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棺のなかで

葬式には、たくさんの人が来てくれた。


僕のお友達も、おとうさんやおかあさんのお友達も。


でも一番多かったのはお兄ちゃんのお友達だった。


お兄ちゃんのお友達はね、とても多かった。


お兄ちゃんはみんなの人気者だった。


涙を流している女の人もいたんだ。




お兄ちゃんが死んだのは、4日前のこと。

交通事故。車に轢かれて死んだ。



17歳・・・まだ若いのにと、おかあさんのお友達が呟いてた



その車に乗っていた人を、僕は覚えている。




・・・そこに僕もいたから。



その日は、お母さんがお友達と遊びにいくとかで、家には学校が休みだったお兄ちゃんしかいなかった。


でね、僕の学校はその日避難訓練で、保護者が迎えに行かなきゃいけなかったんだ。


お兄ちゃんは「仕方ないな」なんて言いながら、迎えに来てくれた。



事故が起きたのはその帰り道だった。



あと数メートルで家についたのに、家の手前で、お兄ちゃんは轢かれてしまった。


いろんなところから血が出ていて恐かったけど、必死になってお兄ちゃんを揺らして、名前を呼んだ。



だけどね、それは動こうとしなかった。



車に乗ってる人は、車からおりて、自分が轢いた人が死んでるのを確かめると、すぐに車に飛び乗り、手前の家の近くにあるガレージに車をとめた。







あ、わかった?

うん、轢いたの。僕のおかあさん。



ガレージに車を止めると、すぐに家の中に入っちゃった。

僕がいるのなんて知らずに。



それからすぐ、家から出てきて、お兄ちゃんを見て驚いた顔をして


慎治しんじ!慎治!!どうしたの?大丈夫!?」


なんて言うの。殺したのは自分なのに


それから僕がいるのに気づくと、鬼のような形相で


「ねえ、慎也しんや!何があったの?慎治、車に轢かれたの?」


って聞くの。



まるで、さっきお兄ちゃんを轢いた女と、ここに居る女が別人みたいに。




だから、僕は言ってあげたの。



「お兄ちゃんを轢いたの、おかあさんでしょう?」










その結果がこれだよ。僕も殺されちゃった。



それなのにおかあさんは僕らの棺の前で平気で涙を流して泣いている。



この事実を知ってる人は、もうこの世・・・というかあっちの世界にはいないんだ。



ねぇ、僕ね。お兄ちゃんと約束したんだ。


大きくなったら、おかあさんを呪い殺そうって!






うふふ。

もし、亡くなって1週間。人の心がこの世に彷徨ってたら。って話。



「大きくなったら」なんて言ってるけど。あと3日で消えちゃうんです。

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