17)ヴィナカムィ創世記4
ジーンズさん視点。
ゴブリン共との戦闘後、カミサマ御身の様子がどこかおかしい。
明らかにそれをおかしいと感じつつもカミサマの所有物である私には、それをどうすることも出来なかった。
この時私たちはまだ知らなかった。
姿を得て、形を変えたいたダケで、我々の心は未だ道具のままであったことを。
御身は今皆の輪から外れ、衣服達だけを引き連れて、装備たちの倒したゴブリンの死体が集めらている外れへと向かった。
そこで我々は知ることになる。
御身が、彼らの死を、我らに襲いかかってきたモノの死を見て、何か言い寄れる寂しさを抱えていることに。一体何故どこにこのバケモノ達を同情するような部分があるのだろうか。
気付けば、御身のお手は自然とその山に近づき、一体のゴブリンへと触れた。
無意識に、本当に無意識だったのだろう。
我ら衣服のあり方は御身を護ることであるが、御身の行いを否定することではない。
我らはそれを止めなかった。止めようなどしなかった。
だからこそ、御身の苦悩を知ったのだ。
「ナゼ、タスケル。オレ、イダイなカタ、テキ。コロス、シタ。スクウ、ナイ。」
「この子を見てたら昔を思い出してね。
流れのままに、流されるままに。
世の理不尽の流れで死ぬことになったこの子の姿が自分に重なったの。
きっと醜くとも、まわりから疎まれていても、それでも必死に生きていたのでしょう。
少しでも生まれ方が違えば、世界のあり方が彼らに優しければ。
もっと幸せな人生をおくれたかもしれないけど。
それでも、世界は優しくないものね。」
この方はこの世界のあり方を憂いていたのだ。
敵にあえば当たり前に戦い、当たり前に殺す。そういうあり方を、良しとしていなかった。そう。道具たちは何も理解していなかった。だからこそ、カミサマは。
「本当にごめんなさいっっ!!
私は貴方に私と同じモノを背負わせてしまった。貴方のあり方を変えてしまった。
私の勝手な行いで。
貴方は私をいくらでも恨んでくれていいわ。
私はそれだけのことを貴方にしたのですから。」
そのあり方を受け入れた、そのあり方を押しつけてしまったゴブリンに御身自ら、膝をついて頭を下げたのだろう。
道具たちが考えもせず殺したモノに、御身自らが頭を下げる。
これは道具の失態だ。我らは御身の為と言いながら、何も御身を分かっていなかった。その望みなど見ていなかった。
御身はただ、優しい世界を、優しさが許される世界をこそ、望んでいる。
そしてこの時知ったのだ。
ああ、それを口で説明されても、我々は決して理解出来なかっただろうと。
だからこそカミサマは我々に言葉で伝えず、そのお姿で示したのだと。
思えばカミサマは我々に自分を何も語らなかった。だけど道具は、それをおかしな事とは思わなかった。考えず、そのあり方をただ受け入れた。受け入れて、しまった。
だって道具にそれらを語るモノなど、今まで誰もいなかったから。
そういうモノだと考えて、その御身の名すら尋ねなかった。
だが違うのだ。違ったのだ。私たちは形を変え、身体を得たが、その魂はずっと道具のままだった。ああそれならば、私たちに告げる名など、御身にはあるわけがない。
道具に名を告げるモノなどいないのだから。
目の前で、気高きモノが御身の名を問うている。これから御身と共にある為に.
私たちはそれを見ている。ああそれが、その愚かさが、私たちのあり方だ。皆一様に、手を握りしめ、自分の愚かさを悔いている。
「ヴィナカムィ。それが私の名前よ。」
そして御身は当然に、気高きモノに名を伝えた。ああ、それは。その名こそは。
我々が聞き出すべきだったモノ。御身の後ろから私が見た光景は、自分で考え、自分の道を選んだ気高きモノにこそ、与えられたのだ。
ただ従うでなく、その行いの尊さに憧れ、その険しき道を行くことを自ら決めたモノだからこそ。御身は対等に気高きモノを見るのだ。
そこには確かに、道具と命の違いがあった。
私たちはまだ生きてなど、いなかった。
「イダイなカタ。ヨケレバ オレ ナ ホシイ。
アラタナ スガタ。 アラタナ アリカタ。 イダイなカタ ツケタ ナ ナノリタイ。」
「ヴォネェ・ア」
御身の口から躊躇わす、名が告げられた。
気高きモノが問いかける。
「アリガタイ カンシャ。 アタラシキ ナ イミ モツカ?」
「男であり、女であるモノ。ことの両極の、あらゆる者の気持ちを識る者ね。」
「オオ、オオ、アリガタイっ!! アア ホマレ。オレ ナ オレ タカラっっ!!」
喉か、酷く乾いた。それでも今、動かないと、私はずっと道具のままだ。
掠れそうな声を震わせて、私は御身に願いを請うた。
「どうか、カムィサマ。お願いします。私に、私たちに、名前を下さい。私たちも、私たちも、自分の意志でアタナと有りたいっっ!!
その証を、私たちにお与え下さいっ!!」
御身を側が良いんです。御身の側でなければ嫌だ。服にも、武器にも、鎧にも、ただの石や草土にさえ、本気であり方を示そうとする御身の側が。
敵として襲いかかった者の身の上でさえ、本気でお嘆きになる御身の側が。
弱い事が許される、誰にも居場所がある世界を望む、御身の側へ。
どうか私を居させて下さい。御身と共に歩ませて下さい。
長い、沈黙が訪れた。御身は少し困った顔をして私たちを見回す。
私たちの誰もが、同じ思いだった。
どうか私に名前と命をお与え下さい。
皆一様に、願い、時を待つ。
そして御身が次に口が開いた時。
私たちの命が、始まった。
閲覧ありがとうございます。
やっと自己紹介が出来るのですよ。
プロット不味った感しかない。




