第十三話
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薄暗い大廊下をまっすぐに通り抜けると、大扉で突き当たりとなった普通であれば謁見の間となるだろう。
最低でも天剣ルーサと合間見えると予想していたが、ここまで小競り合い程度の魔軍兵との戦闘しか行っていない。
罠か、魔王自身の実力に自信があるのか。
実際のところ、魔王とは黒の月の勇者といえる存在、勇者だからと油断のできる相手ではない。
この世界の空には太陽と3つの古月、1つの新月がめぐっている。
太陽と古月にはそれぞれに神が宿るとされ、神具を地上に残している。
世界に伝わる3つの神具は、通常ならば神の前にひれ伏すだけの存在に過ぎない人間を、神と同等の存在と認めさせるというもので、蜘蛛を化身とする太陽神の加護を受けた『天網の盾』、魔狼を化身とする蒼月神の加護を受けた『賦活の身鎧』、霊鳥を化身とする銀月神の加護を受けた『断光の閃剣』の3つを差す。
そして伝えられていない神具が古月の1つ黒月の神の加護を受けた『真闇の外套』、牙魚を化身とする黒月神はこれを現出した魔王に与えることで、地上の覇権を狙っているという。
それぞれの神具を得る試練はこの世界の人間では英雄と呼ばれるような者でなければ、到底抜けられるようなものではなく、その存在を疑問視する者が出てくるほど歴史には登場しなかった。
そんな神具が今より以前に姿を現したのは100年程前、当時も魔王の現出が起こり、世の中は大混乱となっていた、そのうえ竜を化身とする赤月神がふらりと空に現れ新月と呼ばれるようになり、敵か味方か判らぬこともあって混乱に拍車をかけた。
そんな時に異界から勇者を召還する魔法が編み出され実行に移されたのは、藁にもすがるような心もちだったのだろう。
果たして勇者は召還され3つの神具をすべて手にし、魔王を打ち倒したという。
一説には赤の月こそ、折り良く召還された勇者を守護する月なのだとも言われているが、何よりも重要なことは異世界の勇者は神の試練を簡単に突破できるということが、100年前に判明した事実だ。
今回は最後まで勇者の力に頼るのではなく、3人の勇者それぞれに一つずつ試練を突破してもらい、神具を譲り受け、この世界の人間の手で魔王を倒そうという計画だった。
その神具を渡すはずだった者が裏切り者だったとは、計画を立てたクレリア姫も思いもよらなかっただろう、ましてや自身を誘拐し魔王城に幽閉するなどとは。
「勇者よ、準備はいいかい」
「大丈夫よ、行きましょう」
勇者は大扉を押し開けた。
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これは『あれ』だ、特に何度も見ているもので、私の前世の最後の戦いだということを知っている。
このあと、順調に魔王と対決するものの・・・ここがはっきりしないのだけど、何か衝撃的なことがあって勇者をかばって、私は倒れた。
前世の私が感じていた罠か実力かという疑問に関しては、実力に裏打ちされた罠だったというところだろう、まんまと引っかかったわけだ。
でも近い未来に、私は私の仇を討てる。
戦闘自体はこちらが少々の余裕を持って押していたと思う。
前世の私を失ったことで動揺して仕損じたりしないように、少しでも鍛えておくことにしよう。
先月の一件は家族にも迷惑をかけてしまった、結局私はあのまま丸1日意識を取り戻さず病院行き、プラス1日ほど衰弱状態でベットに釘付けにされた。
里香は特に責任を感じて学校を休んで退院するまで付きっ切りだった。
警察には変質者に襲われ精神的にひどくストレスを感じて、辛くもこれを撃退し安心して気が緩んだところで意識を失い、前後の記憶はあいまいということになっている。
里香は変質者なんかいない、ということが判っているけどうまく話をあわせてくれた。
今回のことがなくても里香にはいつか魔法のことを話さないといけないかなとは思っていたのだけど、里香もなにかあるとは疑っているみたいだし。
