殺人者の憂鬱
・・・小鳥が、やけにうるさい
陽の光が激しく照らす・・・
・・・俺は酔いつぶれて寝てしまったことを今自覚した
「もう、朝か・・・」
誰も居ない部屋にそう呟いて、俺は身体を伸ばした。
ソファの上で寝ていたので、かなり身体がだるい
俺は、今日のニュースを見るため、テレビをつけた
ばっちりメイクを決めた女子アナウンサーが深刻な顔を作って原稿を読んでいる
「では、続いてのニュースです。今日未明、××市在住の杉中 碧さんが殺害されているのが市内の路上で発見されました」
俺は、飲みかけていたコーヒーを置き、そのニュースに聞き入った
「杉中さんは、昨夜7時前後に、杉中さん宅で殺害され、路上に放置されたと警察は判断して、捜査をすすめています」
ほう・・・警察はそんなところまで感づいているのか。と、俺は感心した
・・・・・・そう、碧を殺したのはこの俺だ
俺と碧は元恋人同士だが、俺は碧のことが諦めきれなかった。
だから昨日、碧のマンションに乗り込んだ、復縁を迫るために
すると、碧は俺に台所の包丁を向けてこう言った・・・
「これ以上つきまとうと、殺すわよ!」
『つきまとう』・・・・・俺はただ、碧のことを想っているだけなのに
・・・・・・気がつくと、俺は碧から包丁を奪い取り、碧を刺していた
・・・・このままでは、俺が疑われる
そう思って、通り魔の犯行に見せかけるため俺は、碧を路上に棄てた
しかし、やはり出血の量とかで、すぐにわかってしまうものなのだろう
俺は今更に、自分の無能さに気付いた
「・・・・・・あっ!待ってください。臨時ニュースが入った模様です」
と、アナウンサーが拍子ぬけた声が聞こえたのは、俺がそんな考えをしているときだった
「え~・・・先ほどお伝えした事件に進展があった模様です。現場の亀田さーん!」
と、どこかの警察署内に中継が繋がった
「はい、亀田です!えー、先ほど杉中さん殺害の件で、ある男が自首をしてきました」
・・・・・・なんだと?
そんな筈はない。碧は俺が殺した。他に犯人など・・・・・
「えー。男の名前は高藤 雅人32歳。フリーターです」
高藤 雅人・・・俺はその名前を知っていた
まだ碧と付き合っていたころ、碧に「ストーカーにつきまとわれている」と相談を受けたことがある
その男が高藤 雅人・・・以前碧と付き合っていたが、碧に別れを告げられ、その後ストーカーになったとか
「えー。我々は、自主前の高藤さんの取材に成功しました」
と、画面は切り替わり、どこかの喫茶店が写った
マイクをもったレポーターと、高藤がいる
「なぜ、杉中さんを殺害したんですか?」
「僕は・・・碧を愛していた。それだけだ」
高藤は、そういって含み笑いを浮かべた
俺は直感した
高藤は、自分が『殺したことにしたい』のだと・・・
『碧を愛していたから、殺した』という自分勝手なストーリーを作っているのだと
・・・・ふざけるな
碧を殺したのは俺だ
愛していたから殺したのは、この俺だ
憎き殺人者は・・・・この俺なのだ
これを書いててダチョウ倶楽部を思い出しました。笑
犯罪者と疑われたくなかった男ですが
いざ「自分が殺した」という人間があらわれると
「殺したのはこの自分だ」と名乗りたくなってしまう
そんな醜い愛憎の連鎖でした、では。