宣戦布告
ほろ酔いの恵梨香さん達に明るく見送られ、真由は黙って道東さんと夜道を歩いていた。
深刻な顔をして思い悩む真由をそばに道東さんはニコニコと上機嫌だ。ちらりと道東さんを見るが、真由はそのご機嫌の理由がわからなかった。
合コンの時、真由はひたすら目立たないよつに努力してきたはず。それに、真由は高校生だ。本当は大人の合コンに来てはいけないのだ。だからこそ喋らず、適当に話を流し、大人の振りをしてきた。なのに、何故。
とりあえず、道東さんも駅までという事で送ってくれているもののもんもんとした心の中はなかなか晴れてくれない。
この微妙な雰囲気をどうするか。
傍から見れば、このテンションの差が激しすぎてカップルにも見えないだろう。
そんな時だった。
「真由さん、もう一軒どう?」
「…い、いえ。持ち合わせがありませんし」
「大丈夫だよ、俺のおごり」
「いえいえいえ!とんでもない!ていうか、帰らせて!?」
突然の本音発言で道東さんは驚いたのか目を見開いた。が、すぐに笑顔になった。
「…なにか、事情があるの?」
「……へ…?」
「お酒、飲めなかったのもその事情のせい?」
「な、なんのこと…?」
真由は確信した。真由が未成年で、歳を偽っていることがバレたんだと。
「西島さん。失礼ですが、お幾つ?」
確信を持った道東さんの言葉に真由は負けた。
「……と言うことです…申し訳けありませんでした。」
深々と頭を下げる真由は心の中で諦めがほとんど占めていた。嘘をつくはめになったところから洗いざらいすべてを話したのだ。
「……そんなことが…ふー…ん。」
道東さんは改めて真由を見る。
「まぁ、見えなくもないしな…。実は初め、本当に社会人だと思ってたんだ。気づいたのが、お酒を頼まなかった時だね。」
「え、えぇ?そんなに早くから…?じゃあ、他の人にばれてる…?」
「いいや、あいらは気づいてないよ。確か、泣きぼくろある人にベタボレだったからね、あれは。」
「恵梨香さん、美人だもんねー」
嘘をつかなくなった真由はすでに素をさらけ出していた。
そして、「保護者同伴ならいいよね」という事でもう一軒行くことになった。
メイクのおかげで高校生である事がバレずすんなり入ることが出来たのだ。
明るい居酒屋さんだ。真由はソフトドリンクをまた頼む。
それから、真由はなんとなく初めてではないような気もするからか、道東さんの隣で学校生活の事だったり、友達の愚痴だったり、とにかく話した。それを道東さんは楽しそうに話を聞く。しまいには、「もっと話して」と急かされる。
しかしそんな道東さんに真由が気にならない理由がなかった。
「あの、どうして私にこんなにもよくしてくれるんですか。」
話が一段落すると気になっていたことを聞く。
すると道東さんは少し悩み、口を開いた。
「一目惚れって信じる?」
「………ほぇ…?」
予想外の言葉に真由は固まった。
「で、でも!私高校生だし!」
「年齢って関係無くない?」
…一度、姉が9歳年上の彼氏と付き合っていた。彼が大人で、今まで1番長かった。けど、少し離れ気味の年齢のせいかそれぞれの考えが食い違い別れることとなった。
彼は、結婚して家庭をすぐに持ちたくて、姉は、もう少し結婚はしてくないという意見だ。そのころの姉は22。やっと内定が決まったところでしばらくは仕事に専念したかったらしい。
ふざけた姉にしてはまともな恋愛だった、と真由から見ても思った。
そして、道東さんも成人をとっくに過ぎた27。それに加えて、真由は17の、高校三年。10も離れた自分たちがうまくいくのだろうか、と真由はそれだけが気がかりなのだ。
彼はもう結婚を考えていい時期だ。一応、結婚できる真由でもまだ結婚は邪魔なものだった。
「道東さんには、もっとふさわしい人がいるよ。」
視線を落とし、グラスに垂れる水滴をみつめた。
確かに、道東さんは魅力的な人だ。
「それは、宣戦布告と見てもいいのかな?」
「………なんで?」
あの言葉からどうして宣戦布告となって変わるんだろうか。少しばかり道東さんの思考回路を疑った。
「言っただろ?一目惚れって。俺は西島さんより長く生きている分、経験豊富だよ?」
そして、道東さんは自分のスマホを取り出す。
「まずは連絡先、教えてよ」
年の差カップルが誕生…!まではいきませんでしたが、一目惚れした道東がアタックをかけるまでのお話でした!
これから彼はどんなアタックを仕掛けるのかは読者様のご想像にお任せします。
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