2 とある方言男の欲望
あ、ここだけの話なんすけど。
(小声)読んだら感想とか評価くれっと作者めっちゃ喜ぶらしいっすよ?
「お目覚めなさい、初名 神」
そんとき。気づいたらワシゃなんでか凄ぇ綺羅びやかな神殿の中におった。
アタリゃなんかスモークが焚かれとって、妙に神々しい演出をキメとる。
目の前には、ちっとお目にかかれんレベルの、気ぃ弱そうな羽ん生えたベッピンさん。
どれもが現実以上の存在感を持って、ワシん前に立っとった。
ははぁ、なるほど。もちろんワシゃこれにスグにピンときたわ。
こりゃ夢じゃろ。
だってワシこんな所に覚えなんてねぇモノ。
そうなりゃこりゃワシの夢ですわ。
え?ワシ今クソ進行の、クソ残業の、クソサー残中なハズなんじゃけど。
ワシが今寝とるってヤバない?ラインどうなっとるんじゃろ?
……まぁしかし。実際ネトルわけじゃしな。
どうしようもねぇから、ワシゃこの状況を全力で楽しむことにするわ。
うん、クズでよかった。
「意識は有りますか? 状況は理解できていますか?」
「おう。みなまで言わんでもわかっとる。」
そりゃあなんとも言えん絶世の美女じゃった。
コスプレぁ兎も角、金糸の髪に碧眼の、まさに絵ぇ書いたようなパッキンギャルじゃ。
そんな女がワシんことを心配そうに覗きこんで来とる。こりゃアツいわい。
ワシゃちょいとええカッコして不敵な笑顔で答えを返す。
……ええじゃろ。ここワシの夢なんじゃから、ワシがちぃっとぐらい格好つけても。
夢ん中でくらい、いい夢見たいわい。
ブッサイクなこの顔と、ひでぇ方言、センスねぇ格好が相まってワシゃ全然モテん。
口調直せやって言われてもなかなかええ年した口調って治らんもんなんじゃ、コレ。
ワシん地元じゃあ大体こんなモンじゃあ思うんじゃが。
後、ボッチにセンスとか言われてもようわからん。
「そうですか。……つよい御方なのですね。期待できます。
申し遅れました。私は異世界で女神をやっているウェンディと言います。
実は今日、私はあなたをスカウトに来たのです。」
憂い気な顔から一点、笑顔が溢れでるベッピンさん。守りたい、この笑顔。
でもちょっと困らせてみとうもなる。どっかそういう雰囲気を持ったお人じゃった。
「ほう?」
「あなたは本来、このまま浄化され別の誰かとして生まれ変わることになっています。ですがもしあなたがよろしければ、私の世界にきて、私の世界を救うことに協力して頂けませんでしょうか。」
「んあ、どういうこっちゃ?」
「お恥ずかしながらですね。
私女神としてペーペーの新米でして、まだまだ私の世界は弱く、拙いのです。
ですからこうして恥をしのんで異世界に来て輪廻を迎える方から、お人好し、っじゃなかった頼れそうな人を選んで、世界の混乱を修めてくれそうな人をスカウトしている次第なのですよ。
どうでしょう?
今、私の世界にきて下さるというのならあなたの望む特典を1つ与えて、剣と魔法の世界で冒険を楽しめちゃいますよ?もちろん、厳しいノルマもありません。
あなたが世界を楽しむついでに、ちょっとだけ、ほんのちょっと私の世界を良くして下されば十分です!
どうかウチに来て下さいませんかっ!!お願いしますっっ!!」
色々聞いちゃまず気な単語が漏れとった気ぃするが気にゃすまい。
必死じゃ。
どうにも怪しい保険のセールスにしか聞こえんが、ま、要はそういう設定らしい。
ならこん流れに乗らんともったいねぇわ。
「おう、ええぞっ!!」
「ホントですかっ!!ありがとうございますぅっっ!!」
この人ベッピンなんじゃけども、なーんか残念な感じが漂うのぉ?
どっかあれワンコっぽいんじゃわ。今も子犬が尻尾ふるみてぇに羽パタつかせとるし。
……あれって動くんかい。
「それじゃあ、どんな特典がいいですか?
私としてはこの勇者セットなんておすすめですね。めっちゃ強くなりますっっ!!
