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31 切り替え線 君と僕の間にある、透明な、目には見えない境界線。

「お兄ちゃん。起きて」

 妹の柚の声が聞こえる。

 いつの間にか、棗はベットの上にいた。……いつの間にか、よく見る夢の中に棗はいなかった。棗はやわらくて暖かい、洗いたてのふかふかの毛布にくるまって(それは仕事が忙しいのに、母が洗濯してくれたものだった)いつも棗の目覚める場所であるベットの上で横になっていた。

 棗の頭と天井の間には柚の顔がある。柚はそこから棗の顔をじっと不思議そうな顔をして(なぜか珍しいものでも見るような顔で)のぞき込んでいた。棗は視線を窓に向ける。カーテンは開いたまま。そこには明るい光がある。


 天気は晴れ。今日も、……雨は降っていなかった。


 柚は棗のベットから移動すると、近くで丸くなっていた灰色の猫を抱きながら、嬉しそうな顔をした。

 棗がベットから起きて、柚を見て「おはよう。柚」と言うと、棗と目が会って、その棗の顔をじっと見つめたまま、少し間を置いてから、柚は棗に「うん。おはよう、お兄ちゃん!」と言って、すごく、幸せそうな顔で笑った。


 切り替え線


 君と僕の間にある、透明な、目には見えない境界線。


 八月。夏休み。暑い太陽と、青空と白い雲。その中日にある登校日の一日。


「それで、結局一ノ瀬くんは猫にどんな名前をつけたんだい?」お昼休みの学校の屋上で、久しぶりに会った佐伯真はいつものように本を読みながら、一ノ瀬棗にそう言った。

「それは、……『曇り(くもり)』だよ」と言って、(ちょっとだけ恥ずかしくて顔を赤くしながら)棗は自分が必死で考えた猫の名前を真に言った。すると真は「なるほど。それはいい名前だね」とメガネの奥で、にっこりと笑って、棗に言った。


 こんな風にして、棗の考えた灰色の猫の名前を真も、亜美も、さやかも、そして妹の柚や母も、結構気に入ってくれたようだった。(それが棗は、……すごく嬉しかった)


 棗はその日の放課後の時間。

 真と、亜美と、それからさやかと一緒に、四人で学校帰りに図書館によって、勉強をした。

 図書館から帰るときに、棗は亜美と、そして真はさやかと一緒に帰った。

 それはそれぞれの家の方向が同じだったからなのだけど、……それはなんだかずっと前から決まっていた運命のような出来事だと棗は思った。


 その図書館からの帰り道の途中で、棗は亜美に告白をした。


 棗から突然、愛の告白をされて、……木下亜美はすごく驚いた表情をしていたのだけど、……「……はい」と言って、すごく嬉しそうな顔をして、棗の告白を受け入れてくれた。

 そして、二人は正式に恋人同士になった。

(それは、あの生意気な猫のおかげだと棗は思った)

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