表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

猿の化獣(妹編)

 僕の妹が巨大な猿の化獣に四肢を捥ぎ取られるのが見える。

 捥ぎ取られた場所から、血がシャワーのようにその猿に降り注ぐ。


 猿は妹の体についた、血を舐めとっていく。


 いやらしそうに、舌がデロンと出て、僕の妹の白く美しい、薄氷のような肌についた、真っ赤な血飛沫を舐めとっていく。

 だが吹き出る血に埒が明かないと思ったのが、猿は四肢が捥ぎ取られた傷跡から吹き出た血のシャワーをまるで高級品のワインを飲むかのように、味を確かめ、表情を緩め、旨そうに美味そうに、飲み進めていく。


 喉がゴクリ、ゴクリ、と動くのが僕からよく見える。


 その後手に持っている、体から解離した腕・足を極上のステーキでも食べるように、血まみれになった猿がゆっくりゆっくり咀嚼していく。


 「ゴキュゴキュ」っとこの世の物とは思えない音が辺りに響き渡る。

 

 耳を覆いたくなるし、目を閉じたくなるが、僕の体はそれを許してはくれない。

 

 ゴリゴリと妹の体の一部が肉片になり、猿の体内へと取り込まれていく。


 僕のあの妹がだ。


 正直に言って僕の妹は、兄の贔屓目抜きにしても可愛い部類に入るだろう。

 その妹が体中を、吹き出る赤黒い血で染めている。


 四肢はもうない。ただの肉の塊が無残に落ちているだけだ。

 毎朝セットしていた、あのちょっと特徴のあるクセっ毛は無残に引きちぎられ辺りに投げ捨てられている。


 だがもうあれは、妹と呼べる生命物ではなくなっている。

 

 しかし僕はそんな場面でも、


妹の裸を見たのは何年ぶりだろうか。


 と、全く無意味で無神経で性的なことを考えてしまった。

 それほど、目の前で起こっていることは、現実離れし、僕の頭のキャパシティーをゆうに超えていった。


 猿の化獣が、僕に気付く。

 

 いやずっと前から気づいていたのかもしれないが、やっとここにきて僕の方を見てくる。

 

 僕と目が合ったその化獣は、一度元妹だった物体に目を向け、その後僕に向かって、いやらしさや、嘲さなどを一緒くたにしたような性的な笑顔を僕に見せた。


 その笑顔になぜか僕は、毎朝見せる妹の笑顔が重なって見えた。


 次の瞬間、化獣は僕の前に一瞬で移動してきた。


 まばたきはしていないはずだ。


 ずっと、あの化獣を見ていたはずだ。


 あの笑顔から目が離せなかったはずだ。


 あの笑顔は一体なんだったんだ。


 そんなことを考えても答えは出るはずなく、ただ化獣が僕の目の前に現れたことだけが、現実として、ここにあるだけだった。


 化獣の吐息が聞こえる。

 

 吐息はただただ、血と獣の臭いがした。

 しかしその気分が悪くなることしか起こらないであろう臭いの中、微かに妹が使っていたシャンプーの匂いが混じっている。

 その匂いがこの化獣が存在し、妹を食べたことをリアルに表している。



 化獣の目が、僕をくまなく舐めずり回すように動く。

 僕の体全身が、化獣の目に映った時に、化獣は止まった。

 

 僕は化獣の目から目を離すことが出来ない。


 化獣の瞳にこぢんまりと映っている僕を、僕は見つめた。


 と、化獣はさっきと同じように、世界全部を嘲り、小バカにし、己が全知全能であるかのような、不気味に、いやらしく声を発てて嗤った。


 化獣の声は、初めて聴く。

 声も世界中を小バカにし、己をまるで神として自分自身で奉っているようだった。

 


 僕はまだ猿の化獣に映る、僕から目をそらすことが出来なかった。


 さっきより、瞳に映る僕の姿は大きくなっている。


 そして、化獣の瞳に映る僕は、化獣のように、世の中全てを嘲るような笑みを浮かべ、気づくと大声をで嗤っていた。


感想お待ちしております!

お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