でもそうすると昔のあれこれもばれるかもしれない、それは避けたいんだけどねぇ。
季節はすっかり夏、8月はまるまる夏休みではあるけど、2つ掛け持つことになった部活で去年より格段に忙しい。
薙刀のほうは里香も一緒ということもあってものすごく心配されながらの稽古になってしまっている、結構筋がいいと暁先輩に言われているし、そろそろ実戦的な激しい稽古もしたいところなんだけどね。
文芸部はなし崩しに私が部長に就任することになり、文集を夏休み明けに開催される文化祭で発表するべく編集作業中、印刷に詳しいということで春奈を巻き込んだけど8月の前半は一切協力できないそうだ。
今日はそんな中でも文芸部の編集会議で朝から登校することになった、これから日差しは暑くなりそうではあるが、まだ朝の空気はどこからか涼しさを感じることもできる。
汗だくにならないようにゆっくりと走らせてきた自転車を自転車置き場に入れて玄関口へと入る。
玄関脇に車が入ってきていて、後部ハッチからいくつもの箱を下ろしている、箱をおろしてる人は背広にネクタイとさすがに暑そうな格好だった。
何かの納品なんだろうけど、けっこうな量だしこの人一人で運び込むつもりなんだろうか。
と、思っていたら駐車場のほうから3人ほど人が来て「部長もうこんなおろしたんですか」とか「待っててくれればうちら下っ端がやったのに」とか言っている。
珍しい光景だけど、あんまり見ていても失礼かと思うので教室に行くことにしよう。
夏休み前に申請書をまとめて発足した文芸部は、とりあえず私の教室で活動することになっている、それというのも部活の発起人と顧問がいる教室ということで決まった。
大垣先生が顧問になってくれた経緯はというと、復活だという高槻先輩の言葉から図書室を調べた結果、昔の文芸部の作成した文集が出てきてその中の編集者に大垣早苗の名前があったからだ。
確かにうちの学校の出身者だと言っていたし、先生に聞いてみたところ間違いなく本人だという、そこで顧問をお願いしたところ快く引き受けてくれた次第。
まぁ来年も存続できるようであれば、ちゃんと教室を用意してくれるそうだ。
「おはようございます」人の気配がするので言いながら教室に入る。
すでに何人か教室には部員が集まっていた、おちつかなそうにしているのは別の教室から来ているからだろう。
高槻先輩が同好会時代に集めた部員は3年生7名、2年生4名、1年生2名の計13名だったが、幽霊部員だったりしていた数名も含んでいたため、改めて声をかけたところ正式部員として登録されたのは、3年生3名、2年生3名、1年生2名、発足後の勧誘で2年生1名(春奈)、1年生2名を確保できた。
漫研所属の春奈がいることからもわかるとおり、掛け持ちの部員も多い、進捗に遅れが出ることも予想がつくので、今日は文集に載せる原稿の出来具合や製本に当たってのスケジュールなどの確認を煮詰めるためにきている。
今の時点で来ていたのは、3年は高槻先輩1人、2年は別のクラスの2人、1年は1人だけ。
家の位置は私が一番近いはずなんだけど、みんな早いねぇ。
「今日集まるのは何人ですか?」
1年生が声をかけてきた、1年は1人だけだし2年の教室は落ち着かないのだろう。
「杉浦先輩が来るのと、2年はあと春奈・・・じゃなかった三崎さんは忙しくてこれないからこれで全員、1年は鈴木さんと木島君がくるって言ってたね」
「そうですか」
とか何とか言っていると、1年の2人が入ってきた。
「おはよっす、先輩」
「おはようございます」
「っせーぞ木島」
最初からいた1年生、長澤君は木島君と仲が良いらしいね、そういえばこの2人は発足後の部員だった。
がらっ、と後ろの扉を開けて無言で杉浦先輩が入ってきた、この先輩はほとんど声を発しない。
とにかくこれで今日、集まるといっていたメンバーは全てそろったことになる。
「それじゃ、編集会議始めましょうか」




