表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刹那の時。  作者: RYUN
10/12

第十話:甘さ

「やめてっ……!」


ああ、佐々木が怖い。何で、こんなことするんだろう。

男の子が誰とでもこういうこと出来るって、本当だったんだ…。


「んっ…右京…」


やめて、やめて、やめて…。

自然と私の身体は佐々木を拒んでいた。そして、私のブラウスのボタンを乱暴に外していく。

その行為に、鳥肌が立つ。あの時緑川慧にされたことがフラッシュバックする。


「いやぁっ………!」


思いっきり叫ぶと、佐々木は私の体から離れた。佐々木の表情はというと蒼白。この様子なら、何もしてこなさそうだった。私は安堵の溜息をついた。


「ごめっ…右京…!」


慌てふためいている佐々木を見ると、なんだか許せる気がして。平静を保ちながら、静かに「もういいよ」と言った。口調を柔らかくしても、佐々木はまだ悲しそうな顔をしていた。


「佐々木さぁ…溜まってたの?」

「……は?」


思わず口にする。だって、誰とでもよかったんでしょ?「好きなんだ」なんて簡単に言えるもん。それに、佐々木なら私の他にも相手いっぱいいるじゃん。全部全部、言ってやりたかった。口に出そうとすれば喉らへんで言葉が止まっちゃって、イライラする。

でも、なんで私がこんなにイライラしているのか分からなかった。だって、私は先生が好きだもん。皆沢先生が。


―――だったら、佐々木が誰とやってもいいじゃん。たまたま傍に居たのが私で、こうなっただけじゃん。佐々木は謝ってるし、佐々木とは「友達」だから許したんでしょ?


…アレ?友達?ダレト、ダレガ?


もういい、考えるのがめんどうだ。もういい、どうでもいい。

私は、先生のことだけ考えてればいいの。


「…なんでもないっ。けど佐々木、次からは好きなことこういうことしなよ?」


作り笑顔。引きつってたかな。

佐々木、悲しそうな顔してるし。ごめん。


見てるのも辛くなってきて、私は屋上から出ようとした。


「っおい!」


呼び止める佐々木の声も、聞こえないフリ。

だって、振り向いたら泣いちゃいそう。だから、立ち止まらない。


そして、ドアに手をかけた。



―――ガシャン。


「えっ?」


…ドアは、開かなかった…


「…さっき、言ったじゃん。下校時刻過ぎてるから…って。呼び止めてもシカトだし。」


ああ…さっきの呼び止めは、そういう…ことだったのか。

でも、それだと…朝まで、佐々木と…


「さっきはごめんな。もう、しないから。」


突然の佐々木の言葉。私が不安だったこと、分かってたのかもしれない。けど、私は何言葉を発することが出来なかった。だって、自分の気持ちが分からないから。先生のことが好きなはずなのに、心が佐々木に揺れている気がする。なんて、私って単純?


これが新しい恋心、なんて思ってる。

その想いが単なる逃げ道であることを、私はちゃんと自覚していた。


けど、私は楽な方へといってしまった。

先生だけを想うのが辛くって、自分を好いてくれる佐々木に逃げようとしていた。


たとえそれが周りのみんなを傷つける結果になろうとも。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