第二十一話
わりと超展開です
あれよあれよというまに1週が過ぎようとしていた、警察はまったく手がかりをつかめないでいるようだったが、似たような事例が他にもあったことは確認できたらしい、さすがにそれ以上のことは捜査担当外には教えてくれないとのことで、母さんも何とかその事例をつかめないか探ってみるとのことだった。
父さんのほうはまったく何もつかめずにいて、憔悴しているのが判る。
何らかの魔法関連の事件だと判っている私が、普通の方法じゃ何も出てこないと教えてあげられればいいのだけど・・・。
探索用魔石の準備はやっと完了し、月の出を待って術に入る用意を整えた。
そしてゆっくりと月が昇ってくる。
前世では月は鳥だったり竜だったりと円くはなかったけれど、魔術の目標として利用するすべが考えられていた、そんな術の一つがいまから儀式を行おうとしている、広域追跡探索だ。
月の下の範囲内だけ1つの事柄に関連する「つながり」を追跡してくれる。
設定する1つの事柄は、PC前に残っていた魔力の残滓。
次元の壁はそうそう簡単に破れるものではない、この場から移動せずに消えたように見えているが、壁を破りやすい場所を経由しているはず、そこを見つけ出せればもしかしたら・・・
そして、術が完成する、脳裏に浮かぶ街の明かり。
そして、このときまでなぜそのことを考えなかったのか、いや、考えたくなかったのだと思うけれど。
追跡の魔術は聖翔高校を示していた、つまり里香はターミッドに召還されたと考えるのが妥当だ。
いや・・・もうごまかしても仕方が無いだろう。
『あれ』で見ていた勇者は里香、この前の妖怪に食われたため、いつもの私のように髪は不ぞろいになっていた、そして今の私は後ろ髪を結ぶこともできない。
なぜ理麻と名乗っていたのか疑問は残るが・・・
「でもどうやって追いかければいいのよ・・・」
あのゲートを壊してしまったことがいまさらながら後悔される。
追跡の術はさらに学校の中へと進み、どこにたどり着くかと思えば。
「サーバールーム?」
あの、一番奥で一番最初に起動していた、あの機械だった。
「どういうこと?」
トーコが一昨日あたりに言っていたことがあった。
「これが小説とかならゲームの世界に呼ばれて大冒険なんだけど」
追跡はそこで止まって動かない、ここから壁を越えたことは間違いないだろう。
そして夜が開け、学校を早退して今私はKESの前に来ている、住所はそのままKシステム内となっていたのでビルのエントランスまでは来たものの、セキュリティの前でうろうろしていたらここまでつれて来られた。
ここまでの経緯を話すと・・・。
朝、登校して何とか昨日の機械から情報が引き出せないかと部屋の前まで来たものの、しっかり鍵がかかっているだけでなく、人がずっとそこから動かないでいるため手が出せない状態だった。
ずっと部屋に詰めているのはKシステムの人だということなので、HRの後に大垣先生に断って早退、何か解決の糸口になることはないかと、Kシステムのビルのエントランスまで足を運んだものの、そろいの制服だとかバッチだとかは見つからなかった。
そうこうしているうちに、一人の男性がその制服は・・・と言って声をかけてきて、その人の名札が「大垣」となっていたためつい「大垣先生のだんなさん?」と聞いてしまい、「ああ、きみは水沢さんか」
と、なぜか個人情報がモロにばれていて、ちょっとこっちへと呼ばれて今に至る。
我ながら、後半あたりの流れがどうにも唐突で良くわからない。
「やぁ、お会いしたいと思っていたんですよ」
と、その40代くらいの男性は言う。
名刺には大垣健人となっている、色々肩書きがついているがどうもけっこう偉い人らしい。
「単刀直入に言って、妹さんの件ですね」
いま、なんと言った?
