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さっそく不穏な空気です。*2

腰の抜けたソフィーをベッドに座らせ

「ほら、お水よ。飲める?ゆっくりね?」

「は、はい……も…申し訳ありません……」

ソフィーはまだ少し震えている手でコップを受け取る。

「もう大丈夫よ」

とコップごと彼女の手をギュッと握ると表情が和らぎ、震えも止まったようだ。

「ローズ、彼女をお願いね」

「かしこまりました。」

とローズに任せ、私は先程のベスト姿の男性に近寄る。


暖炉の前に陣取っている彼に近寄ると、カインハルザも寄ってきた。

「イリスは大丈夫か?」

「うん。ありがとう。」

とギュッと抱きしめてくれるので私も抱きしめ返す。

「─それで、アーノルド団長()()は?」

床に置かれた壺を顎で指し示す。

「こちらは──呪物です。…異国の古の呪物のなり損ないですね。」

とアーノルドさんは床にしゃがみ、壺を指先で弄んでいる。

「開けるのか?」

「開けないと浄化出来ませんからね。」

それ以上近寄らないで下さいね、と注意され私たちは頷く。

「じゃ、いきますよ──」

とぐいっと蓋を開ければ、またひどい臭いが部屋に充満する。

「臭いな…」「ひどい臭いだ」と声がするがふわっと風が吹いたかと思うと臭いが一気になくなる。

風で吹き飛ばしたのかな?


──次の瞬間、ゾワワワと背筋を悪寒が走る。


(なに?この…ものすごく()()()()……)

…気配の先は今開けたばかりの──壺。


(目が……離せない……)


「イリス?大丈夫か?どうした?!」とカインハルザの心配する声がするが返事をすることができない。

「……もしかして、()()()()()()

とアーノルドさんから聞かれゆっくりと頷く。


──壺からは、黒い……あれは、芋虫…?


「…っ!」

『ソレ』は私たちに気付き、狙いを定めたかのようにこちらに向かって──


……こなかった。


というかのたくたと足が、ものすごく遅い?

いや、芋虫特有のあの短い脚を必死に動かしているがほとんど動けていない。

不思議に思ってよく見ると…

……アーノルドさんが芋虫のお尻を踏んづけていた。


「…それは、ちょっと可哀想。」

ようやく口から出たのはそんなセリフだった。

「…ブフッ」

「いや、だってせっかく生まれたのに踏んづけられて動けないとか…」

「くくく…妃殿下面白い……ま、『なり損ない』ですからね。こんなもんです。」

と彼は踏んづけている芋虫をおもむろに掴み、暖炉に放り投げた。

「あら…」

「“燃えろ”」

との一言と共に激しい炎にその身を焼かれる芋虫。

あっという間に消し炭になった。

「安らかにお眠り。」「…ブフッ」

…アーノルドさんは笑い過ぎじゃないかな。


「あー面白いことなってますね。」

見ます?と壺を指差し聞いてくるのでこくこくと頷き見ようとしたのだが

「──ま、待て。本当にもう大丈夫なのか?!」

とカインハルザに腕を掴まれた。

「大丈夫ですから、陛下もどうぞ?」

私はまだ訝しんでいる彼の手を握って一緒に壺へと近付く。


壺を覗き込み、底の方に見えたのはムカデ。

2匹のムカデが互いのお尻に齧りつき、それはまるでウロボロスの輪のようだ。

「…それはムカデか?」

「そうですね。…最終的に残ったのがこいつらなんでしょう。」

「ということはやっぱりそれは【蠱毒の壺】だったんですね。」

アーノルドさんはピクッと私の言葉に反応したが

「──とりあえず、燃やします。」

と壺ごと暖炉に置き、先程と同じように燃やしてしまった。

「…あ、燃やしてよかったんですか?ほら…証拠?というか……」

「大丈夫です。見る限りなんの痕跡もなかったんで、かなり慎重に作ったみたいですね。」

アーノルドさんはそう、言いながらよいしょと立ち上がり

「…陛下?大丈夫ですか?」

とカインハルザに声をかけた。

「───ハッ。…終わったのか?」

「はい。この件はまたいずれ。…それで?私たちは陛下に呼び集められたのですが?」

と部屋を見渡す彼につられ私も見やると、色んな人が来ていることに気付いた。

(…こ、こんなにいたとは思わなかった……)


結局、着替えられないままカインハルザが呼び集めた方たちと対峙することに。

「イリス寒くないか?」

「うん。大丈夫よ。」

と答えたが一応着ておけ、と彼が着ていた上着を着せられた。

「ありがとう。」「気にするな。」

…そのやり取りを見て、一部の人がかなり驚いている。


「陛下はその女に術でも掛けられたのですか?!」

と一番驚いているのはディーンのそばに立つ40代…くらいの男性だ。

「俺に術の類いは効かないの、知っているだろう?」

「で…ですが……」

「まあ、とにかく話を聞け。─オリバーとマリーベルはいるか?」

と天井に語りかけると

『はっ、こちらに』

『周囲は他に誰もおりません。』

「わかったありがとう。」

そうしてカインハルザは「これはとりあえず、極秘事項だ。」と前置きをしてから話し始める。


「まずここにいる彼女は『アイリスであってアイリスではない』人物だ。」

─みんなが息を呑むのがわかる。

「…や、やはり陛下は「最後まで話を聞け。」

とカインハルザから睨まれぐっと押し黙る先程の男性。

「─身体はアイリスそのものだが、精神、または魂と呼ばれるものは別人だ。」

…しん、と沈黙が落ちるが「なるほど。合点がいきました。」と口を開いたのはアーノルドさんだ。

「どういうことだ?アーノルド」

「マナがね、違う。

─結婚式で目にした妃殿下のマナは“黄金色”だった。これが【神の娘】かと圧倒された。だが、今そこに座る彼女は……」

と一旦言葉を切るアーノルドさん。…私を、見ている?

「…私はあらゆる人種のマナを見てきたと思っている。人種によって偏りがあるのもわかっている。」

「…勿体ぶるな。」

「すまない。だが私も、信じがたいんだ。…未だかつて見たことも聞いたこともない……


──七色のマナなんて。」


その場にいるみんなの視線がこちらに向き、少し居心地が悪くなる。

「…なるほど、それなら“別人”と言われても、信じられるかもしれないな。」

とアーノルドさんの隣の鎧姿の男性がなにやら納得している。

「…ちなみに質・量ともに以前の妃殿下を超えている。」

「まあ、彼女がこちらに来た理由を聞けばそのあたりも納得できると思うぞ。」

とカインハルザが経緯を説明し始めた。

更新しようか悩んだんですけど上げることにしました。

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