15話「宿泊-1日目②」
食事が終わって部屋で寛いでいた。
私は飲み物を買いに行こうと思い立ち上がった。すると突然目の前が真っ暗になった。立ちくらみだった。
「え?怜奈?大丈夫!?」
私は声は聞こえているのだが返事をすることが出来なかった。目の前が真っ暗でグルグル回っているような感じだった。
「美鈴!怜奈のこと見てて!先生呼んでくる!」
慌てて出ていったのだろう。ドアを思い切り開ける音がした。幸い先生はすぐそこにいたらしくすぐに駆けつけてきてくれた。
「おい、神崎。大丈夫か?」
「はい」
私はようやく話すことが出来た。しかし依然として目の前は真っ暗な状態のままだった。
「ちょっと廊下出るか。少し待っとって」
そう言って先生は出ていった。誰かを呼びに行ったらしい
「すまんな、ちょっと腰痛めとるから抱えること出来んから男子呼びに行っとったわ。じゃあすまん、頼む」
「はい。」
誰か分からなかったが声がした。私はお姫様抱っこをされ外に連れ出された。
「ごめんなさい」
私は迷惑をかけてしまっていると思い謝った
しかしその人は
「大丈夫や。少し涼んだら落ち着くと思う」
そう優しく言ってくれた。
しばらくすると目の前が明るくなってきた。
しかしずっと真っ暗の状態だったのでとても眩しく感じた。目が慣れてくるにつれ周りの様子が分かってきた。
「これ飲んで」
私を運んでくれた人が水を渡してくれた
「ありがとうございます」
そう言ってその人の方を見ると優大だった
「いつもみたいにタメでいいのに。」
「え、いや。優大とは思わなくて。」
「もしかして誰か分かんなかった?」
「うん。ずっと目の前真っ暗だったから」
「そうか。」
私は今更恥ずかしくなってきた。優大が運んでくれた。しかもお姫様抱っこで。
「お前顔赤いぞ。大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ。」
そう話していると先生が来た。
「神崎大丈夫か?」
「あ、はい大丈夫です。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。」
「大丈夫ならよかった。でももう少し涼んでなさい。沢峰、神崎のこと見ててくれ」
「はい。」
「え?大丈夫か?」
優大が私の顔をのぞき込んでいる。どうしたんだろう?そう思っていると
「あー!優大神崎泣かしたー!」
そう中野が言った。
「いや、俺じゃねーよ」
私は何故か泣いていたのだ。言われるまで気づかなかった
「うち何で泣いてるんだろw」
「びっくりしたんじゃね?」
「多分そうかな?」
私は立ちくらみはたまにあったが倒れるまでいったのは初めてだった。
だからだろう。怖かったのだ。ずっと真っ暗なままだったらどうしようなどと、ずっと考えていたから。
そのことを思い出していると余計に涙が溢れてきた
「ごめん。」
私はそう言って下を向いた。すると優大が
「大丈夫。」
そう言って頭をポンポンしてくれた。
私はそうされたせいか不思議と落ち着いてきた。
「ありがとう。やっぱり優大好き。」
私は小さな声でそう言った
「ん?何か言った?」
優大が聞いてきた
「ううん、何も。」
聞こえてなくてよかった。そう思った。
大会初日からハプニングが起きすぎだ。
残りの2日間無事に過ごせるのかとても不安だったが、今はそのことを考えるのはやめた。
明日、明後日何も起こりませんように…