65話「花火大会前日」
明日は優大と花火大会。
なのに風邪を引いてしまった…
私はマスクをつけて学校へ向かった。
「おはよー」
「おはよー、怜奈風邪?」
「そーねん、朝起きたら喉痛くてさー熱もちょいある」
「まじー?無理するなよー?」
朝から皆に大丈夫?と心配されてしまった。
教室移動の時、優大とすれ違った。
何も言わなかったが、こちらをチラッと見て何か言いたげな顔をしていた。
きっと、風邪か?とか大丈夫?と言いたかったんだと思う。
放課後になり、帰ろうと自転車小屋に向かっていると、
「怜奈」
と、優大に呼び止められた。
「昨日俺らの教室にシャーペン忘れてかんだ?」
「そー、何か1本ないなーって思ってて。水色と白のボーダーのやつ?」
「そーそー、それ怜奈のやろうなーって思って持って帰ったら持ってくんの忘れた…」
「なら今取りに行ってもいい?」
「いーよ」
そう会話したのはいいものの、風邪が悪化してきたみたいで、少しフラフラしていた。でも心配かけたくなかったので私は何も言わなかった。
「はい、これ」
「ありがと」
家に着き、優大からシャーペンを受け取った。
「じゃー、帰るね」
そう言い、自転車にまたがろうとすると、少しよろけてしまい転びそうになった。
「お前フラフラやんけ、ってか身体熱くね?」
「そんなことないよ」
「いや、だってちょっと顔赤いもん」
「ちょっと熱あるだけやから大丈夫やって」
「熱あるならはよ言えま。明日会えんくなるの嫌やよ?」
ちょっと怒られているにも関わらず私はクスッと笑ってしまった。
「ごめん、怒っとるんに会えんくなるの嫌とか言うから」
「好きやし会いたい。ただそれだけや」
「ありがと、今日は早く寝て治すね」
「そうして、じゃあな」
明日までに治さなきゃ!そう思いながら私は帰った。




