はじまり1-8
コーヒーショップでミクはブラックコーヒー、愛花はカフェラテを注文する。愛花は何があったのといった無言の圧力をかけてきた。この圧力にミクは弱い。ミライもだが。コーヒーが運ばれてくるまでお互い無言が続いた。ミクはあまりプライバシーに踏み込まれることを好まない。そのことを知っている愛花は、ミクが話すまで待つ。コーヒーが運ばれてきていい香りに包まれた。ミクの心も少し穏やかになる。
「ミライが告白されたんですよ」
唐突にミクは話し出した。その発言に愛花は驚き目を丸くしている。
「え?ミライが告白されたの?あの男の子に?」
「はい、図らずも私が気持ちを聞いてしまいましたが」
「それでミクはなんて答えたの?」
「ミライの事ですから。当たり障りのない返答をしておきました。ひとまずは友人関係ということで落ち着きましたよ」
愛花はミクの配慮に感心しながらも、そうなんだ、と独り言ちる。ミライに彼氏がいたことがないことは知っている。きっとミライは戸惑ったことだろう。
「ちなみにキスもされたようですよ」
「はぁ!?」
ミクの言葉に思わず過剰に反応してしまう。経験0のミライがどれだけ困惑したか安易に想像できた。それと同時に相談してほしかった。ミクが出てきたのもそのキスが原因なのではと愛花は考える。
「ミクが出てきたのはそれが原因?」
「いえ、夢見が悪かったんです。過去のことがフラッシュバックしてしまいまして」
「そっか……まだ夢に見るんだね」
「鬱陶しい限りです」
「ミライはキスされてどう思ったのかな」
「それはミライに聞いてください」
「そうよね、ごめん。ミクはどう思ったの?」
「別に何も、私の事ではないですし。それよりもバイトの事が気がかりですね」
ミクは話を切り替えることにした。このままでは質問攻めだ。愛花のミライを心配する気持ちもわかるが、ミクに答えられることはほとんどない。なにせ自分の事ではないのだから。
コーヒーの苦みが口内に広がる。気持ちを切り替えるには丁度いい。
「バイトの面接が明日あるのですが、ミライはまだ眠っていますし」
「ミクが受けるの?」
結局は質問攻めかと小さなため息がもれる。
愛花は決して悪い人間ではないし、数少ないミライとミクを知る人間、邪険にはしたくない。また小さな嘆息がもれた。
久しぶりの恋愛事情更新です!