが治まった。

 しかし依然恐怖は感じる。

 何が起こったのかわからない困惑もだ。


「ユ、ユレン君、今のって」

「わからない。だから今は動くな」


 ユレン君は剣を構えて周囲を警戒する。

 風で森の木々が揺れる音が、これほど不気味だとは思わなかった。

 何かがいる。

 だけど目には見えない。

 私が狙われているのは確かだろう。

 王子ではなく、錬成師の私が。


「ったく、一緒についてきて正解だったな」

「ユレン君」

「大丈夫だ。俺がちゃんと守る」


 振り返ったユレン君は優しい笑顔を見せてくれた。

 私を安心させるために。

 その直後、またしても矢が飛んでくる。

 今度は左右の二方向、狙いは依然私だった。


「させるか」


 右の矢を剣で、左の矢を腰の鞘を抜き取り叩く。

 

「二人、いや――」


 ユレン君が上を見上げた。

 つられて視線を上げた先に、黒ずくめの男がナイフを構えて襲い掛かってくる姿をみる。


「三人か」


 私は声にならない悲鳴をあげそうになった。

 でもユレン君は冷静に、襲い掛かる男の刃を剣で受け止める。

 鍔迫り合いになるより前に蹴りを入れ、襲ってきた男と距離をとる。


「暗殺者だな? 一体誰に雇われた?」


 男は答えない。

 他の二人も姿を見せず潜んでいる。


「答えないよな? まぁ良い、力づくでねじ伏せてから聞き出すよ」


 私は初めてユレン君が怒っている顔を見た。

 眉間にしわを寄せ、怒りと殺気を込めて相手を睨みつける。

 穏やかで優しい普段の彼からは想像できない強烈な威圧感に、後ろで庇われている私でさえゾワッとした寒気を感じる。

 暗殺者の男が一瞬たじろぐ。

 その一瞬の隙をユレン君は見逃さない。


「詰めが甘いな」

「なっ……」


 私が目で追えない速さで男の懐に潜り込み、剣の柄で鳩尾を殴る。

 衝撃に耐えかねた男はその場に膝をつく。

 膝をついたことで男の頭が下がる。


「少し眠ってろ」

「がっ、う……」


 首後ろに打撃をいれ、暗殺者の男は意識を失い倒れ込んだ。

 続けてユレン君は左右の二人に視線を向ける。

 私にはわからない気配をユレン君は感じ取っているのだろうか?

 左右からは何も来ない。

 ガードが空いた私に攻撃もしてこない。


「……どうやら逃げたみたいだな」

「そ、そうなの?」

「ああ。まだ安心はできないけど、今は一先ず安全だよ」


 そう教えられてホッとする。

 力が抜けてへたり込む私に、ユレン君が慌てて駆け寄る。


「大丈夫か? どこ怪我したか?」

「う、ううん、怪我はしてないよ。緊張がほぐれて力が抜けちゃった」

「そうか」


 ユレン君がホッとしたのがわかった。

 僅かな時間だけ見せた怒りの表情も消え、普段通りの彼に戻っている。


「立てるか?」

「うん」


 私は彼の手を握り、引っ張り起されながら立ち上がる。

 未だ身体は震えているけど、先ほどの恐怖は感じない。

 歩く程度には問題なさそうだと自分なりに分析して、倒れている人に視線を向ける。


「ユレン君……あの人は……」

「暗殺者だよ。狙いはアリアだった」

「どうして私が……?」

「わからない」


 ユレン君は首を横に振る。

 剣を鞘に納め、ゆっくりと倒れている人に近づく。

 気絶しているだけだから、目を覚まして暴れないように拘束するつもりのようだ。

 ユレン君はごそごそと身体をまさぐっている。

 すると――


「ん? これは……」

「何かあったの?」

「……ああ」


 低いトーンの返事が返ってきた。

 その理由は、彼が見せてくれた懐中時計にある。

 

「え……この紋章って……」


 見慣れた紋章だった。

 何度も見て、忘れるはずのない形。

 メイクーイン王家の紋章が、暗殺者の所持品に刻まれていた。


  ◇◇◇


 襲撃を受けた後、私たちは急いで王城に戻った。

 暗殺者はユレン君が城の警備に連絡してくれて、身柄を預けることが出来た。

 一先ずは安全。

 そう、一先ずは。

 私が狙われた事実だけは未だに残っていて、後になるほど恐怖と不安を感じてしまう。


「心配するな。王城内なら危険はない」

「う、うん」

「はぁ、普段なら無断外出を怒る所なんだけどな……今日ばかりはナイスだよユレン」

「アリアちゃんを狙うなんてどこの誰? 暗殺者雇える金持ちは限られるでしょ?」 


 部屋にはヒスイさんとラウラさんも一緒にいてくれる。

 二人とも私のことを心配して来てくれた。

 現状はすでにユレン君が伝えてくれている。

 ヒスイさんが顎に手を当てながらユレン君に尋ねる。


「あっちの王家が関わってるかもって本当なのか?」

「可能性があるって話だ。暗殺者の所持品から王家の紋章が入った時計が見つかった」

「盗品じゃなくてか?」

「盗品なら持ち歩くか? 意図的に持たされていた……と、俺は考えているんだが」


 暗殺者の雇い主は、メイクーイン王家に連なる者の誰か。

 その誰かが私の暗殺を依頼した。

 ユレン君はそう考えているらしい。

 普通なら考えられないような理由だけど……私はふと、ある人物を頭に連想してしまった。


 トントントン――


「何だ?」

「ユレン殿下、アリア様、お客様がお見えになられております」

「この時間にか? 誰だ?」

「はい。メイクーイン王国第二王子、ラウルス・メイクン様です」


 その名を聞いた瞬間、私を最上級の寒気が襲う。

 なぜならさっき、私を殺したいと考えている人で思い浮かんだのが……ラウルス殿下だったから。

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