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皇后と侍女と。

「アイリス様、お肌綺麗ですね〜」

ときゃっきゃと私の身体を洗っているのはソフィーだ。

「栄養失調な割には綺麗よね。」

ガサガサのシワシワでもおかしくないが不思議と肌ツヤ自体はいい。

「…ですがやはり、細すぎますね。」

と鎮痛な面持ちのローズ。

「これから体力つけていくから、よろしくね。」

「お任せください。」「頑張りましょうねっ」

と3人で笑い合った。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


カインハルザから事情を聞いたローズとソフィー。

聞いた直後はかなり驚いた様子だったが

「そ、れは「すっごーい!物語みたいですっ」

選ばれしお后様なんですね!とソフィーは興奮している。

一方ローズは…

「…なんとなく陛下が私に託した理由がわかりました。」

「話が早くて助かる。」

???と首を傾げているとローズが

「私、今度結婚するのですが、夫となる方はここの料理長なんです。」

「そう。だからそちら方面も期待している。」

「…私が栄養失調だから?」

「彼女は栄養学にも精通しているしな。」

「…しかしカレンは妃殿下に何を食べさせていたのでしょうね。」

ハア、とため息をつくローズ。

「材料調達から調理、盛り付けに至るまで全部カレン先輩お一人でやってたみたいですね〜」

料理人の誰一人として関わってないみたいですっ、とソフィーが探偵の助手かな?と言いたくなるようなことを言っている。

「ソフィーを抜擢した理由が()()だ。」

とカインハルザが私にそっと告げてきた。

「彼女はその所持スキルもだが優れた観察眼と情報収集能力とかが“密偵”に向いているんだ。」

ま、俺には効かないがな、とドヤ顔だが『効かない』…とはなんぞやとそっちに意識が向いてしまった。

…まあ、いずれ聞けるだろう。


「…じゃあえっと、ローズさんソフィーさんこれからよろしくお願いします。」

とぺこりと、座ったままではあるが挨拶をした。

「妃殿下、私たちは『ローズ』『ソフィー』と呼び捨てで。あと敬語もなりません。」

「あ……」

「まぁまぁローズ先輩っ “初めまして”なんですからこれからですよっ」

とソフィーが間に入ってくれて助かった。

ローズも少し、バツの悪そうな顔をしていたのでまだ距離感が掴めなかっただけだろう…と思うことにした。

「じゃあ、改めて…ローズ、ソフィー、これからよろしくね。」

「はい。」「はいっ」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


それから、食事が終わったのでお風呂に入ってから寝ましょうということになり2人に手伝ってもらっているところだ。

ちなみに“アイリス様”と名前で呼ぶのはソフィーが言い出した。

“妃殿下”だとやはり堅苦しいので喜んで許可した。


「アイリス様、少しストレッチ致しましょう。」

「うん。…そういえば私、他の人に比べて小さい?」

そう、2人が来て気付いたのだがどうも身長が低い気がするのだ。…2人が高身長というわけでもなさそうだし。

「そう…ですね……確かに身長が……」

「下手すると10〜12歳くらいの子供で通れちゃいそう…」

とソフィーが顎に手を当てまじまじと見ている。

(…これも近親婚の弊害か……)

アイリスの身体は18歳なので栄養失調が改善したとしてももう背が伸びるのは期待出来ないだろう。

「…こちらの女性の平均は2人くらい?」

ローズもソフィーも160は越えていると思うんだけど…

「そうですね。私たちくらいの身長が多いでしょうか。」

──この低身長だと、ひどい難産か日本だと帝王切開。

(アイリスを早く転生させてあげたかったけど…それ以外の問題が山積してるな……)

「…さ、あまり長湯しても負担になりますからね」

「こちらへ〜」

とフワフワのタオルに包まれる。


髪を乾かしきるまで待たなきゃなのかな、と思ったらローズがぶわわ〜と手から風を出している。

「?!ローズ、それ魔法…?」

「そうですが…あっ、アイリス様はご存知ではなかったですか?」

「元が魔法のない世界だから……」

「…『遠い遠いここではない別の世界』でしたっけ?」

とソフィーも手から風を出している。

「うん…魔法の代わりに科学が発達しているの。」

「カガク…」「…確か…最近我が国にも入ってきている技術ですよぉ。」

へえ、とローズがソフィーに相槌を打っている。

「じゃあアイリス様はカガクのことがわかるんですか?」

「基本的なこととかなら…」

「近頃、そのカガクリョクとやらを売り込みに来ているのがいるらしいので心強いですねっ」

「難しいことになるとわからないけどね〜…」


──一体どんなレベルの科学力なんだろう?

私は皇后だから、いずれ出会うことになるだろうな──


2人に支えてもらいながら寝室へ行くとカインハルザが書類と格闘していたが、私にすぐ気付いた。

「イリス。…石鹸のいい香りがする。」

と侍女2人がまだいるのにすんすんと嗅ぐのは止めてほしい…

「…陛下メロメロですねっ。」「もう少し自重して下さい。」

「すまん。…2人ともありがとう。下がっていいぞ。」

2人は「はい」と頷きおやすみなさいませ、と下がっていった。


「仕事をしていたの?」

カインハルザからも石鹸の香りがするから先に上がって書類を片付けていたようだ。

「ああ…午後の仕事は全て止めにしたからな。」

「…ごめん。私が“話しが”とか言うからよね。」

「大丈夫だ。元々そんなに多くないし…明日に回しても良かったんだが明日は『休息日』だから─」

とソファに私を座らせる。

「休息日?」

「─そう…国中が休みの日。」

日曜日の概念があるんだ…ということは月や週は地球と同じなのかな?

時間は同じなようだからたぶん──

「ほら、飲め。」

「…あ、ありがとう…?」

渡されたカップには…温かい牛乳?

「温めた牛乳に蜂蜜が入れてある…『よく眠れるから』と小さい頃、母上がよく作ってくれた。」

と少し照れくさそうに言うカインハルザにキュンとしてしまった。

「……ありがとう。」

彼はふっと微笑んでから書類仕事へ戻っていった。

…頬が熱い気がするのはホットミルクのせい、じゃない──


───……

──……


──ふわりと身体が浮く感覚がして、意識が浮上するが瞼は重たい。

「んー………」

いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

「…寝てていいぞ。」

ぽふんとベッドに降ろされる。真新しいサラサラのシーツが気持ちいい。

「そうだイリス。」「ん…?」

なんだろう、と重たい瞼を持ち上げればどこか嬉しそうなカインハルザの顔がぼんやりと目に入る。


「──この国を、世界を選んでくれてありがとう。

君は、そのまま無視して自分の新しい命を自由に生きても良かったはずだ。

だけど…“残ること”を選んでくれた。

…だから、ありがとうと言いたかったんだ。」

とさらさらと頭を撫でてくれるのが幸せで満たされる。

「……そりゃ…そうよ……だって私、


──貴方に一目惚れしたの。」


そう。私はもうすでにカインハルザの虜。

下心アリアリで残ることにしたのだ。


「………」

「?」

…急に黙ってしまった彼を見ると、もうこれ以上ないくらいに真っ赤になっていた。

「か、わいぃ……」

と頭を撫でればハッと我に返る彼。

「…イリスを負かしたつもりだったんだが、負けてたのは俺だったか……」

とコツンとおでこを合わせてきて、そのままキスをされた。

──また、濃い甘い味がする。

(おやすみ、っていわな…く…ちゃ………)


だけどその願いは叶わなかった。

( ˘ω˘)スヤァ

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