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裏切りは告白のあとで。  作者: 愚者
6/7

それはまさしく魔法のようで。

雨は嫌いだ見ているだけで泣けてくる。


舞い落ちて、解けてく夢。忘れられない君の、その名前は。

魔法のように心切なくさせてく。どんなときも消えることはない。


『裏切りは告白のあとで』


Chapter2-3:それはまさしく魔法のようで。


「にゅういん、なう」

「は?」


結菜からの久しぶりのLINEは入院の一報だった。


「たいくつーつまんねー」

「おう。お大事に」

「見舞いに来いよ!?」

「いやあ迷惑かなあって」


まるで俺がキープ君みたいな感じだが。

だが別にそれでもいい。

僕は見てくれもよくなく、性格もクソ。

褒められるべきところは何一つ無い。

そんな俺を必要としてくれるならたとえそれがキープであっても、

構わなかった。

誰かが必要としてくれるだけで生きてていいとそんな風に、

許されている気がした。だから結菜の期待希望には極力答えるようになっていた。

そして結菜との約束は破らなかった。破らないようにしていた。

話がそれた。


「むしろ来ないほうが迷惑」

「はい。向かいます」

「冗談やって。ええよええよ」

「暇だから片手間に見舞いするだけなんだからねっ」

「男のツンデレとか誰得」

「そんなことは知らん俺の管轄外だ」

「デスヨネー」


そういうわけで見舞いに行く事になった。


***


「やあ。大過なさそうで」

「うん。まあストレスにやられちゃったというか、変わり目にやられたというか」

「相変わらず弱いなあ」

「うっせうっせ」


クマが酷く寝られていない。

生気がいくらかこぼれ落ちてしまったような顔をしていた。

職場のいじめがひどかったそうだ。

そして彼氏ともうまく行っていないらしい。

いや、知らんがな。え?なに?慰めてほしいの?


「まっさかー。隆に慰められるとか恥ずか死ぬわ」

「でしょうね。知ってた。んで?今回は何があったんだよ」

「やめてよねなにかある前提で話すの」

「なかったの?」

「ありました」

「素直でよろしい。それで?」

「え?本当に聞いてくれるの?馬鹿らしい話だよ?」

「別に。聞くのはただだろ」

「またまたそんな風にわるぶってー」

「はよ話せめんどくせえ」

「うぃっす。えっとねディズニーランド行ったんですよ」

「ん?ああ、そういや行くとか行ってたね。それで?」

「彼氏がね、俺はディズニー無理だわーって。夢楽しめないって」

「へぇ……そらまた難儀なご性格で」

「私ディズニーだめな人が駄目でさ。もうわかれよっかなーって」

「ふぅん。お前さんのしたいようにせやええさ」

「そりゃそうだけどさあ」

「あのな結菜。お前が俺に話すってことは、それはすでに結論がでてるんやろ?」

「……よく知ってるね、隆」

「そらお前何年の付き合いだよ。ええと7年かな? ほぼ1/3だからな」

「おぉ……。ちょっと感動」

「すげえ感動してるわ。俺なんかとよく長く付き合ってられるなあって」

「それはこっちの台詞だよ」

「ははは。おっと結構長居しちまったな。んじゃ帰るわ」

「ん。ありがとう」

「おう。はよ良くしろよ」

「あーい」

なんてお見舞いに行って別れたのが春先の話。

気がついたらもう夏だった。

というか帰省してた。


***


「おかえり天パ」

「残念でした縮毛かけてますー。おう、たでーま」

「んで?」

「任せろ。シン・ゴジ見終わってすぐに買いにいくわ」

「弥生と見てるの?なに?デート?」

「いや、中学んときのダチ」

「ほへー」

「あとデートは異性と行くことだからね」

「知ってますー」


弥生の誕生日がすぐということでシャンパンファイトやろーぜって話になった。

被害者は弥生。加害者は俺、結奈、そして下橋御影(シモハシミカゲ)

