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私の秘密を知る人々。

「…というわけで、これから皆にはイリスの補佐を頼む。」

ふう、と話し終えたカインハルザは冷めた紅茶を一気にあおった。


しん…と静まり返る部屋に、とても居たたまれなくなる。


─私だって、好き好んで来たわけでも、邪魔したくてアイリスの身体に入ったわけでもない。


「─私は信じますよ。陛下のお話。」

とアーノルドさんが一番に口を開いた。

「私は実際()()()いますからね。別人というのを信じざるを得ない。」

「アーノルドがそう言うなら私も信じよう。お互い国防に関わっているからお前がそう言うなら信じるさ。」

と鎧姿の男性が頷いている。

「俺も信じてますよ。他でもない、カイン本人が信じてるんで。」

「ディー…」

……美男子の熱い友情ゴチです。

「…私は、少し時間を下さい。」

とディーンの横の男性。…もしかして、ディーンのお父様なのかな?


「初めから、全員の信用が得られるとは思っていません。」

─当たり前の話しだ。突然『中身だけ別人になった』なんて言われても信じない人は信じないだろう。

「私は逃げも隠れもしませんので、どうぞ存分に検分なさってください。…ですが、私もこちらは知らないことばかりなので皆様のお力をお貸しくだされば幸いです。」

とみんなの顔を見渡し、ぺこりと頭を下げる。

精神は30代なのでこれくらい平気平気。

「…わかりました。─次からは軽々しく頭など下げないようにして下さい。貴女はこの国で2番目の権威の持ち主なのですから。」

とディーンのお父様?から苦言を呈されたが、少しは認めてくれたようだ。

「わかったわ。」


そうして集められたメンバーの自己紹介を受けることに。

一度には大変だろうから少しずつにしたらどうだ、と言われたが試したいこともあったので今ここでいい、と始めてもらった。


ディーンは先程紹介を受けたから、と隣に視線をやるとやはり彼のお父様だった。

ダグラス・レヴィル宰相閣下。レヴィル公爵家の現当主でもある。

カインハルザに意見していたのも彼だ。

次に鎧姿の方はオーランド・リトビネンコ騎士団団長。リトビネンコ侯爵家当主。

体躯の良い偉丈夫で、左目の上部分の額から頭にかけて大きな傷跡があるのが特徴だ。

それから先程、芋虫燃やしたりマナを目視したりしているのがアーノルド・ハーヴィー魔法師団団長。ハーヴィー侯爵家当主。

色付きの片眼鏡をした美丈夫だが左手の薬指に綺麗な石の付いた指輪がはまっている。…奥様がいらっしゃるのかな?

(だけどダグラスもオーランドも指輪をしていない。…今度聞いてみよう。)


