表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刹那の時。  作者: RYUN
5/12

第五話:先生!?



私は今、夢の中にいた。


その夢では、皆沢先生が登場した。

私が丁度保健室で目を覚ました時、皆沢先生が来てたっていう設定。一瞬現実かと思った。けど、その皆沢先生は言ったんだ。私のことを…「姫香」って、呼び捨てにしたの。


それで夢の中だって確信した。そして大胆に、「好き」って何度も言ってみる。先生は、さっきまで微笑んでいたのに………どんどん顔が曇っていく。



―――――なんで?夢の中でくらい、いい夢見させてよ!!




「っ!!!」


目を覚ました。一瞬、緑川先生が目の前にいるかと思ってびくびくしてたけど、いなかった。

カーテンの向こうで、緑川先生が机に座っている。


「あの…せんせ………?」


おずおずとカーテンを開ける。先生に話し掛けようと思ったのに、先生は机の上にうつ伏せになって寝ていたのだ。どうしたらいいのか分からなかった。とりあえず、保健室のソファにあった毛布を被せようと、持ってきた。そして、先生にかけようとしたとき…


「!!!」


緑川先生は、私の腕を掴んだ。起きたのか、と思ったが、先生は相変わらずすぅすぅと寝息を立てている。私はホッとため息をもらした。


「………か」

「え?」


寝ている相手に、思わず聞き返した。


「ひめか………」

「……ひめ、か?ん?」


緑川先生は、「ひめか」と言った。もし、このひめかが「姫香」のことだとしたら……



この純粋な少女は、何を想像するだろう?



「わ…たし?」


保健室で一人、顔を紅潮させてその場にへたり込む。相変わらず、先生は私の腕を掴んだままだ。

先生が寝ていて、本当に良かったと思う。起きていたら、腕の脈動からドキドキが伝わってしまう。顔が赤いとばれてしまう………ひめかの正体が、私ではないかもしれないのに。


「んん……」


先生がそう声を漏らすと、私の腕から先生の手が離れた。そしてその離れた先生の手は、重力により下にずり落ちた。

私は、このまま起きそうにない先生の側に、メモを残した。


―――起きたので、教室に戻ります。 右京―――


保健室から出て、廊下を歩いていた。廊下は騒がしい。時間を見ると、もう授業が終わっていた。

どうやら、今休み時間が始まったばかりのようだ。


「……あ、右京」


目の前にいたのは、佐々木。なんだ佐々木か、と思いつつ佐々木を見上げる。


「なんだって、酷いヤツだな。折角迎えにきてやったのに。」

「聞こえてたの?てか、お迎え?別にそこまで私重症じゃないし…」

「いーんだよ!俺が来たかったんだから。」


気のせいか、佐々木が少しイラついている。んー、なんで?


「てか佐々木がそこまでする必要なくない?」

「………お前ってさ…」


暫しの沈黙の後、佐々木がため息をついて言った。


「ニブ。」


佐々木はその一言だけ言うと、くるっと後ろを向いてスタスタ歩き出した。

結局何が言いたかったのか分からず、ただ首を傾げていた。


そのことを考えるのはやめて、とりあえず教室に向かった。



「………気になんねぇのかよ…バカ右京…」


佐々木は廊下で立ち止まり、そう言っていた。


しかし私には知る由もなく。佐々木の「ニブイ」という言葉の意味さえも知ることはなく。

ただ、考えることは皆沢先生と緑川先生のことでいっぱいだった。

「えっ…俺のことは頭にないのかよ…」by佐々木

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