表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/84

19.実験開始!

 午前七時。

 目覚める時間になると、自然に意識が覚醒する。

 この時間に起きようと思ったら、勝手に頭が切り替わる。

 働き出してから身に着けた技術だけど、お陰で今まで遅刻はしたことがない。

 朝、アトリエに向う途中これをユレン君に言ったら……


「真面目過ぎないか?」

「え? そうかな?」

「間違いなくそうだよ。仕事で起きる時間が身体に染みついてるんだろ?」

「ユレン君だって早起きだよね?」


 私が廊下を歩いていると、よく声をかけてくれる。

 同じ時間くらいに起きていないと無理だよね?


「俺は普段はそこまでだよ。今は早起きする目的があるから出来てるだけで」

「そうなの? そんなに仕事が忙しいとか?」

「いや、仕事じゃなくて……何でもない」


 ユレン君は途中まで言いかけて黙ってしまった。

 なぜだか恥ずかしそうで、耳が少し赤い。

 私は首を傾げる。

 

「俺は良いんだよ。アリアはちゃんと休んでるだろうな?」

「もちろん。毎日決まった時間に終わってるから」

「それなら良いんだが……ところでイリーナはどうだ? 邪魔になってないか?」

「邪魔なんてとんでもない! すっごく助かってるよ」


 あの日以来、毎日姫様が手伝いにきてくれる。

 しかも想像以上に飲み込みが早くて驚いた。

 錬成術の基礎知識は持っていたけど、後から教えたこともちゃんと復習してくるし。

 錬成台を動かす才能さえあれば将来有望だったはずだ。

 その点は勿体ないと思うほど。


「そうか。邪魔になってないなら良い。そろそろ良い報告が出来そうって聞いたけど?」

「うん。試作品がいくつか完成したし、今日から次の実験に移るんだ」

「なるほどな。その話、今度また聞かせてくれ」

「うん」


 そんな約束を交わし、私はアトリエへ、ユレン君は王子としての仕事へ向かった。


  ◇◇◇


 錬成台に前に並ぶ私と姫様。

 互いに顔を合わせ、意気込みを口にする。


「アリアお姉さま! 今日もお手伝い頑張ります!」

「はい。よろしくお願いします」

「駄目ですよお姉さま」

「え?」


 姫様はちょっぴり呆れ顔で続ける。


「ここでの私はお姉さまのお手伝い、いわば助手です! 助手に敬語は不要です」

「い、いえさすがにそれは……」


 相手はお姫様だし。

 昔から知っているユレン君とは違って、数日前に出会ったばかりだから気が引ける。

 と思って流していたんだけど……


「ならせめてイリーナとお呼びください!」

「イリーナ様?」

「様は必要ありません!」

「うっ……」


 結構押しが強い。

 最初はお淑やかで元気な感じだったのに、慣れてくるとパワフルさが増していった。

 もちろん嫌な感じではないが。


「あの、姫様」

「イリーナですよ!」

「……イリーナちゃん」


 なんだか異様に恥ずかしい。

 顔を隠したいくらい熱くなってきた。


「イリーナちゃん……ですか」

「こ、これが限界なので」

「いえ、十分です」


 姫様はニコリと嬉しそうにほほ笑む。

 毎回思うけど、本当にこの笑顔は反則だ。


「敬語も必要ありませんからね?」

「そ、それはもっと慣れてからでお願いします」


 この押しの強さは陛下に似たのだろうか?

 それともお母さん?

 そういえば王妃様にはお会いしたことがないけど、今は外に出ているのかな?

 機会があったら聞いてみよう。


「じゃあイリーナちゃん、準備を始めましょう」

「はい!」


 今日からは普段の錬成とは違う。

 というより、今日は錬成をしない。

 すでに出来上がった試作品種は用意できている。

 私たちは準備を済ませ、室長のいる部屋に向った。


 トントントン――


「失礼します」

「はい、いらっしゃい。イリーナ姫も一緒なんだね?」

「こんにちは、ラウラさん」

「はいこんにちは。用件は昨日聞いたことでいいのよね?」


 私とイリーナちゃんは同時に頷く。


「準備出来てるよ。話も通してあるから勝手に出入りして問題なし。はいこれ鍵ね」

「ありがとうございます」

「良いの良いの。あとで私も様子を見に行ってもいいかしら?」

「もちろんです」


 会話のやりとりを済ませて、私たちは目的の場所へ向かうことにした。

 王宮を出て西に進むと、透明なガラスで作られた建物がある。

 中は菜園が広がっていて、錬成師が管理する施設の一つだ。

 ここなら環境を細かく調整して、錬成した小麦を栽培することが出来る。


「順番に植えていきましょう。環境を変えたいので、一定距離を離して」

「はい。じゃあ私はあっちからやりますね」

「お願いします」


 本当は汚れる仕事だし、姫様には見学していてほしいけど。

 ここ数日でよくわかった。

 姫様は一度やると決めたらつき通す、ちょっぴり頑固な性格らしい。


「そこはユレン君と似てるのかな?」


 彼も少し頑固というか、負けず嫌いなところがある。

 兄妹なんだなとしみじみ感じながら、作った小麦の種を植えていく。

 それぞれの環境に合わせた種だ。

 実際に栽培もその環境に出来る限り合わせる。

 一部は土の状態も変えておこう。

 それからもう一つ。


「お姉さま! こちら成長促進剤です」

「ありがとうございます」


 普通に栽培していたら何か月もかかる。

 さすがに待っていられないので、秘密兵器を用意した。

 特別な配合で錬成した成長促進剤だ。

 これを使えばあっという間に植物が成長する。

 小麦なら一週間くらいで栽培できる大きさになるはずだ。

 画期的な発明だけど致命的な欠点として、急成長に耐えかねて育ってすぐに枯れてしまうという点がある。

 あくまで実験のための道具に過ぎない。


「これでよし!」

「あとは待つだけですね」

 

 期待一割くらいの感覚で待つとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿してます! 下のURLをクリックしたら見られます

https://ncode.syosetu.com/n7004ie/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

5/10発売予定です!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000



5/19発売予定です!
https://m.media-amazon.com/images/I/71BgcZzmU6L.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