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初恋  作者: rein
第1章〜高校1年生〜
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20話「大会-3日目②」

私は何とか追いつこうと必死に球に飛びついていた。

しかしその行動を繰り返しているうちに右足に違和感を感じた。力が上手く入らないのだ。

下手すると倒れるかもしれない。私は倒れないよう何とか堪えながら球に飛びついていた。


「蓮さん、何か神崎おかしくないすか?」


「優大もそう思うか?何か動き変だよな」


「うちが思うにやけど脚怪我しとる。結構痛いと思うよ。前に行った時」


「大丈夫なんすか?やめた方がいいんじゃ…」


「多分うちらが止めに入ったとしても怜奈は止めんと思う。」



私は何とか同点にまで追いついた。だけどもう時間の問題だ。私の足は限界に近づいていた。前に取りにいくと右足の太ももに激痛が走るのだ。その痛みが治まったとしても次は痺れが襲ってくる状態だった。


私は粘りに粘った。しかしあと3点というところで負けてしまった。私は相手と握手する時には既に泣いていた。この涙は悔し涙だ。


私はラケットを片付けようと思いしゃがもうとした。

すると急に脚の力が抜け崩れ落ちた。

そこで一気に痺れと痛みが襲ってきた。

私は痛さと怖さ、そして悔しさで泣いた。


私が崩れ落ちた瞬間、咲先輩、蓮先輩、美鈴、梓、優大が急いで下に降りてきた。


「怜奈!大丈夫か!?どこ痛い?」


「右…脚の…太ももが…痛いし上手く動かないしで、怖い…」


「ごめん、美鈴と梓と美穂と真子で審判してくれる?もうこの子出来る状態じゃない」


「分かりました。」


「ごめん…」


私は申し訳なさに謝ることしか出来なかった。


「大丈夫やよ。でもどうしようかね、どうやって怜奈運ぼ」


「大丈夫です、私歩きますから。」


そう言って立とうとしたがなかなか上手く立てなかった。まるで生まれたての子鹿のようだった。


「俺おぶって行きます」


と、優大が言った。


「そんなの悪いよ。それに私汗かいてるし、重いし」


「そんなん言っとる場合かよ。とりあえずさっさと黙って乗れ」


私は恥ずかしかったが先輩にも黙って乗りなさいと怒られたのでおぶってもらった。


「じゃあ俺はどうしたらいい?」


「蓮は怜奈の荷物持ってってあげて。うちは先生に伝えに行くから」


「分かった。じゃあ行くぞ」


私は蓮先輩からタオルだけ受け取り優大の背中で声を出さずに泣いた。涙は全然止まらなかった。


私は優大におぶってもらい皆の所へ戻った。

誰が呼んでくれたのかは分からないが、そこに整体師がいた。機械などはないので具体的には分からないが、診察してもらった。


「これは、肉離れやね。それも無理しすぎで結構酷い。試合中かなり痛かったと思うよ?何で途中で先輩とかに言ってやめなかったの?」


そう先生に聞かれた。私は思ったことをそのまま先生に伝えた。


「途中でやめたくなかったんです。皆に支えられてここまで来たから。皆の応援が嬉しかったから。私は最後までやり遂げたかったから。」


「そっか。いつから違和感感じた?」


「3セット目の中盤辺りです。」


「俺らがおかしいって思ってたとこやな」


「とりあえず固めておくけど、明日病院行っておいで」


「はい。」


先生に脚を固めてもらい保冷剤を貰って冷やしていた。

審判が終わったのだろう。美鈴達が戻ってきた。


「怜奈、大丈夫?」


「うん、ごめんね。審判ありがとう」


先生が上がってきた。


「本当は神崎に4日目残ってもらって木下と基礎打ちしてもらおうかと思ってんけど、この状態やし、森本。お願い出来るか?」


真子は大丈夫です。と言って引き受けていた。


「あと審判なんやけど、これも何人かいるんや?それで内田と米田残れるけ?」


美鈴と梓も大丈夫。と答えていた。


ここで帰るグループと残るグループとで分かれた。


「皆ごめんね。後は頼んだ。美穂、うちの分まで頑張って!」


「もちろん。怜奈早く怪我治してね」


「うん、ありがと。じゃあね」


私はゆっくり階段を降りてバスへと向かった。荷物は手分けして男子が持ってくれた。女子のほとんどは審判や、試合等でここに残る。


「怜奈どこ座る?」


「女子の1番後ろでいいよ。」


後ろだとあまり皆の気を使わなくて済むと思い、そう答えた。


「分かった。じゃあ一例空けてその後ろから男子座ってってもらおっか」


私は席について座ろうとした。しかしすこし脚を折り曲げただけで激痛が走った。


「神崎、お前大丈夫か?」


「ちょっと座り方忘れたw」


私は笑って誤魔化した。


「体こっちに向けて右足伸ばしながら座ったら脚そんなに痛くないと思うよ。」


優大にそう言われた。脚が痛くて座れないことがバレていたらしい。私は優大の言った通り座ってみた。するとあまり痛みを感じることなく座ることが出来た。


「本当だ、痛くない。凄いね」


「そのくらい当たり前」



バスが出発すると同時に前から何か送られてきた。


「これ先生が3個ぐらい取って回していってって」


回ってきたのはチョコレートだった。

私は3つとり、後ろに回そうとした。だけど後ろの席は空いている。1列空けて男子が座っているからだ。


私は少し立ち上がり手を伸ばして渡そうとした。その時バスは少し揺れた。私は片足だけで立っていたのでバランスが崩れそうになった。


「危ねーな。けが人なんだからじっとしてろっての」


わざわざ優大が取りに来てくれた。


「ごめん」


「1列空けて座らんとけば良かったな。すまん、俺ここに移動するわー」


そう言って荷物を持って私の席の後ろに座った。


「ここなら後ろに俺おるし楽やぞ。それに話し相手にもなるしな」


女子はほとんど疲れたのか眠っていた。

私も寝ようと思ったが、揺れる度に脚が痛むので寝られなかった。なので優大が後ろに来てくれて正直助かった。


「さっきは色々とありがと。良かったらこれ飲んで。まだ開けてないから。」


「いいの?」


私が差し出したのはスポーツドリンクだった。買ったのはいいが、結局飲まなかったのだ。


「全然いいよ。寧ろ飲んでくれた方がうち的には助かるかな」


「ありがと。喉カラカラだったんだよな」


私は優大とどうでもいいような会話をしながら学校に着くのを待った。


「それじゃあ皆気をつけてな」


学校に到着し、解散となった。


「今日はご迷惑をおかけしました。」


先生と蓮先輩と優大に言った。


「気をつけてな。ちゃんと病院行けよ?」


「はい。じゃあ、さようなら」


私はそう言って帰った。


家に帰って優大にLI〇Eをした


『今日は本当に色々ありがと。助かりました。』


『全然大丈夫や。早く怪我治せよ。お大事に』






とても楽しい3日間だった。最後は散々な結果となってしまったが、後悔はしていない。最後までやり切ったから。

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