第六話:危険
ちょっと、エロいかもです(*><*)←
「―――――じゃあ、終わり。」
「きりーつ…礼…」
「あ、右京は終わったら俺のところに来いよ!」
はぁ…授業とか、全然頭に入らない。って、なんでみんな立ってるんだろう?そして私もなんで立ってるんだろう。てか、あれ?皆沢先生?ああ、今、数学の授業かぁ…あーあ。先生がこっち見てる気がするー。なんて。自惚れも大概にしないとな…あーあ、凹むなぁ。
「おい。聞いてんのか、右京!」
あ、やっぱ私のこと見てたんだ!嬉しすぎる…って、みんな…鞄持って…んん?あれっ?みんな教室から出て行く……先生と私を二人きりにするつもりなのかな…みんな、私の気持ちに気づいてたんだ…わー、こんな仲間思いのクラスメイトをもつ私って幸せ者…!でも、佐々木邪魔だし。空気読んでよね!
「たっ!」
急に、頭に軽い衝撃が走った。目の前には先生。そして、今の衝撃の原因は、先生が私の頭を軽く叩いたから。
「聞いてんの?無視すんなよ。なんか腹立つ!俺のことシカトとか…もういい、お前、教材室来いよ。大したことじゃないけど、話もあるしな。ご希望とあらば、お説教もしてやるけど。」
「行くんで、お説教は勘弁してください…」
もうHRが終わったのだと気づいた。みんなは、帰っていっただけなんだね。
「おう。ちょい遅れるかもしれねぇけど、待ってろよっ!」
先生はそう言い残すと、急いで教室を出て行った。そんなに、急ぎの用事でもあったのだろうか。
先生が教室から出て行くと、私は教材室に向かった。廊下では、まだ生徒が喋っていた。帰る気配はない。そのくせ、教室から出て行くのは早い。みんな、そんなに教室が嫌いなのだろうか。
そんなことを考えているうちに、教材室の前に着いた。当然、先生はまだだろう。だけど、緊張してしまう。そして、それと同時に、話の内容は何かという素朴な疑問が生まれる。
教室の扉を開けた。
「失礼しまーす…」
誰もいないと思っているのに、つい出てしまった一言。私は、ゆっくりと教室の扉を閉めた。それから、奥に進んだ。ふと、人影が見えた。先生かと思って、小走りになりながらその人影へと向かった。
しかし、そこにいたのは…床に座り込んで壁にもたれて寝ている、知らない男の子だった。かわいい顔をしていたため、後輩だな、と思った。でも、先輩だったら嫌だな。だから、もし起きて話し掛けられたら、敬語で対応しよう。うん。
「ん……んぅ〜〜〜〜っ!」
いきなり、男の子が唸った。振り返ると、身体を力いっぱい伸ばしていた。起きたんだ。
彼は、目をぱっちりと開けると、私をみつめた。長い間みつめられて、顔がどんどん熱くなっていくのが分かった。
「先輩?俺、一年なんですが。」
あ、やっぱり後輩だったんだ。
「私、二年。やっぱり後輩だったんだね!」
柔らかく笑ってやると、男の子も私に笑みを見せてくれた。少しときめいていると、視界がいきなり天井に向いた。……ん?
