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裏切りは告白のあとで。  作者: 愚者
5/7

君が幸せなら俺はそれでいい。

いやあ冬も深まりめっきり寒くなってきましたね。

実は僕、雪が好きなんですよ。

いろんなことを覆い隠してくれて綺麗にしてくれる。

見えなくさせてくれる、そんな雪が好きなんですよね。

だから雪国が好きです。

「ちっとばかし手間がかかるぜ、こんちくしょう」


親友と決別をし、次は彼女の家へ。


『裏切りは告白のあとで』


Chapter2-2:君が幸せなら俺はそれでいい。


あの関係性を失わないように結菜は努力した。

俺は失われるならそれまでの間柄だったとし諦めていた。

この世界は努力したものの方が報われることの多い世界らしい。

珍しく世界は彼女に対して優しかった。

今にして思えば、そんなことはなく。

一度上げて思い切り落とす。

世界はそんな風にどこまでも彼女に対して厳しかった。

つまるところ、これは見せかけの優しさであったのだ。


「よっ!」

「おう。ひさしぶり」


はるか遠方の友人との久しぶりにあったにしては簡単なものであった。

ま、そんなものだよね。

今の御時世は通信手段が多々あるからね。

遠くてもまるで目の前に存在するかのように錯覚してしまえる。

まあ、それでも。俺は遠距離恋愛は嫌いなんだけれども。

嫌いというかしたくない。

それた。


おやおや。


「あーものすんごく言いづらいんだけど、太っあだっ?!」

「筋肉ですーこれは筋肉ですー。……太ったかな?」

「や、がっちりしたっていうんじゃないかな」

「うん……」

「悪かったってば」


思ってた以上にあの頃と変わりなく。

なんて皮肉まじりに、安堵した。

どうやら進学先で新しい彼氏とまた幸せになってるそうだ。

幸せ太りとか羨ましぜこんちくしょうめ。

だが、好きなんだと自覚した。自覚できた。

なんとなく、高校時代からあったしこりがなにかわかったような気がした。

ああ、恋心だったんだなって。

気づいた瞬間に、目の前が一瞬。ほんの一瞬だけ視界がぼやけた。

振った女の子に対して誠実ではなかったと気づいてしまったから。


「ん?どしたー?」

「んにゃ。ゴミが目に入っただけだ気にすんな」


そして、同時にこの恋は実らないとも。届かない恋だということもわかってしまった。

だからせめてそんな惨めな俺にできるのは結菜が幸せになることを祈るだけだ。

君が幸せなら俺はそれでいい。

たとえその幸せなキミのとなりが俺以外の誰であったとしても。

俺は祝福する。

そう、おもった。

そう、おもっていた。

***


「隆ぅ。ふられたぁ」

「あー。えっと。そのなんていうか。ご愁傷様」

「ぅぅ」

「……」

「恋愛ってなんだろうね、隆治」

「……ごめん俺がはなすと小難しくなる」

「あははは。だよね知ってた」

「……」


進学先のやつと別れたらしい。理由は高校の時の焼きまし。

周りの女性の言葉を信じやすい男を彼氏としてしまった。

ただそれだけの事だった。

ただ。それを何度も隣で見ていた俺はとてもつらかった。

また別れてしまったのか、また選ばれなかったのかと。

じゃあ、俺が幸せにしてあげればいい。

そんな考えに至るのは至極当然ではあるが、遠距離が無理。

という俺の身勝手な理由によりその案は却下された。

しかし。

失ったものを、空白を埋めるかのように今まで以上に親密につきあうことになった。

代替であってもそれでいいなら、俺はそれでよかった。

よかったのだ。結菜が幸せそうならそれだけでよかったのだ。


***


「年越しそば?」

「ああ。食ったこと無いの?」

「うん。最近はないね」

「そっか。食べたい?」

「作ってくれるの?」

「あ、前提なのね。うん、わかってた。結菜は嫌いな食べ物ある?」

「そばの具ならないよー」

「はいよ」


その年の末。結菜とその母親と俺の3人で年を越した。

これ、普通はエンディングに入ると思うよね。

ところがぎっちょん現実は非情である。

年を越してすぐに。


「私、もう恋なんてしないって言ったんだけどさ。ホントは、まだしてたんだ。

 誰にも気付かれないように。隆治にはさ、私に付き合ってくれてたから

 話しておかないとって思って」

「まず、おめでとう。 そして話してくれてありがとう。

 楽しかったよってのが良い返し方なのかね?」

「違うと思う。だって付き合ってなかったし」

「彼氏の居ないお前さんと遊ぶのが楽しかったってことさ」

「いてもいなくても……」

「そーね。変わらないよ。ただ久しぶり、ヘタしたら初めてだったから」

「そうかな」

「ああ」

「うん」

「おめでとう」

「ありがとう。これからも」

「何言ってんだお前さん。5年も経ってんだ。今更さ」

「うん……」

「のらりくらりと過ごすさ」

「ありがと」

「どういたしまして」

「お幸せに」

「ありがとう」

「披露宴は呼んでくれよ」

「もちろん」


そう。そんなアニメや漫画みたく、簡単にルート確定になるわけがない。

知ってはいたんだ。楽しかったから。

見ないふりをしていたのさ。

彼氏がいるのに遊ぶってのはとても後ろめたくて、辛かったんだよ。

君が楽しそうだから口に出さないように気をつけてた。黙ってたんだよ。

誰にも気付かれないようにっていうけど、5年も隣で駆けずり回ってりゃ何となく分かるってもんさ。

多分お前さんの母親も気づいてたんじゃないかな。

だからあの時彼女の母親は釘をさしたのだ。俺を傷つけるのはやめてねと。

そういったんだ。そう話してたんだよ。

つまるところ、やはり俺は彼女の幸せを遠いところから願うしか無かったのだ。

次も来週、金曜日、正午です。

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