私の世界、怪物とかメッサいる剣と魔法とファンタジーな所なんで、できれば自分の身を護れる特典を選んで頂ければベストなんですけどもっっ!!」
女神様がワシに熱烈に、親身になって1つ1つを説明してくれとる。
けど、すげぇやる気だけ空回りしとって聞き取りづれぇのよ、これが。
正直9割聞き流したワシは、自分から欲しい力を言ってこの解説地獄から逃れることにする。きついわ。
じゃけん
自身満々の表情で、ワシはその欲望を言ったった。
「世界中の美少女からモテてぇっ!!」
「は?」
女神様の時が止まった。
どうせ夢だろ。
ならワシゃ願いん全てを欲望に全振りするわ。夢でくらいはっちゃけたいからの。
いつもは蓋ぁして目をそらしとる、男の欲情フルスロットルよっっ!!
垂れ流すぜ、この魂っっっ!!!
「もう唸る程モテてぇっっ!!只モテてぇっっ!!
美少女からものすっごくっ、ちやほやされてみてぇっっ!!
そいでもう許してって言ってみてぇっ!!
むしろ信仰されるくれぇに、美女からっ、美少女からモテてみえぇっっ!!」
「えっ、ええっ。」
困惑する彼女ん表情がすんげぇ可愛ええ。
実にソソるアレじゃ。
じゃけんワシん欲望は、さらに加速する。
「健康的でっ、傷1つない玉の肌のっ、そんな美少女からモテてぇっっ!!
しかもキレぇな言葉ぁ使うベッピンさんなんかええのぉっっっっっ!!」
病気なんかぁ怖ぇから、そういうのももちろんなしでっっっ!!
食えんでガリガリの、痩せとるような女もいやじゃっっっ!!
無論、病ンドルヤツぁ論外のうっっっっっっっっっ!!
いや、あれはホンマこわいんじゃ(トラウマ)
「あ、あのですね?」
「もうホント最高にっ、完璧な美女から、美少女から、時には美幼女にすらもモテる、そんな魔性の男にワシゃっ、なりっ、てぇっっっっ!!」
どんな強気で屈強な美女も、
どんな凶暴で凶悪な性根の美少女も、
みんなワシにコロリときちまうような、そんな力がほしいんじゃあぁっっっっっ!!」
「あわ、あっ、あぅっっ!!」
押し切れるっっ!!!
ワシゃなんかこの時、勝利を確信しとった。
ワシ今ならたったひとつの夢とか掴めそうじゃ。
ここじゃ。ここが漢が誠意を見せる時じゃけぇっっっっ!!
「そんで、世界中の美女・美少女・美幼女をこの手の全てで掴みてぇっっ!!
掴みとりてぇっっ!!
むしろ掴んだ全てが美少女になる、そんな勢いの力をワシにくれっっっっ!!!
ワシに下されっっっっっっっっっっ!!!
どうか、どうか我が手に美少女をおぉぉぉっっっっっっっっっっ!!」
「ひぅっっ!!
わ、わかりました。わかりましたから、もう、もう許して下さいぃっっ!!」
やったぜ。
ワシの魂の土下座が通じたんか、彼女はどうやらワシん希望を叶えてくれるらしい。
やっぱ最後は誠意じゃわ。
これで文字通りいい夢見れるじゃろうて。
わんこちゃんは若干以上にワシに怯えた表情を向け、上目遣いで目端ん涙浮かべとる。高得点。パーフェクツよ。まさに夢のような光景じゃて。
ワシが彼女の姿を見ながら自分の成果を前に誇らしげに微笑んじょると、彼女は口早にワシん向かって要件だけ伝えてくる。ぼっけぇ早口。
「じゃあこれからあなたを私の世界に飛ばします。最初期は人気のない森の中になっちゃいますけど、最低限の装備は装備させておきますからっっ!!」
「おう、よろしゅう頼むわ。」
ワシゃこれから切り替わるであろう夢ん光景を思い浮かべて、その言葉を受け入れた。だんだん意識が遠のいていく感覚と共に。
えっ嘘ぉ、ここで、こんタイミングで目覚めるんかいぃぃーーー?
そんなわずかな焦りと共に、ワシゃ完全に意識を失ったんじゃ。
あらゆるモノを完璧な美少女に変える程度の能力。