と3人紹介が終わったところでディーン含む4人は退出することになった。

どうやらご家族と出掛ける約束をしているらしい。


「そうよね、休息日だったわね。」

「気になさらないで下さい。昼食から、と約束してましたから。」

とアーノルドが言うので時計を見ると11時ちょうどくらいだった。それは他の人もなようでオーランドは

「いやあ、近頃娘がなかなか一緒に出掛けてくれなくなってて…ようやく今日約束出来たので、間に合ってよかった。」

と頭を掻いている。

「あら、それは大事にしないといけないわ。さあ遅れないように、ご家族の方によろしくね。」

と笑顔を向ければ少し驚いていたもののお心遣いありがとう御座います、とみんな笑顔になった。

では失礼いたします、と4人は部屋を下がる。


「じゃ、残りの紹介だな。」

「はい。」


「まずはアデレード先生。」

「アデレード・フォールズです。今日は本当に調子が良さそうですね?」

「はい、お陰様で。」

「これからは一緒に体力作りなどしていきましょう。」

「よろしくお願いします。」

アデレード・フォールズ医師。23年程前からこちらに勤めている女医で、旦那様はフォールズ伯爵。

前皇后が出産のときカインハルザを取り上げたのが彼女だそうだ。

「それ以来ずっと陛下を見てきているのでもう自分の子供のようです。」

とにこにことしているが…カインハルザはなんだか引き攣った顔をしている。

「…カイ?」

「……先生は苦手なんだ……」

「カタリナ…あ、前皇后ね。彼女から頼まれたからね。本当の母親のようにカインと接していたから。」

悪戯がバレたときにお尻ペンペンしたこともあったねえ、とニヤリとする彼女。

「ああああ!止めてくれ!イリスにそんなこと教えるな!」

「可愛い…」「イリス?!」

…そうか、アデレード先生は第二のお母様なんだ。

「つ、次だ次っ」

とカインハルザが顔を赤くしながら捲し立てる。

「…えーっと、俺の専属執事のトレヴァーだ。」

「トレヴァー・クランシーと申します。爺では御座いますがどうぞよろしくお願い致します。」

と白髪の柔和な笑顔のおじい様。

「それで、イリス専属執事の件はどうなった?」

「はい。…かなり、悩んだのですが老いぼれの願いを聞いてくださいますか。」

「構わないが。」

ありがとう御座います、とトレヴァーは若い男性を手招きしている。

「こちら、孫のダンでございます。」

「…ダン・クランシー、と申します…」

と些か緊張した面持ちの彼。

「…実は、陛下から妃殿下専属を探してくれと言われ人選をしたのですが…適任がなかなか見つからず…本来なら息子が適任だったのですが……」

とトレヴァーは困り顔だ。

「…俺が皇帝になる少し前に病気で他界したのだ。」

「…っ、そう…でしたか…なんと申し上げたらよいか……」

「ああ、もう2年も前のことですから、アイリス様はお気になさらないでください。」

「いえ。…見ず知らずの人間から言われるのは癪に障るかもしれませんが、ご冥福をお祈りします。」

と告げればトレヴァーとダンは少し驚き

「…アイリス様はお優しいのですね。」

とどこかホッとした様子だった。

「ええと、それで…ダンは今年養成学校を卒業しまして、就職先を探しているところでして。」

「ふむ…」

カインハルザからじろりと見られ、少し萎縮するダン。

「養成学校は首席卒業しております。爺目線ではありますが、息子にも引けを取らぬと思っております。」

「…イリスはどう思う?」

「私は構わないわ。…ダンが嫌じゃなければ、だけど……」

「何故、彼の意思が必要になる?」

「だって…私のようなぽっと出の人間よりカイのような立派な人に仕えたいと思っているのに『命令されたから』と私に仕えるなら、それはお互いにとても嫌なことよ。優秀さを活かせる雇用先が他にあるならそちらを優先すべきだわ。」

「ぼ、僕は…っ」

皆の視線がダンに集まる。

「僕、は…妃殿下に…アイリス様にお仕えしたいです…っ」

と背筋を伸ばす彼。

「…いかがでしょう?」

トレヴァーが眉尻を下げている。私はダンに近付き

「本当に無理をしていない?」

「は、はい…今日のお話しを聞いて、僕が少しでもお助けが出来たら、嬉しいなと……」

「そう。…ありがとう。じゃあお願いするわ。」

「へ…?」

…なぜポカンとするダン君よ。

「ほほほ本当にいいんですか?!」

「なんでそんなに驚くの。私もまだまだ未熟だから一緒に頑張りましょうね」

「は…はいっ…!」

就職が決まった興奮からか、少し頬を染めるダン君可愛いなーなんて思っていたら

「…イリス。」

と少し低い声で呼ばれたのも束の間、カインハルザの膝の上に座らされてしまった。

「?!…ちょっとカイ、恥ずかしいんだけど?!」

「…次は護衛騎士を紹介しよう。」

と無視して話を進めるカインハルザ。

(…なんか拗ねてる。これは…ダン君に嫉妬している?…案外子供っぽいなあ…)

「……なんだその顔は。」「別に?」

…周りからも生暖かい視線が送られてますよ皇帝陛下。

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