ミカさん、ミカの姐御。結菜がつなげた同好会のOBOGの四人の残り一人。

曲がったことが嫌いでまさしく姐御肌な性格のかっこいい女の子。


***


「おー結構良さげなシャンパン」

「いやあ、見つかってよかったっすわー」

「シン・ゴジどうだった?」

「ゴジラ映画見てる感じだった」

「ん?シン・ゴジラってゴジラの映画だよね?」

「うん。だから楽しめた」

「君の名は、見なかったの?」

「見てないです」

「普通に楽しめたよ」

「今度見に行くかな。お、弥生そろそろ着くってさ」

「おっけー」

「ういーっす。ねみー」

「おう。暑いなこっちは」

「そうか?毎年こんなもんじゃね?知らんけど」


結菜の車でBBQ場まで行くわけだが自分を含めた他の3人を拾ってから向かうため、

ちょいと軽めに待ち合わせ。皆元気そうだなあ。

おっとドッキリのことを顔に出さないようにしないと。


「向こうは涼しいからなあ。弱ったかもしれねえなあ」

「ケッ軟弱者め」

「うるせえ」


そんな風に他愛もない話を重ねていく。

これからもそんな風にこの4人ですごせると思ってた。

少なくとも俺と結菜はそう思っていた。


ドッキリは成功したけど暴風雨でそんなことが関係ないくらいに濡れてしまったのはまた別のお話。


***


そんなドッキリを敢行してから一月。

俺はまた東北へ戻っていた。

あいもかわらず大学でできた友人とだらだら遊び、

日付が変わる前に寝る生活を繰り返し帰省していたときの生活習慣を、

がんばって治しきったそんなある日の深夜。

結菜から電話があった。


「……私、隆が好き」

「えっと……、うん」

「隆治は誰とでもうまく付き合ってそれなりに幸せになれるだろうけど私には隆しかいないから……」

「そんなことは……」

「そんなことある。これまでいろいろな人と付き合ってきたけど、

 一番安らぐのは隆といたときだったから。結婚するのは隆とがいいから……あはは。

 なんかおかしいね。まだ付き合ってすら居ないのに結婚なんて……」

「俺も、さ……しっかりと感じたのはつい最近、それこそこの前だったけど

 ずっとまえからなんとなくはあったんだよね。会うたびにほっとしてたんだ。

 何に対してほっとしてたのかわかんなかったけど、今ならわかるわ。

 素のままでいられたからなんだなって。結菜の言うとおり俺は、

 自分でも誰とでもいい感じに付き合っていい感じに結婚できて、

 いい感じに老後まで迎えられると思う。ひどい話誰でもいいっちゃ誰でもいい。

 でも、今は結菜がいいって思ってる。告白されたからじゃないよ?

 されなかったら12月にするつもりだったし」

「隆一つ訂正」

「え?」

「隆は誰でもよくないよ」

「え?いや、誰でもいいけど……」

「可愛い子か美人じゃないと駄目でしょ」

「……ああ、うん。そりゃ駄目だわ」

「ふふっ。そっかぁ……焦らなくても良かったんだ……」

「なんでこのタイミング?」

「誰かに取られたくなかった。だって隆モテるんだよ?」

「俺が? おいおい下手な慰めは一番人を傷つけるんだぞ?」

「年上にモテるじゃん」

「あー……えっと……」

「同年代にモテないってのは多分パッと見でわかるようなかっこよさじゃなくって、

 ずっと付き合ってたり、色々な経験した人からしかわからないようなかっこよさなんだよ。

 私がたくさん経験したとは言わないけど」

「いや、お前さんはいろいろな目にあってきてるよ」

「ありがと。だから、たぶんねそういう、『大人』ってのにしか伝わらない良さが隆にはあるんだよ。

 だからそんな大人な女性に取られたくなかった。だからその……」

「泣いてまでしたのね」

「うん。いやそうだけど違くて。えっと焦ってしちゃったというか」

「でも、嬉しかった。俺告白したことはあってもされたことは多分無いから」

「はぁ……なんかやっとすっきりした!」

「おつかれさま?」

「うん!」

「じゃあ、おやすみ」

「はーい。大好きだよ隆くん」

「えっと……」

「あはは。照れてるー」

「寝ます」



……別に嘘はついていない。

可愛い子や美人にされた記憶はない。

丸かったりどこかぶっ飛んでる奴らからはやられた記憶はあれども。

初めて告白されて舞い上がっていた。

久しぶりに恋人という存在、ステータスが自分に付け加えられたことに舞い上がっていたのだ。

愚かにも学習していないことを僕は理解していなかった。

俺は忘れていたのだ。あの無敵感がまやかしだったということを。

焼肉をいくらでも食べられると思っているあの無敵感と等しい、

別れるわけがないという根拠のない自信がまた鎌首をもたげていたのだ。

今度こそは大丈夫。

二人が努力していれば問題はない。

お互いが気をつけていれば。

遠距離だからことさら細心の注意を払えば。

払えてさえいれば………。

次話、最終話です。一応の終わりです。

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