アーティストの意地
今、芸能関係では、沢田研二さんが10月17日、さいたまスーパーアリーナでのライブをドタキャンしたとの
ニュースが話題となっている。その理由は当初の9000人の見込みから、7000人分しかチケットがさばけず、
「客席がスカスカな状態でやるのは酷なこと、自分にも意地がある」というものだったらしい。
沢田さんといえば、「勝手にしやがれ」「TOKIO」などファンでなくても知っている大ヒット曲を連発し、歌謡界
の枠を越え多くのアーティストに影響を与えた、日本音楽史に燦然と輝く歴史を残した大御所だ。
そんな沢田さんが起こした今回のドタキャン騒ぎを巡って、ネットでは、
「ジュリーらしい意地の張り方」
「例えお客が1人でも歌うのがプロ」
「客はこの日のために、休みを都合したりしている。それを裏切るのか」
などといろんな意見が飛び交っている。どちらかというと、否定的な意見の方が多いようだ。さて、筆者が
このニュースを目にした時真っ先に思い浮かべたのは、シナロケの鮎川誠さんが福岡ドームでローリング・
ストーンズの追加公演を観た時の話だ。
告知が直前だったこともあり、その日客の入りはアリーナだけで、スタンドはガラガラの状態だったらしい。
しかしストーンズは手抜きすることもなく全力で演奏し、観客もそれに応えて大盛り上がりを見せたそうだ。
次に筆者が1980年代~90年代にかけて一世を風靡し、何度も球場でライブを行っていた女性歌手の
ライブを、2年ほど前大宮ソニックシティに観に行った時のこと。
客の入りは半分程度でガラガラ、見ているこっちが気の毒になるくらいの動員だった。でも彼女はそんな
状況でも腐ることなく、笑顔で精いっぱいのパフォーマンスを見せてくれた。MCでは
「みんな、今日は集まってきてくれてありがとう」
と、感謝の言葉も述べてくれたのだ。
もちろん、ストーンズや彼女の本心はわからない。もしかすると内心では
「ちっ、これくらいしか入らなかったのか」
と思っていたのかもしれない。
でも、彼らは少なくともファンの前では、そんな素振りは全く見せることなく、もちろんドタキャンすることも
なく、自分たちの仕事を全うしたのだ。
ここまで書いていて思い出したのは、音楽誌でサザンの野沢毛ガニ氏が語っていた、アマチュア時代に
感銘を受けたというレッド・ツェッペリンのボーカル、ロバート・プラントの言葉、
「ゼップにとって今日のライブは何百回のうちの1回かもしれないけど、お客にとってみれば一生に1回かも
しれないから、一生懸命やるんだ」
レッド・ツェッペリンといえば”セックス、ドラッグ、ロックンロール”を体現したバンド、ツァー先のホテルで
暴れただの武勇伝には事欠かないグループである。
そんな彼らにして、この言葉、きっとこれが”アーティストの意地”というものなんだなあ、と、筆者は愚考
するものであります。
皆さんは、どうお思いですか?
ちなみにレッド・ツェッペリンの起こした事件の中では「サメ事件」と
いうのが有名です。興味のある方は検索してみてくださいませ。