「今日の相手って、先輩だったんですね!超かわいい…じゃ、早速しよ♪どうしてほしい?」
私は男の子に何故か押し倒されていて、「かわいい」だの「する」だの分けのわからないことを言われている。てか、「相手」ってなんですか?聞きたいことは山ほどあるけど、今は冷静に質問できる状態ではなかった。
「ちょ、ちょっと待って!!」
「…なんですか?俺、もうヤバイんですけど。」
「あの…なんか、勘違いしてないかな?」
「勘違い?してませんよ?」
「私、キミに会いに来たんじゃないんだけど…」
ひとまず、誤解を解かないと。そう思って、男の子からの視線を受けないように顔を逸らしながら言った。
「うん。知ってるよ、そんなこと。起きたら、かわいい人がいる。そんなの、襲うに決まってるじゃないですか。」
こいつ…さっきから思ってたけど、先輩って分かってるのにタメ語ってどういうことだよ。しかも、初対面で襲うって…こんなかわいい顔して…
「じゃ、もういいですよね。」
男の子は、にこっと笑って私の首筋に顔を埋めた。
「ちょっ…!!あ…ん」
「クスッ。かわいいなー…」
男の子はそう言うと、右手を私の左胸に移動させた。
「やめ…これ以上は、まじでやめてって…」
「でも、応えたのは先輩じゃん。」
「ちょ…っ、いーやーっ!!やーめーてーっ!」
大声で言うと、男の子は顔をしかめた。そして、私の上に覆い被さっていた身体を退かした。
「ちっ…萎えるし。」
男の子からは、険悪なオーラ。私は、一歩後ずさった。
「嫌がるなら嫌がるで燃えるけどさー…もっと、エロい抵抗とか出来ないわけ」
そして溜息を漏らされた。最悪なんですけど。
「…あ。誰か来たっぽい。」
彼は言った。確かに廊下からは、足音が聞こえる。それも、一人分の。
「近づいてくるね…こっち来るのかな?」
クスクス笑う彼。そして、彼は私の身体にもう一度覆い被さった。
「さっき俺を萎えさせたお仕置きに…ぐらい、いいですよね?」
意地悪な笑みでそう微笑んだ彼は、自らのネクタイをしゅるしゅる解いた。そして、それで腕を拘束した。そして、私の制服のボタンを第三まで開けた。
「や…やめて…」
どうしよう。ここに入ってくるのが、先生だったら。そうだったら…こんな姿、見られたくないよ…
悲しくなって、涙を溢した。
「ふ…っぅ…っ」
「そうそう…そんな感じだよ…先輩。超エロい。」
ああ、嫌だな。何されるのかな…私、まだ処女なんだけどな…いくらかわいい顔した後輩にだって、好きな人以外にはこういうことされたくなかったな…
「じゃあ、そのままでいてね?誰かが来るまで…俺は、隣の教室に行きますから。」
「ひど…っ!このネクタイ、解いてよ!!」
「お仕置きだ、って言ったでしょ?心配しなくても、先生か誰か来るでしょ。じゃーね」
一方的にそう言われて、彼は「第二教材室」に通じる扉からこの教室を出て行った。
「ひ…っく…」
ただ、一人で泣くことしか出来ない自分に、腹が立つ。
足音が近づく、そして、その足音がこの教室の前で止まった。
「右京―――…」
ああ、皆沢先生だ…
最悪。
「奥にいるのか?」
皆沢先生が、また近づいてくる。
「右京…っ!?お前…どうしたの?それ…」
見られた。私は、先生の方を見れなかった。顔を床に向けていた。
「右京!こっち向けよ!」
先生に顎を掴まれて、無理矢理先生の方に顔を向けさせられた。先生は私を見て、顔が赤くなっていった。
「ごめ…っ」
そして、私から離れた。でも、私はそれが寂しく思えてきて…。
「離れないで下さい…っ!」
ああ、私はなんてことを言ったんだろう。先生を困らしてしまうことばかり言って。
「それと…このネクタイを、解いてもらってもいいですか…?」
先生は、私に近寄ってきた。そして、震える手でネクタイに手をかける。たまに、先生の手が微かに腕に触れる。その度に、私の緊張は高まる。そして、ネクタイが解かれた。
「ありがとうございます!」
私は、ふらつく身体を起こせず、へたり込んだまま頭を下げた。
「ばか…っそれ…ボタン閉めろ…っ!」
先生が真っ赤になりながら言った。見てみると、第三まで開けられたブラウスの隙間から、下着が見えていた。
「すみません…」
私も真っ赤になった。
「右京…話あるっつったけど…やっぱり、また今度にして!」
先生は一方的に出て行って、私を取り残した。寂しくなったけど、先生が来てくれたおかげで私の涙が枯れていたことが分かり、嬉しくなった。