驚きの顔を隠せずにいると。
「実のところ私たちもこれを事故や事件とするわけにもいかず困っているんです」
「というと?」
「ざっとお話しますと、あなたの学校に置かせて頂いたサーバー、あれが重ね合わせの魔術にかかり異世界の扉となってしまった、そして、あなたの妹さんを含め3名があの中に囚われています」
「魔術って、あなたはそれを信じているんですか?」
「信じていますよ、ついでに言うと異世界の存在も、私が原案を出したゲームのモデルは実在の異世界、私が体験した物語がモチーフなんですから」
「あなたが体験した?、まさか100年前の勇者?、でも生きているわけが・・・」
「答えは5倍の時間差、20年前あの学校から旅立った私は異世界で2ヶ月を過ごし、こちらの世界では2週間ほどで帰って来ました」
「里香は妹はもう1ヶ月も向こうにいるってことですか、そもそもなんで里香が」
「・・・それは今回のアップデートの目玉とバグ、不幸な偶然によるものです」
「それは?」
「まず目玉は勇者システム、3人のユーザーを期間限定で勇者としてゲーム内でのクエストに当たっていただき、これのクリア率でゲームの進行を決めるというものでした」
「そしてバグ、ログアウトの際にカウントダウン表示がされないというバグが当初発生していました、ゲーム的にはログアウトボタンを押して30秒まったく動かなければログアウトできるのですが、現実に置き換えてみるとまったく動かずに30秒待ち続けるのは難しい」
「最後に不幸な偶然、異世界のほうターミッドから召還という干渉がありました、通常はあの学校の敷地内にしか、それも限られた範囲にしか召還の範囲にならない、ですが先程も申し上げたとおり重ね合わせの魔術が偶然にも起こってしまった、キーワードは勇者、召還、世界」
「そんなことが・・・」
説明されても、信じ切れない、そういえばどうして私を待っていたんだろう。
「どうして私に会いたかったんです?」
「とある、御仁の推薦があってね」
なんだか嫌そうな顔をしながら、そんなことを言った。
「いったい誰が」
「そのうち紹介しましょう、向こうが会う気があればだけど」
「・・・・・・」
「さて、それじゃあ向こうに渡る手順ですが」
「行けるの!?」
「とある御仁に解析してもらって、向こうからの召還に頼らずこちらから送り込む手順ができています」
「あ、とある御仁ってこっちの魔法使い?」
「そんなところです」
でも、送り込む手順ができてるなら、元勇者はなぜ解決に動かない?、そのとある御仁も?
「なんで・・・」
「・・・私が行かないのか、ですね?」
全て言い終えるより先に、大垣さんは後を引き継いで言った。
「ゲームを使ってログインする形を取りますが、新規の登録でないとすでに向こうの世界にいるとみなされてしまうらしく、うまくいかないのです」
「とある御仁のほうは・・・別の理由で向こうへは絶対に行けないそうなので」
なんだか、急に話が進み始めたので戸惑うことも多いけど、とにかくも里香を追いかける手段ができた。
そのまま、PCの前に座らされて登録をしてゆく。
そして最後に。
キャラの名前を入力して下さい・・・
名前は・・・RIMA
エラー、すでに登録されています。
「ああ、妹さんがその名前で登録しているんだね、住民番号でも管理しているから滅多に名前がかぶることはないんだけど」
「そういうことか・・・」
なにかが、いろいろとつながってきた。
「でも、本名でしょそれ、こういう場合に言うべきか悩むけど、あまりお勧めはしないですよ」
キャラの名前を入力して下さい・・・
名前は・・・MEISA
登録されました。
前世の本名というか真名だけど登録できてしまったし。
ちなみにペンネームとして文集でも使った名前だった。
「それじゃあ、ログインボタンを」
言われたとおりにクリックする。
すると、目の前の空中に窓のようなものが表示された。
と、同時に周りの景色がゆっくりと暗くなって消えてゆく。
窓のようなものをよく見ると、ステータスとなっている。
マウスがなくなってしまったけど指でポチポチ押せるようだ、最小化してアイコン状態で置いておく。
真っ暗になった景色が徐々に明るくなってゆく。
さっきとは違う景色、どうやら草むらの中らしい。
完全に明るさを取り戻し、現実となった世界は空に浮かぶ太陽の蜘蛛を見ればターミッドだと判る。
「あら、こんなところで奇遇ですわね?」
いきなり声をかけられて振り向けば。
「暁先輩?」
「ごきげんよう、理麻さん」




