桜吹雪
ある春の夜。桜を見に行くために、病院の近くにある公園に車椅子を押しながら向かった。
車椅子に座ってる少女は、私の親友・舞佳。
元々この子が「桜が見たい」と言ったので連れて行ったのだ。
来る途中、彼女は何回も咳をしていて苦しそうだった。
彼女は、大病を患っていた。
もしかしたら、もう永くはないのかもしれない。
あくまで私の予想だが。
だが、それくらいの苦しさを私は彼女から感じた。
「うわあ、きれい・・・」
すっかりと細くなってしまった腕を懸命に彼女は伸ばしていた。
桜の花びらを取ろうとしていたのだろうか
なんともかわいらしいしぐさだった。
「夜桜って、風流よねぇ」
私は溜息をつきながら、彼女に話しかけた。
「ほんとぉ・・・死ぬ前にこんな素敵な景色が見られてよかった・・・」
「・・・・・・え?」
彼女の言葉に思わず大きな声が出てしまった
「・・・もう1週間ももたないんだって、わたし」
残念ながら、私の予想は当たっていたようだ。しかももっと最悪。
「・・・うそでしょ」
それしか・・・ことばが出なかった。
「うそだったら・・・・・・いいんだけど・・・ね」
とたんに、彼女は伸ばしていた手を自分の目にやった。
舞佳は泣いていた
「ずっと・・・ずっとぉ・・・中1から病気になって・・・学校いけなくなって・・・」
「うん・・・・・・うんっ」
私は泣きそうになるのを堪えながら、必死に舞佳の言葉に耳を傾けた。
「中学はぁ・・・結局ぜんぜんいけなくて・・・っでも校長せんせぇとかっがぁ・・うっ・・わたしをぉ・・・高校に入学させてくれ・・・てっ・・・」
もう、私は涙をおさえきれなかった。
それどころか彼女以上にぼろぼろ涙をこぼしてしまった。
一番つらいのは舞佳のはずなのに。
「でもぉ・・・結局治らなくてぇ・・・まる1年いけなくて・・・もう2年生になっちゃって・・・もう死んじゃうなんて・・・・・・いやぁ」
舞佳も、声を出してぼろぼろ泣いていた。
「私だって・・・嫌だよ・・・舞佳とさよならなんて・・・したくないっ!!」
「うんっ・・・でもね、わたし嬉しかったんだ」
「なにが・・・?」
「・・・結衣がね・・・いつもわたしのお見舞いに来てくれたこと」
「えっ・・・」
「小学校で知り合って・・・中学も違うのに・・・いままで・・・今もわたしに会いに来てくれる」
目をぐしゃぐしゃとかいて、彼女は必死に笑顔をつくった
「当たり前でしょ?親友だもん」
だから私も、がんばって笑顔をみせた
「“親友”・・・・・・うん」
なぜか。舞佳は寂しそうな顔をした。
「――最期に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よかった」
「え?なんて言ったの?」
中盤が聞き取れなくて、私はもう一度聞き返した。
そうすると、舞佳はさっきの笑顔とは違う、満面の笑みを浮かべて繰り返した
「・・・最期に、わたしの片思いの人と素敵な景色が見られてよかったっ!」
・・・もしかして、それって私のこと?
「えっ?!・・・私は・・・」
「ふふっ、いいの。聞かなかったことにして。さあ、帰りましょう。消灯時間に抜け出したらまた看護師さんに怒られるっ」
そして・・・ちょうど1週間後・・・
公園の桜がすべて散った頃・・・
“私の”初恋は終わった。
なんかよくわからないけど、とりあえず両思いでした、ちゃんちゃん。