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中途半端のろくでなし  作者: 海深真明
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番外編2

菅野:こんにちは菅野です。今回も私が進行を務めさせていただきます。よろしくお願いします。


八田:どうも八田です。よろしくお願いします。


菅野:八田さんとお会いするのは初めてですよね?


八田:初めて…のはず。


菅野:八田さんのうわさはかねがね悟郎や磐境さんから聞いてまして。


八田:どうせ、ろくなもんじゃないでしょ?


菅野:そんなことないですよ。二人とも褒めてましたよ。悟郎は同世代で強いやつがいる、磐境さんは面倒臭がりだけれど、何だかんだ言って面倒見がいいって言ってました。


八田:お嬢のコメントは褒めてないだろう、全然!


菅野:最初の挨拶はこれぐらいにして…早速始めて行きたいと思います。「どうして八田さんは磐境さんのことを『お嬢』って言うんですか?」という質問をいただいております。この呼び方は、八田さんと磐境さんと知り合ったきっかけにも関係してくるのでしょうか。


八田:お嬢だからです! 以上!


菅野:ええと、そこを詳しくお聞きしたいのですけれど…。


八田:冗談ですよ。まぁでも、そのままなんですけれど。菅野さん…なんかしっくり来ないな、菅野くんでいい?


菅野:ええ、いいですよ。


八田:実はさっきから「八田さん」って言うのもしっくり来てなくて。タメだからお互い「くん」で統一しようか? あるいは「ヒサ」で!

菅野:初対面の人を愛称で呼ぶのは、中々勇気がいりますね…「八田くん」でお願いします。


八田:話が逸れたけれど、菅野くんはこの業界についてどれくらい知っているの?


菅野:ド素人です、はい。


八田:そうか、そうだよね。お嬢の家と俺の家は長らく主従関係にあったんだよ。その名残かな、「お嬢」と呼ぶのは。


菅野:長らく、というとどれくらい前から?


八田:あまり以前の記録がないから確認できないけれど、一〇〇〇年以上主従関係にあったらしい。


菅野:一〇〇〇年以上ですか! これまた、気の遠くなりそうな話ですね。


八田:まぁね。俺も実感ないけどね。


菅野:では、今でも主従関係にあるということですか?


八田:菅野くんは陰陽寮って知ってる? 知らなそうだね。飛鳥時代に設置されて明治の初めまで続くんだけど、そこで天文博士などを務めていた家の一つがお嬢の磐境家で、うちは磐境家に雇われた使用人の一族って感じかな。まぁ、あまり関心がないから詳しい話は知らないが、大枠はそんな感じ。


菅野:へぇぇ!


八田:で、今でも主従関係にあるかっていうことだけど、結論から言うとない。まぁ、その辺の事情については俺の口から言うのは憚られるというか…。


菅野:ははは、止めておきます。磐境さんの家は旧華族?


八田:まぁ、そうなる。あまり言うと叱られるけれど。

菅野:今はどうなんですか? 磐境さんは八田くんの上司?


八田:いや、違う。ぶっちゃけ、面白がって俺が「お嬢」、「お嬢」って言っているだけ。


菅野:よく叱られないですね。この前なんか、僕と名蔵ってやつが呼び出されて…おっとこの話はなしでいいですか。すみません、自分で話し始めたのに。


八田:ははははは! 言わなくても分かる! どうせしめられたんだろう。


菅野:ノーコメントでお願いします。八田くんと磐境さんの関係についてよく分かりました。続いては、八田くんと悟郎との出会いについてお聞きしたいと思います。


八田:なんかそういう訊き方をされると、悟郎と俺がつきあってみたいだな。それこそ、お嬢に文字通りしめられそうだけど…。最初に会ったのは、あいつが俺が通っている岩倉師匠の道場に、あいつの師匠平坂師や他の門弟たちと一緒に出稽古に来たときだったと思う。中学に上がる前だったと思う。だから、六、七年前かな。


菅野:それで立ち合ったんですか?


八田:うん。年齢の近いのは、向こうにもこっちにもあまりいないからね。平坂師はそういうこともあって悟郎を連れて来たんじゃないかと思う。もしかしたらうちの師匠にも頼まれたのかもしれない。


菅野:どっちが勝ったんですか? 


八田:最初は俺が勝った、と思う。けれど、何回も何回もやらされて結局は五分五分ぐらいだったんじゃないかな。俺の方が一勝くらい多かった気がしたが、悟郎に訊くと悟郎の方が一勝多かったと言うから、よく分からん。


菅野:今はどうですか?


八田:どうなんだろうね? 正直これもよく分からん。一年ぐらい前かな、じゃあ久しぶりにやろうってなって立ち合ったけれど、三〇分くらいやっても決着しなかった。だから、お互い面倒くさくなって止めてしまったよ。


菅野:お互い切磋琢磨するよきライバルって感じですか?


八田:そういうのではないな、多分。悟郎が目標にしているのは平坂師だし、俺が目標にしているのは岩倉師匠だし…。お互いに関心がないというと言い過ぎだけれど、そういう目指すべき目標、攻略すべき目標がお互い別にあるからね。だから、悟郎に訊いても俺のことをライバルだなんて思ってないと思うよ。

<追記>後日悟郎にも同様の質問をしたところ、ライバルっていうんじゃないな、と同じような答えでした。(菅野)


菅野:そうなんですか。


八田:すまんね、悟郎は俺の終生のライバルです!なんて言えたら、収まりが良かったと思うが。


菅野:いえいえ、大丈夫です。いただいた質問について答えてもらえたし、興味深い話も窺えました。本当はもっと八田さんのことについてお窺いしたいところですが、時間もそろそろいい感じなので、これで終わりたいと思います。八田くん、ありがとうございました。


八田:こちらこそ、楽しかったです。





次回は本編をお届けできればいいなぁと。

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