表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/84

17.小麦を作ろう

ジャンル別3位ありがとうございます!

 用意された素材を吟味する。

 まず必ず必要な素材は三つ。

 成長した小麦、小麦の種、水だ。

 錬成する物の素体があるとスムーズなのと、改良を加える場合は元となる物がないと出来ない。

 そして、水。

 何だかんだいって、この水という素材が一番重要だったりする。

 錬成術において液体は、素材同士を繋げる役割を持つ。

 水は正確かつ滑らかに繋ぎ、油は強固に繋ぎ、異物が混ざり合った水は混ざり合った素材の特性が強くなる。

 液体を使わずに錬成をすると、大抵の場合は上手くいかず中途半端な代物が出来る。

 酷いときは爆発もするから気をつけよう。


「始めたばっかりの頃はよく爆発させてたな~ あの頃は液体の量も種類もわからなくて、適当に混ぜてたし」


 私には錬成術の師匠がいない。

 普通は誰かに教わるらしいけど、環境的にそれは難しかった。

 だから本から得た知識を元に、独学で錬成術を学んできた。

 思い返せば無茶ばかりしていたと思う。

 周囲が焼け焦げるほどの大爆発を起こした時も、よく生きていたなと驚いたものだ。


 さて、素材の確認も一通り終えた。

 そろそろ本格的に作業を始めようか、と考えていた所で思い出す。


「あ、そうだ」


 始める前にもう一つ、確認しておくことがあった。

 それは錬成台が動くかどうかだ。

 昨日はちゃんと動いてくれたけど、元々ここが放置されていたのは、錬成台が動かせなかったからで。

 その理由は、錬成台に刻まれた錬成陣が通常と違ったから。

 内容を理解できた今、私なら動かせると思うけど、念のために確認はいるだろう。


「ふぅ……」


 私は錬成台に手をかざす。

 意識を集中させ、心の中で錬成陣の起動をイメージする。

 すると、錬成台は柔らかな輝きを見せる。


「うん。ちゃんと動く――」

「わぁー」

「――ね、え?」


 自分以外の声が聞こえて思わず変な声が出てしまった。

 聞こえた声の方向は窓からだ。

 窓ガラスの所為で籠っていたけど、誰の声だったかはすぐにわかった。

 昨日聞いたばかりの声だから。


「姫様? どうしてこちらに?」

「あ! 見つかってしまいました」


 隠れていたつもりだったの?

 というかいつから見ていたのだろうか。

 私は姫様をアトリエの中へと招き入れる。


「おはようございます。アリアお姉さま」

「お、おはようございます姫様」


 姫様にお姉さまと呼ばれるのは慣れないな。

 

「その、どうしてこちらに?」

「実はお姉さまのお仕事を見学したくて。こっそり覗いていました」

「そうだったんですね」

「はい。ごめんなさいお姉さま。お仕事の邪魔をするつもりはなかったのですが……」


 ショボンとするイリーナ姫。

 私は慌てて慰める。


「じゃ、邪魔なんて思ってませんよ? 見学をご希望でしたらぜひお近くで」

「本当ですか?」

「はい。もちろんですよ」

「ありがとうございます! アリアお姉さま」


 今度は無邪気な笑顔を私に向ける。

 眩しい。

 眩しすぎて目が痛くなりそうなほど輝いている。

 純真無垢という言葉は、姫様のためにあるんじゃないとか一瞬思ってしまった。


「そ、それじゃお仕事を始めていいですか?」

「はい! お願いします!」


 そう言って彼女は錬成台に近づいた。

 とても近い。

 顔に手が届くほどの距離に。


「あまり近づくと眩しいかもしれませんよ?」

「平気です! お邪魔じゃなければ出来るだけ近くで見たいです」

「わかりました」


 私としては凄く緊張する。

 ただでさえ一人でずっとやってきたから、誰かに見られるという環境に慣れていない。

 しかも相手はお姫様だ。

 ユレン君の妹さんじゃなければ、こうして話すことすら出来なかった相手。

 考えるほど緊張するので、大きく深呼吸をした。

 すると彼女も真似るように、私と同じ動作で深呼吸をした。

 目を合わせるとニコリと微笑んでくれる。

 

 か、可愛い……

 

 落ち着きかけた緊張が再燃した。

 このままではいけないと気持ちを切り替える。

 私は小麦と水、ユッカの葉を持ち出す。


「アリアお姉さま、その葉っぱは何ですか?」

「ユッカの葉です。寒さに強い植物なので合成してみようかと」

「なるほど~ ユッカ、ユッカですね」


 姫様は何度も頷いている。

 頭の中で覚えようと頑張っているみたいだ。

 しぐさも可愛らしい。

 見ていて和むのもとても良い。


 ってダメダメ!

 また他事を考えてた。

 今はお仕事に集中しないと。


「ふぅー……」


 大きく息を吐き出す。

 錬成台に手をかざし、素材を最後に確認して、目を閉じ錬成を始める。

 完成をイメージしながら錬成を発動。

 錬成台を柔らかな光が包み、素材が光に包まれる。


「わぁ~ やっぱりアリアお姉さまの錬成は綺麗です」

「そうですか? 他の方も同じだと思いますけど」

「そんなことありません。アリアお姉さまの光がいっちばん綺麗です!」

「あ、ありがとうございます」


 それはたぶん、この錬成陣の影響だろう。

 一部を解読した限りだと、錬成時に発生する光を鮮やかにする効果も付与されていた。

 錬成そのものにはまったく影響のない仕組みだ。

 もしかすると先人の使用者は、格好良さを気にする人だったのかな?

 とか思いつつ、錬成するイメージは崩さない。

 光に包まれた素材が消費され、一つに集合する。


「出来ましたよ!」

「はい」


 一先ずは完成。

 ちょっと緑色が強いけど、見た目は小麦の形をしている。

 続けてこれが害のないものか調べる必要がある。

 その工程に移ろうとしたところで、姫様が口を開く。


「あの、お姉さま!」 

「何ですか?」

「もしよければ……私にもお手伝いさせてほしいです!」

「……え?」


 思わぬ要望に、私は困惑した表情を隠せない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿してます! 下のURLをクリックしたら見られます

https://ncode.syosetu.com/n7004ie/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

5/10発売予定です!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000



5/19発売予定です!
https://m.media-amazon.com/images/I/71BgcZzmU6L.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