はじまり1-3
どう返事すべきか。更に頭を抱えてしまう。
ナツから続けて問いが届いた。
<どういう反応返したの?>
<買い物があるからって、逃げてきちゃった>
<男にとって一番キツイやつー>
<そうなの?>
<そりゃそうだよ、好きだからキスするんだし。それ逃げられたらへこむ。相手が遊びならわかんないけどー>
少なからず、一馬は遊びで、という感じではなかった。会話の流れ的にも、だ。直前に、気になる子、という事も言っていたのだから。
それにあの真剣な眼差し、未来をよくみているからこそ気づいた言葉の数々。
<遊びではない……と、思う……>
<告白されてからキスされたの?>
<告白はされてないけど……>
<それは男も悪い。順番考えろよーって感じ>
言われてみれば、気になる子、と言われただけで告白されたわけではない。ナツの言う通り、順番が違う、と未来は思った。
それでも……一馬君もいっぱいいっぱいだった気がする……
あの真剣な表情が思い返される。
一馬を意識し始めている自分に気づいた。
<私、軽い女なんだなぁ>
自虐でもあり、本心でもあり。
思わず文字にしてしまっていた。
<まさか惚れた?キスされただけで?>
<わかんない!けど、気になってるのは気になってる>
<ダメ、絶対ダメ!>
<え、ダメって言われても……>
<いいからダメ!付き合うとか言ったらマジで怒る>
ナツが何をそこまでむきになっているのか、未来にはわからない。
むしろナツなら応援してくれるのではとすら思っていたのに、予想外の猛反対だ。
<ナツくん、何をそんなに……確かに順番は逆かもしれないけど……>
<ミライは流されやす過ぎ!>
その一言は、未来にとっては痛い言葉だった。付き合った経験どころか、告白されたことすらないのだ。だからこそ、初めてのことにのぼせているのかもしれない。
その事を見抜かれたようで、一馬に意識が流されかけた自分が恥ずかしくなった。
<ごめん、有難う。ちょっと冷静になれたよ>
<本当?付き合わない?>
<それはちゃんと話してみないとわからない、としか言えないかなぁ>
<めっちゃ心配なんだけど。急にキスしたりしてごめん、好きなんだ。とか言われたら付き合いそう>
否定できないところがまた痛い。
いつもはナツの相談に乗っているので、こんなにもはっきりと意見を言える子だとは思っていなかった。少しの驚きと、家庭や環境が。ナツを強制的に大人にしている事実が見えた気がした。