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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一章

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12.隣国の難しい事情

「それじゃさっそくお仕事を始めようか!」

「いや待って室長。先に設備と仕事内容の説明でしょ」

「あーそうだった~ アリアちゃんが来てくれたことが嬉しくて、つい気持ちが逸っちゃったよ~」

「室長さんはいつもじゃないですか」


 呆れ顔のヒスイさんと、やれやれという顔のユレン君。

 どうやら室長のラウラさんはマイペースな人みたいだ。

 王宮だとそういう人がいなかったから、私にはとても新鮮に感じる。

 二人はちょっと、疲れてるのかな?


「うーっと、先に仕事の説明をすーるーけーど! まぁ基本的には前の仕事場と同じだと思うわ。上から依頼された物を作ったり、役に立ちそうな物を開発したり。大体そんな感じ」

「ざっくりしすぎじゃないか? アリア、今のでわかった?」

「うん、向こうと一緒で良いなら」


 錬成師の役割は、新しい物を生み出すことにある。

 それはどこだろうと変わらないと思うし、逆にそれ以外を求められても難しい。

 あとの違うがあるとすれば、働く場所の環境と、何が一番必要なのかくらいかな。


「あの、室長さん」

「ラウラで良いよ。何だい?」

「ここでは何をメインに研究しているんですか?」

「うちはポーション開発と、新植物の発明がメインだよ」 


 返答を聞いた私はちょっぴり驚いた。

 ポーション開発はどこもやっているはずだけど、新植物の開発は中々聞かない。

 少なくとも前の王宮では誰も研究していなかったはず。


「どうして植物なんですか? 植物の研究は生き物の次に難しくて、あまり実用性も低いはずですけど」

「そうなんだけどね~」


 室長さんはそう言いながら、ユレン君にチラッと視線を向けた。

 代わりに話してくれという合図だったのか、ユレン君が小さくため息をこぼして口を開く。


「アリアはこの国の事情をどれくらい知ってる?」

「えっと、ごめんなさい。そんなに知らなくて」

「別にいいよ。これから知って行ってくれれば良い」

「うん」


 働いている時は研究で忙しかったし、必要ない情報は遮断していたから。

 隣国で、自然豊かな国だというくらいしか知らない。


「道中はあれだったから見る機会もなかったけど、うちは自然に囲まれてる。普通の国より、街や人工物の占める割合が少ないんだ。それは知ってる?」

「うん」

「じゃあ四季があることは?」

「それも聞いたことがあるよ」


 春夏秋冬。

 広大な自然に囲まれ、山々や海にも面している影響か。

 セイレム王国には四季が存在するらしい。

 

「四季そのものは珍しくない。他の国や土地だってある所にはあるし、問題は季節による環境の変化が激しいってことなんだ」


 ユレン君は語る。

 セイレム王国の四季は、私たちがよく知る四季とは少し異なる。

 具体的に言うなら、年によって寒暖差が大きくなったり、弱くなったりする。

 ある年は灼熱と表現するに相応しい夏も、翌年には涼しい夏になることがあった。

 加えて、嵐や地震、寒波や乾燥、そういった自然災害や影響が多発する。


「今は比較的落ち着いてる時期なんだが……もうすぐ冬だ。冬は毎年厳しくて、特に何が起こるか読めない季節でもある」

「そんな感じだからね~ 作物は育ちにくいし、植物ぜーんぶすぐ枯れたり腐ったりするんだ」

「植物が育たないと、動物たちも生きていけない。だから厳しい環境にも耐えうる植物を作ろうと頑張ってもらっているんだよ」


 ユレン君と室長さんが交互に説明してくれて、納得した。

 そういう事情があったのなら、難しくても植物開発には取り組まなくてはならない。

 私たち、というより国に住む人々の暮らしを守る為にも。


「動物のほうも手は付けてるんだけど、私たちの技術じゃ無理だからね。植物なら、ギリギリなんとかなりそうだってことで取り組んでるの。まぁ成果はイマイチだけど」

「俺も個人的に調べたりしたんだが、単なる合成物とは違って植物も生きてる。生きてる物を扱うのは、何だって難しい。でも……」


 ユレン君が私を見る。

 続けて室長さんと、ヒスイさんも。

 その瞳には輝いていて、期待に満ちているように感じた。


「アリアがいてくれたら、何とかなる気がするんだよ」

「うんうん! 私も心強いよ~ 新人の面倒を見るのも大変でさ~ 研究のほうに手が回らなくなってたし」

「以前のポーションも素晴らしかったし、ユレンが期待するのもわかる」

「ぅ、は、はい」


 何だかむず痒い。

 期待されるって、こんなにもソワソワするものだったのか。


「頑張ります。皆さんの期待に応えられるように」

「うん。あーでも、無理だけはしないでくれ? プレッシャーに感じるなら休んで良いし、誰かに虐められたらすぐ俺に言えよ」

「ユレンは過保護だな~」

「うるさいヒスイ。お前も、彼女にちょっかいかける奴がいないか見張っとけ。いないとは思うけど」


 ヒスイさんは「へいへい」と気のない返事をする。

 そんな態度をとるから、ユレン君は真面目にやれと怒り出す。


「わかってるって~」

「本当だろうな? 適当にやったら給料減らすからな!」

「うわ酷いな、横暴だぞ」

「ふふっ」


 賑やかな空間に、私もいる。

 少し前までなら、おおよそ考えられなかったことだった。


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