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 棗はあまり本は読まない。夏目漱石の本を読んだことも一度もなかった。だけどこれだけ有名な本だから内容くらいは知っていた。それは主人公である語り手の名前のない猫を珍野くしゃみ先生という変な人が拾う、と言うお話だった。

 ただ、僕はその名前のない猫に最後まで名前がないままなのか、それとも、珍野くしゃみ先生がきちんと名前を、その拾った猫につけたのかは知らなかった。だから、まずはそれを確認してみたかった。

 棗はぱらぱらとページをめくっていく。

 そうやって最後まで流し読みをしてみたが、どうやらこの猫には最後まで名前が付けられていないようだった。(ただ、さすがに内容は面白かった)棗はそれを確認すると、吾輩は猫であるの本を閉じ、そしてベットの上にばたんと横になった。


 そこで棗は猫ではなくて、木下亜美のことを考えた。


 今日、本当は、……猫の話ではなくて、もっとたくさん亜美の話が聞きたかった。そんなことを思うと棗の胸はかすかに痛みを感じた。

 たとえば、棗は亜美がどんな音楽が好きなのか知らなかった。だからそれを聞いてみたいと思った。(僕の知らない音楽ならぜひ聞いてみたいと思った)

 亜美がどんな食べ物が好きで、どんな場所が好きで、どんなものに興味があるのか、それを知りたいと思った。好きな色は何色なのか? 将来はなんになりたいのか? 高校はどこに行くつもりなのか? いつまで、この街で暮らすつもりなのか? なにを大切にしているのか? どんなものを愛しているのか? (……僕のことをどう思っているのか?)

 夢はあるのか? 嫌いなものはなんなのか?


 そんなことを亜美に聞いてみたかった。別に猫のことなんてどうでもよかった。それが棗の嘘偽りのない、……本音だった。


 ……もやもやする。


 このままではよくない。


 棗は「よし」と言って、自分のベットから起き上がると、着替えを用意して部屋を出る。

 それからお風呂場に行き、そこでとても熱いシャワーを全身に念入りに浴びた。(それはもちろん、自分の気持ちを入れ替えるためだった)

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