第5章
そんな矢先、私の体が変調をきたした。
病院へ行くと詳しく検査をしてみないとわからないと言われ、1週間後に検査することになった。
彼との結婚をどう考えればいいのかわからなくなった。
何か問題があれば、絶対に結婚はしないだろう。
では、何も無ければ、結婚に踏み切るのか?
自分自身にそう尋ねてみるが、結局答えは出せなかった。
検査の結果、悪い病気でも見つかれば……助からない命なら。
もし、自分が余命数年で残り少ない人生だとしたら、どういう人生を送るか想像したことは何度かある。
仕事は辞めて、好きなものを買って、読みたい小説を思い切り読んで、中国へは一人旅というやつをしに行く。
まあ、一言で言えば遊んで暮らすというやつをしたい。
でも、自分が実際そういうことになったら、自分ならどうするだろうと考えると、自分の理想とは違うことになる気がする。
きっと、仕事は体の自由が利くまで働くだろう。派手にお金は使わないけれど、今まで欲しいと我慢してきたものは買う。でも、買わない気もする。小説はがんがん読むだろうし、中国語の勉強はやめてしまうだろう。中国への旅行はわからないな~。
ただ、友人と過ごす時間を大切にする。
遺書を書きたいとか……あと、きっと余命数年ということは家族にも友人にもぎりぎりまで言わないだろうな。会いたい人もいるし、謝りたい人もいる。
と、いろいろ想像してみたことはある。
今の状況では、まず結婚はしないで独身でいたい。遠藤さんとは円満に別れよう。仕事は続けて、小説でも買いに行こうとか。
残念ながら、検査の結果はいたって自分が健康体だということが証明されただけだった。
結局、結婚をどうするか考えるのを放置していたけれど、その問題と再び向かい合わなければならなくなった。
自分の人生、後悔だけはしないでいようと思っていた。その為に、いろいろな決断をしてきたけれど、振り返ってみると後悔だらけの人生だった。
諦めてきたことが多い。でも、その時その時に自分に納得させてから決断を下していた。自分の一部を殺して妥協することを選んだ。
私の人生は、それだけで構成されている。すごく惨め。哀れ。
でも、他人の所為にはしたくない。
だから、まだ彼との結婚を決断できない。いや、自分の中では既に答えは出ている。愛していないどころか、人としても好きにはなれていないのだ。ここが好きと感じられる部分が一つも無いから、結婚に踏み切れないのだ。
それでも、わかっている。自分は彼と結婚することになるだろうと……。
私に残されている選択肢は無かった。
選ぶ以外に道はないのだ。
私の前には断るという選択肢は用意されていなかった。
出された問題の答えを教えてもらった気がする。親の期待が私にカンニングという行為をさせた。間違えてはいけないプレッシャーの中、答えを知っているのに答えられない自分は時間切れに攻め立てられて、口を開いた。




