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彼岸よ、ララバイ!  作者: 湯ノ村
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とある六回忌⑤

「卒業生なら知っているだろうけど、学び舎の下地に処刑場跡地を選ぶとはなかなかだよな」


 古今東西、あらゆる地で古典的な怪談話の一つの題材として語られがちな、「跡地」という惹句に俺は魅力を感じなかった。ただ、男の機嫌に阿るつもりで仔細顔を浮かべる。


「在学中に意識した事はなかったですかね」


「そうか。でも、身に覚えはあるんじゃないかな? これから話す事は」


 一介の警備員が見せる表情としてはあまりに悪戯が過ぎ、鵜呑みにするのも憚れる相好の崩れ具合だ。それでも、田頭は爛漫と声を弾ませる。


「ぜひ!」


「生徒達に入学式と卒業式があるように、先生方も同様に着任と転任がある。他で類を見ない入れ替わりの激しい学校だったよな」


 振り返れば、俺達の間で話題になるような教師というのが、存在しなかった。数多の生徒を指導する立場の教師は、学校という共同体に於いて、校章に比肩する象徴だ。クラスを受け持つ担当教師となれば尚更である。いい評判も悪い評判も三日と経たずに校内を巡る。だが、一年次の担当教師は、二年に上がる同時に居なくなり、高校最期の春にも二年次の担当教師が釣瓶落としに学校を離れていった事で、大した印象もないまま忘失した。故に号外を巻くほどの悪漢も、担ぎ上げるべき教師もいなかった。


「そうならざる得ない状況だった」


 社会に出たからこそ、教師という職業がどれだけ過酷で劣悪なのかを想像できる。学生時代には決して抱かぬ同情心が芽生え、薄ぼんやりと思い出す教師の姿にしめやかに礼をする。


「夜遅くまで学校に居残る教師は本当に恐ろしい目に遭っていたらしい」


 ここまで踏み込んだ話になると、その証言は用務員ほどの接近した人物の口を借りているようなものだ。


「どんな事が?」


「簡単に言えば、ポルターガイスト。見回るたびに、閉めたはずの窓が空いていたり、机の位置が変わっていたり」


 処刑場跡地を題目にした割に、随分と生ぬるい。釣り合わせるなら、蛮声ぐらい木霊してもらわないと戦く素振りも見せられない。


「子どもが暴れ回っているみたいだ」


「おっ、気付いちゃった?」


 タネを明かす手品師の軽口めいた言葉遣いに眉根が寄った。


「この土地は確かに曰く付きではあるんだけど、その奇妙な現象と因果関係はないと思うんだ」

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