表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切りは告白のあとで。  作者: 愚者
3/7

つかの間の見せかけの平和

予約投稿という存在を忘れていた私を許してくれ。

「なに話せばええんやろ」


なにを、というかどんな順番でどのように話せばいいのか。

このクソ長い道のりがほんの少しだけありがたく思える。

が、やっぱりさっさと終わらしたいからありがたくはない。


『裏切りは告白のあとで』




Chapter1-3:つかの間の見せかけの平和


季節は夏。

演劇部も大会へ向けてそろそろ本稽古を行い始めた7月。

とか正直覚えてねえや。

学習合宿のスピーチで、

「大学は過程である。ゴールは死んだときだ。だから大学進学で失敗しても僕は後悔しません」

とのたまったくらいしか覚えてねえ。なんで俺参加してたんだっけ。

あ、おっけおっけ。強制だったんだよなアレ。ナメクジ喰らえ!

そりゃナメクジ喰らえと叫びたくなるよ。

なんせ終わって次の日が舞台本番。俺初舞台こんな流れででたの?

結論から述べるならば。

無理でした。無理っていうか台詞とちってました。

覚えてねえよりも忘れたってのがデカイ。

おかげさまで俺は文化祭り後の次の舞台に立つのを一年見送ることになる。

さて。まあそんなこんなで大会も無事じゃないけど終わり。

2学期。結菜が部活をやめた。

理由は家庭の事情と身体的問題。

からだよわかったからねー。仕方ないね。

ただ、寂しかった。負けちゃったのかな、って悲しかった。

当意即妙な掛け合いができる気兼ねなく付き合える友人という立場に居た彼女と、

理由もなく話せる部室は素晴らしかったと失ってから気づくのは、当たり前で。

話すための理由を作りに、出会うための理由を作りにわけもなく図書館へ入り浸り。

本を漁った。まあ読書をすることが好きで通っていたから別になにも問題はなかった。

そうなかった。なさすぎたのだ。


「あ、これがええと、ばけ、もの、がた、り?」

「まだ読んでないの?!」

「え。あ、うん。ごめん。今から借りて読むわ」

「え?今から!?」

「うん。結菜さんの勉強見るついでに読む」

「なるほどね。ところで演劇部はどう?」

「相も変わらずだよ。結菜さんが辞める前と何も変わらない」

「そっかー……」

「ああ。そうなんですよっと」


阿良々木くんすげえ変態だなぁ。委員長のショーツの柄憶えてやがらぁ。

とかなんとか。言葉遊び楽しーとかだったかな正直ドハマリして一気読みしたから、

その時の感想をあまりおぼえてない。


「あれ、なんでさんつけるの?」

「あのね。俺は彼女でもないやつを呼び捨てるなんて年がかなり離れてないと出来ないの」

「そうなの?」

「そうなんです。部活の規則だから守ってたけど、お前さんはもう違うだろ」

「そう、だよね」

「あー、や、そういう意味じゃなくてね?」

「大丈夫大丈夫!わかってるってー!」

「あの、ここ図書館。おーけー?」

「おーけー」


結菜と話すときはもう一人称は俺が固定されていた。

もう偽る必要はないからね。

それに部活仲間でもない。

学校の図書館で勉強会をしながら彼女が抜けた後の部活についてや、

彼女の今の彼氏についての話に花を咲かせる。


「今は中学の時の子とねー」

「へぇ。ああ、そこはそうじゃなくてこうね」

「え?マジ?」

「まじよー」


しかし勉強会というか、彼女ための特別補講なのは言うまでもない。

ここらへんでこれから数年に渡る彼女の呼び方が固定された。

この頃は一番平穏で、平和で。

たとえ見せかけであっても幸せだったといえる時間が確かに流れていた。

そう思っていたのは俺だけ、だったのかもしれないが。

まあ他者と自分との認識の齟齬は当たり前に存在するし、

0には出来ないものだ。


「隆ー。私さ同好会立ち上げたいんだ」

「へー。どんな?」

「声優を研究する会、略して声研!」

「だからここ図書館」

「うぃっす。さーせん」

「よろしい。それで?」

「んとね、人でが欲しい。できるだけ兼部してないと嬉しいな」

「帰宅部ね。うん、わかった」

「それと、その、できればなんだけど」

「ん?」

「隆にもはいってほしいかなあ、なんて」

「あー……」

「いや、ほらその、無理にとは言わないんだけど……」

「経験者が欲しいんでしょ」

「うん。男の子でボイトレ慣れしてる人が欲しくって」

「演劇的発声と声優的発声は違うんだけど、まあ、ええか。わかった」

「ほんと?!」

「だから、ここ図書館」

「はい」

「はい」


いつしか図書館は俺と彼女の会談場所になっていた。

校舎が違うからね……。行き来するのが面倒くさいってのもある。

6月の出来事が分かれ道ならここもある意味大きな分岐点ではある。

帰宅部を探せ。

その注文に応えられる友人はお生憎と1人しか居なかった。

布村弥生

男の子である。娘ではなくおっさんに近い男の子である。

ゲーセン狂いで俺と真反対は趣味嗜好性格。

真反対と行っても喧嘩をするのではなくお互いに認めあっていた。

ある種の尊敬が彼との間には存在していた。


「ヌノムラ、ヤヨイ。あれ?隆?私なんて言ったっけ?」


その反応が見たかった!


「こちらが現物です」

「男ォ?!」

「あ?男で何が悪いんじゃ。悪かったな女の子みたいな名前で」


まあなんていうか。頭の中お花畑な俺はこの二人は仲良くなるでしょ。

なんて思ってました。

仲良くなるまでに紆余曲折あってその後も紆余曲折を経ることになろうとは。

ま、想像できませんでしたよねぇ。

誤字訂正11/2513:40

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